作曲家の人生
コンサートのプログラムの曲目解説を書くために作曲家ラヴェルについて調べていたら、彼の人生にとても興味が湧いてきて、いくつかの本を読んでみたところ、かなり面白い本を見つけたのでここでご紹介しておきたいと思います。『ラヴェル:その素顔と音楽論』(春秋社) 著者: マニュエル・ロゼンタール 伊藤制子訳作曲家に関する本といえば、大体伝記のようなような形をとることが多いですが、この本は、弟子であったマニュエル・ロゼンタールによって書かれたもので、主に作曲家としての一面に着目してラヴェルという人物が語られています。過去や同時代の作曲家たちの作品をラヴェルがどのように評価していたか、自らが創作するときに心がけていることなど、弟子でなければ(しかも近しい関係の)聞き得なかった見解が、具体的な楽曲とともに語られていて楽しいです。作曲家たちが果たしてどんな風に音楽に関わっているのか、恥ずかしながら今まであまり知らずにきましたが、まるで違った視点で、そして違うレベルで音楽を捉えているというのも発見でした。当然といえば当然なのかもしれませんが、種明かしをしていくような客観的な視点と言うのでしょうか。それから、作曲家たちが思っていたより密接に関わり合い、お互いの音楽を批判、称賛しながら切磋琢磨しつつも仲良くやっていたというのも意外ではありました。特に、ラヴェルとストラヴィンスキーは、お互い時代の寵児であり、全く異なる作曲スタイルを持ちながらも深く尊敬しあっていたようです。後半はプライベートの生活のことも書かれていますが、ロゼンタールがラヴェルのことを「人生で出会った人たちの中で並外れて誠実であった」と書いていたのが印象的でした。晩年原因不明の脳の病気によってさまざまな障害に苦しみ、作曲も出来なくなってしまったのはとても心が痛みます。神はしばしば天才に厳しい試練を与えるものですね。