2004年7月、一般市民による緊急時の自動体外式除細動器(AED)の使用が認められ、全国各地でAED使用についての一般市民向け講習会が開かれるようになりました。

この流れに関連して、日本循環器病学会から出された「提言」に対して行ったアクションを、今回のテーマにします。

 

日本循環器病学会は,2005年10月3日,「心臓病患者への硝酸薬貼付剤は,前胸部を避けて貼ることが望ましい」とする「硝酸薬貼付剤の貼付場所に関する提言」を行いました。
その提言では,製薬会社に添付文書への加筆とともに,医師,看護師,薬剤師に対して,患者にそのことを指導するよう求めていました.

 

この情報をトーアエイヨー社の塚本均さんからお聞きしたとき、その提言は現実離れているのでは・・・と感じました。

 

そこで、一般市民,医師,看護師,薬剤師(保険薬局と病院・診療所)を対象に,「硝酸貼付剤の貼る場所とその理由」について調査を行いました(2005年10月~2006年4月).

その結果では,貼付場所(胸部。腹部、背部から複数選択可)は,一般女性の74%,一般男性の85%,医師の89%,看護師の99%,保険薬局薬剤師の76%,病院・診療所薬剤師の85%が「胸部」と回答しました.


 

また、貼る場所の選択理由(複数選択可)は,一般女性と一般男性で「心臓に近い」の回答が,それぞれ53%と56%,続いて「貼りやすい」,「確認しやすい」との回答でした.また、医療従事者では,すべての職種に共通して,多い順に「貼りやすい」,「確認しやすい」,「心臓に近い」との回答でした。

 

同じ調査で「AED使用に先立ち貼付剤を剥がしたとき、それを緊急搬入先の医療機関に情報の一つとして見せる必要があるか」と聞いたところ、全体で「必ず見せる必要がある」との回答が59%、「できれば見せる必要がある」の回答が32%でした。
この結果から、「剥がした貼付剤は救急隊員に手渡し、医療機関に情報の一つとして伝達する」ことも、講習会で説明すする筆があると提案しました。

 

この調査は、薬事日報 web 版(2006年6月2日)で紹介されました。
 

これらの調査結果から,「提言」通りに「前胸部を避けて貼付する」という提言を守るのは容易でないことがわかりました。
また、貼付剤の支持体に金属を含むかどうかで “火傷リスク” が異なります。

 

せっかく専門学会から出された「提言」が、より現実的なものになるよう、問題点を除くことが大切です。

“製剤についての知識”を持つ薬剤師だから指摘できることは、少なくありません。