旅する理由 | 学生団体S.A.L. Official blog

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「砂ぼこりひどい」
カンボジアに来て最初に思った事だ。
昔、テレビでカンボジアに学校を建てる企画の番組を見てから、なんとなく貧しい国と思っていたけれど、どうやらそれは本当らしい。
 道路は舗装されてないし、町の人にはジロジロ見られるし、シャワーは鉄の匂いがするし、英語を話せる人は少ない。これがいわゆる発展途上国ってやつかと思った。
 宗教について考える旅だったため、普段はお寺を見てまわっていたけれど、その日はポルポト時代の収容所と処刑場に行った。収容所も処刑場も当時のまま保存されていて、独特の空気感があった。そこで私は30年ほど前、この国でなにがあったのか見た。ポルポトとかクメール・ルージュとか高校の世界史でなんとなく聞いた事はあったけれど、初めてそれらの言葉が現実味を帯びた気がした。私はホテルに帰ってから早速クメール・ルージュについて調べた。
 ポルポト率いるクメール・ルージュは社会主義的農村回帰を唱え、都市の知識層を殺害した。残虐な殺人は知識人の関係者にもおよび死者は200万人とも言われている。カンボジアの発展が遅れているのは、ポルポト時代多くの知識人が失われたことにあり、英語を話せる大人が少ない事もそれに関係あるのかもしれない。また、カンボジア人にとってこの時代の話をする事はタブーとされている。実の戦争体験者である彼らにとって、戦争はまだ過去のものとして見る事ができないのだろうか。
 なんとなく貧しいと思っていたカンボジア、なんとなく知っていたクメール・ルージュ、当たり前のことだけれどもそのなんとなく知っていた事は世界で実際に起きている。ただなんとなく知っている世界を現実にあるものとして認識することができれば、世界が色づいて見える気がした。その為に人は旅をするのかもしれない。

文責 マネジメント局2年 櫻井眞帆