宮部みゆきのファンタジー
英雄の書の基盤となった、無名の地にまつわる設定が出てきます。
咎の大輪、無名僧、領域(リージョン)など、独特の単語により構築されるファンタジー設定がかなり綿密というか、堅固たる世界観を持っているせいで、現実世界部分との隔たりを強く感じ、違和感が残りました。
サイバーパトロールの会社の業務中の描写が、多少稚拙に移ったのも難点です。
そんな人海戦術みたいな前近代的な方法なんて今どき有り得るのかなというのと、収益源が不明で、事件が起きて警察からの依頼でもないのに特別に人員を配置して調査し出すというのが非現実的に思われました。
ファンタジー設定が哲学的観念により構成された美しいものであるのと、現実世界の殺人事件の汚さ、幼稚さが相容れないものであり過ぎて、一つの物語として考えにくかったです。
実写映画に、CG丸出しのキャラクターが出てくる、みたいなそんな違和感。
ボロクソ書いてしまいましたが、それでも上下巻を苦もなく読ませてしまう宮部みゆきの筆力には簡単しました。