新月譚』 (貫井徳郎 著)





【内容】

文壇の女王・咲良怜花は
49歳という若さで筆を折った。
なぜ筆を折ったのか?
なぜ作風が変わったのか?
これはとある女性の情念の物語。




【感想】
560ページの超長編でしたが
1日半で読めてしまうほど私は浸りました。

人間はまずはじめに容姿をみる。
人間は、中身のある生き物だ。
そして人間の中身は見えにくい。
本当の中身を見せ合える同士に
出逢える事は奇跡なのかもしれない。


「譚」は"物語"
新月のようにみえない咲良怜花の物語。




【引用】
何も欠けていない
人間なんてつまらない。

砂に頭を埋めて危険が
迫っていることから逃避する
ダチョウのように、
自分の末路から目を逸らしていた。

高みにいる人に、
底辺を這いずるものの
気持ちわわからない。
それは、高いところにいる人の
罪ではない。
蟻の営為に等しくても、
天を飛ぶものには見えない
世界を書くだけのことだ。

人は、自分の知っている
世界だけが全てだと思いがちだ。
経験があれば、
優位に立っていると無意識に思い込む。