前回の話はコチラ↑
「もしかしてビールとか置いてます?」
「ありますよー」
「じゃあお願いします、支払いは纏めてでいいですか?」
「はーい」
ニャンの尻の穴を見ながらの晩酌。凍らせたジョッキが嬉しい。
コンビニで缶ビールを買ってきても良かったのかもしれないが、1バーツも得しない上に冷蔵庫まで借りるのは気が引ける。
そこはエエ歳こいたオッサンとして考慮すべき事だと思うし、自分がもし逆の立場なら嫌だもんな。
ま、一連のコロナ騒動で危機的状況にあったゲストハウスだ。少しでも売上になるなら協力したい。
「バイクで旅してるんですかー?」
「はい、これが一番楽なんで」
「楽……って、どこで借りたんですか?」
「チェンマイです」
「へ~っ、中々の距離ですよねー」
「300kmくらいですかね?まぁ、途中で寄り道する所もあったんで休み休みです」
この宿のオーナーである奥さんは、ラオスからの難民である旦那さん、小学校の次女と三人暮らし。
ま、オレみたいなアホがこの一家の事を語るより、ネットに溢れるニュースやYouTubeを見てもらった方が早いんじゃないだろうか?
一番最近の地上波出演がこれかな?
つか、ご近所さんの読◯テレビよ。オマエらクルーは取材ネタを貰うだけ貰った挙げ句、1バーツのギャラも払わずに帰国したらしいな?オレが宿主だったらそっちに涙しとるぞ、恥を知れ。
敢えて名前で記すのは止めておく。
知ってる人はいくらでもいるし、コチラの熱烈なファンの方々に申し訳ない気がするからだ。
勿論オレだってずっと昔から存在だけは知っていたが、だからと言って最初から『テレビ見ましたよー』ってのもバカみたいだし。
オレだって一応は小さい店の経営者だ。
『ネットで有名ですよねー』なんていきなり言われた日にはテンションも下がるし、そういう事を平気で口にする奴等の気が知れない。
ま、当の奥さんはそんな事など思ってもいないだろうが、もしかしたらこんなアホブログで紹介されても逆効果になる可能性の方が高いかもしれんしな。それだけは何とか避けたいところだ。
暫くすると、旦那さんと次女のカワイコチャンも帰ってきた。
長女さんは大阪の学校に通っているそうだが、そうなるまでの葛藤なんかもあったんだろうな。
旦那さんはとにかく無口。かといって無愛想な訳じゃない。
カワイコチャンはとにかく元気。日本語は勿論、タイ語とラオ語も話せるトリリンガルだ。
今は英語も勉強中という事で、『Hi,how are you?』と言ったら無視された。
「ふわあ~~~っ………いいですねー、この感じ。懐かしい気がします」
煤けた雰囲気というか何と言うか、オレの幼少期は石炭で風呂を沸かしていた時代だ。
そこは薪ではなかったが、ここと似たような暮らしは覚えている。
「そうですかー?毎日の事なんで分からないですけど……でも気に入ってはいますねー」
奥さんは元々パッカーだったそうだ。
それがどこをどうしてここにいるのかなんて聞くだけ野暮だし、そんな情報はいくらでもネットに出ている。
で、オレはオレで『いつかは海外に』と思っていた時期もあるが、だからと言ってこの暮らしが羨ましいとも思わない。
よく、『◯◯に帰ってきたー!』ってな言い方をしたがる連中も沢山いるが、ここはあくまでも旅の道中としてお気に入りの町。連泊する町だな、逆に佐世保を思い出したわ。
「あの~、部屋が空いてたらでいいんですけど…」
「はい?」
「一日延泊して大丈夫ですか?」
「あぁ、はい。大丈夫ですよ、全然予約入ってないし」
「洗濯なんかもお願い出来るんですかね?」
「はい、大丈夫です」
「最近全然野菜がとれてないんで、明日の夕食なんかもお任せ出来ます?」
「何でもいいなら大丈夫です」
「そうですか、じゃあ面倒なんで1000バーツ渡しておきますね」
「えっ?多分多すぎると思いますけど…」
「余ったら旦那さんの好きなビールでも買って下さい。じゃあお願いします」
翌日泊まろうと思ってたホテル。
でもさ、こういうとこに一人で泊まってもなぁ…
日も暮れかけ、酔いも回ってきたところで今日はお開き。
若い子達だとここからが本番なんだろうが、この歳になると夜が早いわ💦
さて、明日は何が食えるのか楽しみだ。