ここ数年、仕事のスランプに陥っていた。

好きで好きで始めた通訳業が「苦行」になり、モチベーションを上げられなくなり、果てには頭が情報を取り込むことを拒絶し‥。

スランプから抜け出た今だからこそ、長い職業人生だからいろんな波がある、と冷静に思えるけれど、「こういう勉強法はどうだろう」と試行錯誤を繰り返し、もがくばかりだった。

救いだったのは、通訳に苦しみながらも、翻訳の楽しさを知ったことだった。
一人で原稿に没頭する時間は、とても密度の濃い時間だった。
翻訳している時だけは、頭から雑音が消えた。

数年間のスランプから抜け出せたのは、一昨年あたり。
抜け出せたきっかけは特定できないけれど、気づいたら、「通訳って愉しい」と再び思えるようになっていた。

かなり楽になった今だからこそかもしれないけれど、スランプの期間に、真正面から悩んで良かったと思える。

必要だからこそ陥ったスランプだったと、今はすんなり受け入れられるし、あの経験があったからこそ、新しい私が生まれた。

ここ数年を振り返って引いたカードは、大アルカナ4 皇帝

皇帝は健全なエゴをモチベーションにして、自分の帝国を創る。
してみると、スランプの数年は、不要になったエゴを手放すための時間だったのかもしれない。

スランプの期間は、生まれ変わるための時間。
そう思えたら、過去数年の私がとても愛おしく思えた。