今年いっぱいで指揮者活動にピリオドを打つと発表されたオランダの指揮者ベルナルト・ハイティンク。ヨッフムとの二頭体制を経て長く名門コンセルトヘボウ管弦楽団のシェフに君臨して来た巨匠の引退を惜しむ声は大きい。
そのキャリアの割に地味な印象が強いハイティンク。マーラーとブルックナーを中心とする大オーケストラをさばく手腕は認められつつも、常に穏健派、ワンパンチ足りない指揮者としてのイメージが強いのではないだろうか。
実演で接したことは一度しかないのだが、今聞き返してもこのブルックナー全集も、全てがバランスよく、神秘的なものを剥ぎ取った純音楽的な世界観が当時としてはウケたのは理解できるにしろ、後世に伝えたいような名演というには、何かかけていると言わざるを得ない。
しかしながら、このアルバムに収められているま0〜2番については、その過不足ない表現と若々しさで、ブルックナー初期の魅力を伝えるには十分ではないだろうかと思う。
ハイティンクの愛聴盤といえば、晩年のロンドンとの9番とドレスデンとの8番のように練り上げ「られたものを推したいが、この初期のケレン味のない全身性の強位演奏にはブルックナーの魅力をあますところなく伝えていて、名演ではないかと思う。一応推薦は2番までだが、それ以降でも改めて聴いて共感できるものがあればこちらでご紹介したい。