【この熱烈大陸は、全てノンフィクションです。ブログを書いている本人が実際に体験、経験したお話を物語として記載していますが、登場する人物、個人名などは実際のものとは関係ありませんのでご了承下さい。】
※作者本人は多田野という人物になります。
第1章【ラグビーとの出会い】
PART‐1 大宮中学校への入学
この物語は、多田野 淳二という、ごく普通の市立小学校に通い、ごく普通の生活をし、ごく普通の人生を送ってきた、11歳の少年が体験してきたエピソードである。
外は雲一つなく、青空が広がり、清々しい朝である。
陽子「あんたはよ起きなさい!!入学式を遅刻するつもりか?!」
淳二「うるさいな!!もう起きてるわ。」
陽子は多田野の実の母親である。穏やかな性格ではあるが、とても心配性の母親である。
淳二は、この時まだ11歳。小学生時代は身長も学年で高い方であり、小学校では一番のムードメーカーでもあったが、学年で一番力が強いこともあって、まだまだ身長などの成長が遅い子にとっては、兄貴分みたいな存在であった。
陽子「もう中学生になるんやで!!朝ぐらいちゃんと自分で起きなさい!!筆記用具は持ったか?財布は絶対落とさんようにしなさいよ」
淳二「もう分かってるって。別に中学入るからってどうってことないやろ。どうせみんなも一緒の学校なんやから」
淳二が入学する大宮中学校は、その距離から一番近い3校の小学校が集まる学校である。
ピンポーン(多田野家のインターホンがなる)
健也(けんや)「おはようございます!!お~い早く行かな遅刻するで」
あきら「おはようございます…。」
健也とあきらは、淳二の小学校時代からの親友。但し、淳二は元々は転校生であり、健也とあきらと出会ったのは、小学校二年生の時である。
健也は、とても真面目で成績も優秀、しかし人に流されることが多々。
あきらは、真面目ではあるが、学力的には至って普通、グループでもおとなしい子で、あまり断れないタイプである。家が近いこともあり、中学校の登校はこの3人で毎日行くことを決めていた。
陽子「ごめんな。まだトイレ入ってるねん。本当にいつもごめんやで。」
健也「もういつものことなんで、慣れました(笑)」
淳二「ホンマにごめん!!もう終わるから!!あきらも一緒やろ」(トイレから大きな声で答える淳二)
あきら「うん、待ってるから大丈夫。走っていけば間に合うと思うよ」
陽子「淳二!!ええ加減にしなさい!!もう先行ってもらうよ!!」
淳二「ヨッシャ!!これで完璧や!!もう行けるし、ゆっくりしといて!!」
陽子「あんたの言ってる意味が分からへんわ!!ゆっくりする時間なんてない!!」
そんなこんなで、入学当日から淳二のせいで遅刻をしかける3人であったが、当時は登校時間を過ぎても、門を閉めるような事はなかったので、登校時間は5分程過ぎていたが、無事3人とも入学式を迎えた。
大宮中学校では、1学年6クラスで、1クラス当たり40人ほどになるので、淳二が通っていた小学校の規模でいうと約2倍~3倍の規模となる。
校長「皆様、本日はこのような清々しい天候に恵まれ、入学されることを校長の私も嬉しく思います」
淳二「やっぱり3校が集まるとすごい人数やな~。なんか隣の学校の子ら悪そうやで(笑)」
健也「えっ知らんかったん?うちは3校の中で、2番目に悪いみたいで、あそこの小学校のやつらは、一番悪い地域の学校の子らやねんで」
淳二「へ~詳しいな。まぁでも俺がおったら大丈夫やって」
健也「どんだけ自信あんねん。上には上がいるんやし、気をつけや」
入学式では3校がそれぞれ分かれており、たまたま淳二と健也は隣同士で立っていた。
あきらはというと、前の方で目をキョロキョロしており、親友の2人がいないことがとても心配そうな感じであった。
入学式は進行通りに進み、何事もなく無事終わり、学校のピロティー(校舎1階広場)にてクラス発表がされた。
教員「え~今、貼り出した紙にクラスと順番と自分の名前が書かれているから、それぞれのクラスに行き、順番通りに着席しておくように」
教員の指示とともに、入学式に参加していた約240人が一斉に立ち上がり、クラス分けが始まる。
クラス分け中は、それぞれの小学校同士が集まり約30分程度、盛大に盛り上がった。
淳二は4組へ、健也は5組へ、あきらは1組へとそれぞれがバラバラになった。
特に淳二の場合は、同じ小学校で仲良くしていたメンバーはほぼ全員いない状態であった。
但し、淳二には一つ、嬉しいことがあった。
小学校の5年生~6年生の2年間を同じ教室で過ごした初恋の相手と、またもや同じクラスになったからである。
名前は、紗衣(さえ)。性格は真面目であるが、気が強い女性で、男女からかなりの人気があった。
ただし、淳二とは、約1年半会話がない。小学校5年生の夏頃に淳二が告白し、何も答えが返ってきてない状態からずっとそのままである。
クラス発表から約30分後、各クラスに分かれた新入生達は、指定された自分の席につき、それぞれが学校単位で笑いに花を咲かせていた。
ただし、教室のほぼど真中の席だった淳二は、仲良しなメンバーもいない中、一人、黒板を見つめ、ずっと黙りこんでいた。
淳二「(誰も仲良しなメンバーおらんやん。は~でも紗衣ちゃんと同じクラスなんは嬉しいな)」
と黙りながらも思いをはせている中、淳二の席に向かって、一人の男子生徒が思いっきり、ぶつかってきたのである。少し席から落ちそうになった淳二が、後ろに目をやると、髪が長めの男子生徒が後ろでこけており、その後ろには、淳二を一回り大きくしたようなガタイの良い男子生徒が笑いながら、そのこけた男子生徒を見下ろしていた。
龍二(りゅうじ)「痛ったー!!もうダルイって!!知らんやつに当たってもうたやん」
龍二は淳二の席にぶつかってきた生徒である。
達也(たつや)「知らんし、ええやんけ。そんな奴ほっといたらええねん。」
どうも、淳二の後ろでふざけていた2人は、周りの生徒に当たりながらも、そのままふざけ合い、最終的に淳二の席にぶつかってきた様子であった。
まだ入学1日目。元、同じ学校同士で、ふざけ合うのは普通にある事で、別に淳二は何も気にせず、やり過ごすこともできたであろう。これから1年間同じクラスである生徒との問題は避けるべきであり、笑顔を見せていたら、何も起こらずに、そのまま流れていたであろう。
ただし淳二は違った。
後ろを振り向いたと同時に立ち上がり、
淳二「おい、当たっといて謝ることもできひんのか?一番悪い学校か知らんけんど、あんまり調子にのらんでええねん」
初恋の相手が見ていた事、元々、同じ学校の生徒が見ていたというのもあってか、その2人に対して、大声で怒鳴ってしまったのであった。
龍二は、びっくりしたのか目を大きくし、淳二を見上げる。
ただし、達也は違った。
明らかに顔が一変している。達也は、身体の大きさとは比例しないサッカーを小学生からずっと続けており、スポーツ万能で、当時小学校では、喧嘩の強さもあり、後に登場してくるであろう、別のクラスの大男と、「ジャイアン1号・2号」というネーミングで呼ばれていたのだ。
そんな事は何も知らず、怒りを向ける淳二。
淳二の言動に対して、怒りをあらわにし、一回り大きい分、上から見下ろすように淳二を見る達也。
何事もないまま終わるはずの入学式当日に異様な空気が流れはじめた…。
【次回】PART‐2 全員加入 部活動体験入部