前回の話はコチラ↑








「ぷはーっ、美味かった~!」





散々な目に遭った後はいい事もあるもんだ。

コーヒーを買おうと立ち寄ったコンビニで、レジの姉ちゃんに『この近くで、朝から開いてる食堂とかって無いですかねぇ?』と聞いたら、『あー、すぐ隣にありますよ』とニコニコして言われた。

女ってのは不思議なもんで、年齢や容姿に関係無く笑顔が似合う人が可愛いんだな。


しかもそこで最安値だった中華そばは、疲れた頭を優しく癒してくれる岡田奈々みたいに滋味深くてね。これがさっきの姉ちゃんのニコニコ余韻と合わさって、何だか知らないけど五木寛之の【四季・奈津子】が読みたくなったよ、オジサンは。








今日の目的地は鯨漁で有名な太地町。
そんなに遠くないはずが、すぐこういう脇道に逸れるもんだから10時間くらいかかった。
ここが何処か分かった人、連絡下さい。






「あ~、こっからはずっと海岸線かぁ」



食堂の前はR42。
海沿いを走るこの道は、三重県の松阪市まで続いている。




「朝のうちは涼しいからエエけどなぁ……」



当然ながら、標高が低い場所ほど暑い。
で、海を見ながらの運転は確かに気持ちいいのだが、ほぼ一直線の海岸線はすぐに飽きるのが難点だ。
宮崎みたいにアップダウンが激しかったり、佐世保みたいにリアス式の海岸線ならまだ楽しいのだが、千葉の九十九里みたいに終わりの見えない海岸線は飽きてからが地獄だ。
このR42は、正にそんな感じの国道なのである。







田辺扇ヶ浜とかいう海水浴場辺り。
ここに建ってる団地っぽい建物が香港ぽくて気に入った。
つーか、5時に出発して三時間も経つのにまだここかよ?寄り道し過ぎ。





「白……あ~、ここが有名な白浜かぁ」



ウチの常連にも何かと言えば白浜とか城崎って言う奴らが結構いるが、オレ自身は白浜に来るのはこれが初めてである。
城崎も白浜も有名なのは温泉だが、ご存知の通り実家の風呂が温泉だったオレにはそのどちらにも興味が湧かず、これまでにも自ら行ってみようとは一度も思わなかった。

更にハッキリ言ってしまえば、この和歌山という県自体にもあまり関心が無かったってのが正直なところ。
理由としては第一に温泉、第二にクエ鍋、第三にミカンってところか。

第一の理由は何度も書いて来たから割愛するが、第二のクエ鍋については『何で?』と思う人も多いだろう。

が、オレはこの脂っこい魚を美味いと思った事が一度も無く、何でまたこんな高いだけのモンを有難がるのだろうといつも不思議でしょうがないのだ。
『これだから九州人は』と思うなかれ。
クエに似た魚を福岡では【アラ】と呼ぶんだが、福岡でもアラ鍋は高級料理だ。
若い頃に何度か食べさせてもらったが、やはりそれも脂がキツくて食べられなかった。
これはもう、好みの問題なんだろうけどね。

んで、第三のミカンなのだが………

ミカンの出荷数が多い県の人って、何かにつけてウチのミカンは全然違うよって言うよな?
ミカンで思い浮かぶ県と言えば、オレの場合は愛媛かな。他にもアチコチあるんだろうけど、パッと頭に浮かぶのはポンジュースの愛媛。
でも、実際は大分の杵築(きつき)ってところもミカンが有名でね。子供の頃は『ミカンと言えば杵築』ってくらい頭に植え付けられてた。

ただね……





ミカンって、そんなに食べたくなる?



いや、美味しいのは美味しいんだけどね。
特に女性はあったら嬉しい果物なんだろうけど、ガキの頃からそこら辺に生ってたり、それをもいで学校帰りに食べたりさ。
冬になったら近所の人から段ボール箱二つ分くらい貰ったりすると、その3割くらいは食べずに腐らせるのはお約束。
コタツの上には必ずあるし、友達の家に遊びに行けば『これ持って帰りなさい』って持たされるしさ。
ミカンってそういう立ち位置っていうか、何かこう……何だろうね?とにかく全然そそられないっつーか、だからウチのミカンは全然違うよって言われても、「あ、そう…」としかならないんだな。

美味しいのは美味しいんだけどね、本当に。
ただ、ミカンが名産な県の人って、マジでミカン推しが強すぎてさ。何か余計に食べたくなくなるんだわ。それが第三の理由(笑)






如何にも『脱サラして海辺のペンションをやるのが夢です』って人が喜びそうな店だが、オレは『鮑の殻でブラジャーは作れるのか?』という考えしか浮かばなかった。イイネ、白浜♪





(流石に白浜まで来ると雰囲気が変わるな~)




これ見よがしに停泊しているクルーザーやヨット。それら一つ一つにゲイラカイトの目玉を落書きしてやりたくなる衝動に駆られる。
ある所にはあるもんだねぇ、いつの世も。




(しかしまぁ…ンプププッ!やっぱり無理があるんよな?温泉とビーチリゾートって。プハッハッハッハッ♪)



お洒落にしようと一生懸命なのは解る。
が、やはりそこは根が田舎モンというか、アホなヤンキーが読めもしない横文字ステッカーを貼りたがるソレに似た匂いがプンプンしている白浜の町。
そもそも温泉街に似合うのは筆文字の縦書きだ。いくら遠浅の砂浜が広がっても、そこにWEST COAST VILLAの文字は不釣り合い。
どう頑張っても神奈川にはなれないのは分かっているはずなのだが、そこは早いとこ何とかしてほしいもんだ。




(おーっ!こっちは超観光エリアか!?何かニーハオ系の家族連れも目立つ様になってきたな~)



急に拓けたというか、大阪で言えば天王寺みたいな無理矢理感が漂う海岸線に出た。
なるほど、ここが白良浜って所か。

まだ朝9時前だというのに、目の前の砂浜には沢山のカップルや家族連れで賑わっており、ここがリゾートの中心だと言わんばかりのムードが『これでもかっ!』という感じで流れている。

ロングの髪にサングラス。
スラッと伸びた真っ白な脚の姉ちゃんが水着姿で歩く姿は目の保養この上ない。
が、よくよく見てみると履いてるサンダルには【ChANELe】というビミョーなワンポイントが付いていたり、水平に持ったスマホの尻に向かって大声で話していたりと急仕上げのパチモンセレブ感が半端ない。それだけインバウンドの波が戻って来たという事だな。

ま、地元の観光業にとっては喜ばしい事なんだろうが、こういった日本のビーチリゾートに来てセレブ感を出すならドラえもんのプリントが入った水着だけは止めといた方がいいぞ。バカみたいだから。






廃墟も目立つ白浜。
こういうのもどうにかならんもんだろうか?