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「おおっ?もしかしてタイスキですか!?」








中々キツい一日だったが、ビールと晩メシが美味けりゃ救われる。しかしタイスキとは思わなんだ。嬉しいね~♪




「そうなんですよ、好きですかー?野菜がとりたいって言ってたから」


「大好きですよ、タレ辛めのヤツ♪」





今更タイスキについて説明する事もないが、昔はバンコク市内のMKとかによく行ったなー。

こういうのは流行りがあるし、ピークを過ぎるとダメになる店ばっかりだけどね。そう考えたらMKはやっぱり凄いって事か(←大して美味くはないけどね)。









スープをセットしたその後に驚愕!
なんと旦那さんは出汁としてココナッツの果肉を投入。こうすると甘味とコクが出るらしい。
へえええ~っ( ; ゜Д゜)






「えっ!?ココナッツ!?」


「面白いでしょー?何か、こうすると美味しくなるらしいんですよ」


「マジで!?いやそれは初めて知ったなー」


「もちろん果肉も食べられますよー」




へえ~、そうやったんか。

まぁ、フレッシュのココナッツなんか日本じゃ手に入りにくいもんな。あっても一個800円とかバカ高いしさ、これはコッチで食うべき物だな。









奥田民生似の旦那さんが黙々と調理。
聞くところによると、蝉からカブトムシまで何でも食べるらしい。山と森が食糧貯蔵庫。






「おおっ!美味いっ♪」



辛く味付けした方のスープをひとくち飲んでみて驚いた。お世辞抜きでめっちゃ美味いやん、コレ!



「その辛いペーストみたいなの、旦那が前にルアンパバーンまで買いに行ったんですよ。そこのが美味しいからって」

「マジで?でも許可が要るんでしょ?出国する時」

「何かよく知らないんですけど……どうやってるんですかねぇ笑」


まぁ、元々地元民は『ちょっと川向こうの外国まで』てな感じで行き来してるからなぁ……
川の幅が狭い場所だと『ソムチャイ、ちょっと向こう側行ってナンプラー買ってきて!』てなもんだろうし……
でもルアンパバーンっていったら、ここから丸一日かかるぞ?タイヤのゴムチューブに乗って漂ってりゃそのうち着くだろうが、帰りはどうしたんだ??普通じゃねーぞ、そのサバイバル術…








辛い方をさりげなくオレの方へ向ける沈黙の奥田民生。その半生は凄絶極まりないものだった。





「旦那さん、確かラオスからの難民だって言ってましたよね?」

「そうなんです。だから私、未だにシングルマザーなんですよ、結婚出来ないから。アハハハッ♪」

「国籍の問題ですね」

「そう、本当に馬鹿馬鹿しい問題なんです。あ、この人はお父さんと一緒に逃げて来たらしいんですけど、お父さんは途中で殺されちゃったらしいんですよ。後ろから銃で撃たれて」





ラオスの難民と聞いて、『ベトナム戦争のアレで…何かとばっちりみたいな感じなんスかねー?』てな感じの大学生が多いのは情けない話だ。
オレは過去にそんな日本人のガキパッカーとラオスで話した事があるが、そいつらが知ってる事と言えば『ポルポトは人をたくさんころした、よくない!』とかいうお花畑の住人ばかりだった。
つか、大学まで行く頭があるんなら知っとけよ。インドシナ難民くらい……



 




本当に恐ろしい話だ。
社会主義や共産主義を信じる国のトップは、その殆んどがマルクス主義を都合のいい様に解釈し、レーニン主義にどっぷり洗脳されたバケモノ達で成り立っている。
その被害者になるのは当たり前ながら貧しい国民達なのだが、そんなバケモノ達は末端の国民なんて道を這う毛虫くらいにしか思ってないだろう。




「もうホント、役所から見放されてる様なもんですからね笑。だから入籍も出来ないし、この人は他県に出るにも許可がいるんです。だから、この前のコロナ騒ぎの時は仕事も失くなっちゃって大変でした


「えっ…と……じゃあ、将来的に旦那さんは……」

「どうなるんですかねぇ……まぁ、なる様にしかならないんじゃないですかね?アハハハッ♪」








辛いものもへっちゃらなトリリンガル。
いっぱい食べて大きくなあれ!







生きてるだけで丸儲け、なんて言葉をオレも軽々しく口にしてはいたが、特に旦那さんがここへ来た経緯を知り、オレは何だか自分が情けなくなってきた。



残念ながら、人間というのは生まれた国によって人生が決まるところは少なからずある。

普段から自分の国をボロカスに言う人も沢山いるし、それは日本人だけに限らず、特に資本主義の先進国ではよくある話だ。

オレも含め、自分の生活水準をモノサシにする事で景気を判断し、そこに恩恵がなかったら延々と愚痴を垂れる事に終始するのが日本人。

『じゃあ、どうしたらエエの?』と聞いたところで具体策は無く、机上の空論以外は他人任せにする傾向が強いのも日本人。

が、文句は垂れながらも貰える物はしっかり貰い、受けられる保障は堂々と主張して受けたがるのも日本人なのだ。

ブーブー文句を言うヤツは山ほどいるが、国民健康保険や国民年金制度など、そんなシステムさえ無い外国では注射一本射つのも支払いが大変だったりする。

中には医療費が無料という国もあるが、それを理想とするなら『消費税が40%を超えても文句言わねーんだな?』って話だ。
医療費タダのデンマークなんて、年間所得の70%を税金として徴収されるんだぞ?本当にそうしたいなら4割徴収されたくらいでガタガタ言うなって話だ。






「まぁ……『もしも』ですよ、あくまでも『もしも』の話ですけど、旦那さんがもし日本に出稼ぎでも出来る様になったら連絡して下さい。働ける場所はナンボでも紹介出来ますから」

「えええ~っ!?そんな夢みたいな話……ちょっと現実味無いわ~笑」

「いや、だから『もしも』の話ですって。でも、どこでも自由に行き来できる様になればいいですね。なるべく早いうちに」




片付けたテーブルの横でくつろぎながら、奥さんは宙を見る様な目で笑っていた。

『そうなれるんだったらとっくにそうしてるわ』

そう思ってるのかもしれないし、

『そんな日が来てくれたらなぁ……』

と思ってるのかもしれない。




「でも私、『帰ってきた~』と思うのはもうコッチになっちゃったんですよね、日本じゃなくて。だから、もしそんな日が来たら単身赴任で行ってもらいます笑。おばあちゃんになったら分かんないですけど」



【今を生きる】のと【その日暮らし】とでは全く違う。
何だか小っ恥ずかしい言い方になるが、この家族を見て強くそう思った。
あ~あ、何か早く帰って子守りしたくなって来たなぁ、オレ。











「あ、そりゃそうと、今日はエグい場面に遭遇しちゃいましてね…」

「はぁ、何ですか?」


午前中に見た事をそのまま奥さんに話すと、『なんだ、そんな事か』てな顔で軽く笑われた。



「多分、こっちに住んでるラオス人ですねー」

「でしょうね、そうだと思いました。ああいうのって日常的ではないですよね?」

「う~ん…どうかなあ?でも、アッチの人のおじいちゃんとかおばあちゃんの世代は普通じゃないですかね?飼ってる犬が増えすぎたり、例えば引っ越しする時とかに連れて行けなかったりする場合は貰いに来たりしますよ」

「それって、例えば車にはねられた犬とか鳥だとどうなりますか?」

「あ~、死んだばっかりだったら持って帰る人、この辺は結構いますよ笑」



日本の田舎じゃタヌキが轢かれただけで保健所が出動するが………こっちは命のリサイクルか、それはそれで理にかなった話だな。

『それって、先進国の人間としてどうよ?』と思う人もいるだろうが、その先進国の人間である者達は、無理矢理受精させ、無理矢理子を産ませ、ただ希少で高級だからという理由で子牛や子羊のステーキを注文し、それを承認欲求のためのインスタか何かに『生後◯ヶ月の◯◯牛の雌・柔らかさがハンパない♪』等とアホなコメント付きでアップして満足する訳だ。
無理矢理産ませられたとはいえ、産んだ我が子がドナドナされるのをただジッと見ているしかない親の気持ちはどうなんだろうな?






いろいろ考えさせられるわ、ホント。


















デザートは旦那さん手作りのマンゴーアイス。
マンゴーはそこら辺で取って来た物らしい笑
ご馳走様でした。