肝機能検査を3か月に1回しか行わなかったため、肝機能低下に気づかず、抗がん薬治療を受けていた患者が死亡したという新聞報道がありました(2009年)。
この報道を知り、色々と調べる中で、
その患者に投与されたであろう抗がん薬の添付文書に書かれている「定期的」という表現に、疑問を持ちました。
この「定期的」という表現の解釈に、個人差があるのでは ?
そこで、医師、看護師と薬剤師と製薬会社MRの4集団を対象に、
「“定期的”の具体的な間隔」について調査を行いました(2011年2月~5月)。
結果は、次のグラフのように、予想をはるかに超えるものとなりました。
例えば、「3か月に1度」と回答した医師は12% でした。
肝臓病学会に所属している医師であれば、学会ガイドラインに書かれた「月1回検査」のことを知っています、
でも、所属していない医師は、そのことを知らないのでは・・・
また、看護師を対象に、「緩徐にに投与」について聞いてみました。
こちらも、15秒から30分まで・・・と、回答はバラバラです。
他にも、次に示すように、
人によって解釈が分かれそうな表現が、添付文書中に見つけることができます。
添付文書の投与方法と観察項目は、承認申請のための臨床試験(治験)の実施計画とその結果に基づいて決められます。
読み手によって解釈が異なる “あいまいな表現”は使用しないこと・・・
それを、製薬会社に臨みます。
余談ですが・・・
「適宜増減」も、なかなか困った表現です。
「適宜増減」とは、“さじ加減”と表現されるように、患者の症状や体重に合わせて、投与量や投与間隔を調整 することを意味しています。
実際は、さらに薬物代謝・排泄に関係する肝機能と腎機能、また、併用薬(と健康食品)との相互作用も考慮 する必要があり、簡単に行えるものではありません。
結論から言うと、「適宜増減」を行うには、最新の臨床試験結果など科学的根拠(エビデンス)に基づかなければなりません。その判断は、個人の能力を超えていると思います。
この部分は、人工知能(AI)のサポートに期待しています。