ある病気の治療のため医療機関Aに通院していた患者が、別の病気治療のために医療機関Bに来院・入院して診療を受けることは少なくありません。また、医療機関C(総合病院)に入院中の患者が、入院目的の病気以外の治療のため同じ医療機関Cの別の診療科を受診することもあります。これが、それぞれ「他医療機関受診」と「院内他科受診」で、まとめて「他科受診」と省略されています。

 

 前回のコラムの「メトトレキサート」と「テモゾロミド」のエラー事例の原因のひとつに、この「他科受診」があげられます。そこで、今回は、「他科受診の落とし穴」について説明します。

 

「患者持参薬の情報」は伝わっているか?
 すでに病気の治療を受けている患者が、別の病気の治療や外科手術のために新しい診療科を受診する際、服用中の医薬品を持参します。この「患者持参薬」は、薬剤師が確認(鑑別)を行い、その情報(鑑別情報)を医師や看護師に伝えます。


 「持参薬鑑別」と「情報提供」の手順は、それぞれの医療機関で決められています。そして、一般的には、(1)医薬品名(商標、一般名)、(2)規格、(3)数量、(4)投与方法、(5)自施設での採用の有無(不採用の場合は代替薬)──の情報が、薬剤師から治療を担当する医師に伝達されます。
 

“落とし穴”を埋めるのは、薬剤師の役割

 多くの診療科を持つ総合病院では、医師は、自分の専門領域に焦点を絞って患者の治療に当たります。すでに別の診療科で治療を受けている患者に対しては、その治療に当たっている医師の治療方法を尊重するのが通例です。これは、患者治療における役割分担です。

  そこに“落とし穴”があります。例えば、骨折の治療を行う整形外科の医師に、脳腫瘍の治療薬についての十分な知識を求めるのは無理なことです。

 特に総合病院においては、、医師は「自分の専門領域以外の医薬品についての知識は十分でない」・・・という点を、薬剤師は認識する必要があります。もちろん、自分の担当病棟で使わうことがまれな医薬品を患者に与薬する看護師も同じです。ここが、“落とし穴” です。

 

 専門外の医師と看護師に欠けている医薬品について必要な知識を補うのは、薬剤師の重要な役割・・・だと思います。特に、「休薬期間」があるなど特別な投与方法が必要な医薬品や定期的な臨床検査が必要な医薬品については、その情報を医師と看護師に確実に伝えなければなりません。伝える必要がある情報は、次のものです。

 

 ①「休薬期間」がある医薬品では、その適正な投与方法

 ➁ 医薬品の有害作用による健康被害回避に必要なモニタリング
  ・実施が必要な臨床検査とその実施時期
  ・監視が必要な検査値・バイタルサイン

 ③外科手術や内視鏡手術に向けて休薬が必要な医薬品とその中止・再開時期

 

そして、薬剤師は、病棟や薬局窓口で、次の4点を確認する必要があります。

  ①投与スケジュールは守られているか?

    ➁必要な必要な検査が行われているか?

  ③検査結果に異常はないか?

  ④患者に何か異常は認められないか?

 

 エラーを防止し、患者を薬のリスクから守るためには、情報を提供したら終わり・・・ではありません !!