前回の話はコチラ↑
「失礼いたします~」
鏡の前で大股を開き、下からターボを効かせた温風を当てているタイミングで入ってくる姐様。
反射的にドライヤーを頭へ持って行ったが99%見られただろう。一瞬だが、躓いた様な立ち止まり方をしたのがその証拠だ。
「あ……ども……」
いつもの銭湯でだって、ドライヤーをかける時はパンツくらい穿いている。
が、借りに素っ裸でかけていたとしても、番台の婆さんは毎回韓流ドラマに夢中なので気にもならない。
それどころか、風呂に入る前に素っ裸で番台へ行き、『石鹸、赤箱で』なんて事も日常の光景だし、常連の爺さんに至ってはフリチン状態のままで世間話してる姿もよく見かける。
「お湯加減、如何でしたか~」
浴場に散乱した洗面器などを片付けに来たんだろうが、それをさっさと終わらせて出て行くかと思ったら、今度はドレッサーの前を入念に掃除し始めるソフトソバージュ。
要するに、チョコンとぶら下げているオレの真横で作業しているのだ。止めてくれ恥ずかしい。
「あ…はい、あの~…良かったです…」
微妙に体の角度を変え、アラカンソバージュの方に尻を向ける様な格好に持って行こうと頑張ってはみるが、それだと正面の鏡は一体何の為にあるのか?という事になる。
つーか、多少背を向けたところで丸見え状態なんだけどね。全部映ってるし。
「ありがとうございます♪」
どっちの意味で礼を言っているのかは少々謎だが、この際どっちでもいいから早よ出て行ってくれ。
人様に自慢出来る様なアレなら大威張りでお披露目するが、水面で呼吸中のミドリガメくらいしか無いアレを見られたところで恥ずかしいだけだっつーの。
5分ほどして要約出て行ってくれたが、これ程までに為す術の無い体験も珍しいな。
こういうのに興奮する変態は多数存在するんだろうが、改めてオレはソッチ派じゃないという事がハッキリした瞬間だった。
いや、それにしても何で男湯に女性スタッフが入って来ても問題視されないんだろ?
今はもう無くなったが、ウチの近所にあった銭湯が正にそんな感じで、そこの娘が二階にある自宅を行き来する時に必ず男湯の脱衣場を通るのだが、時々そこへ遊びに来た親戚の若奥さんなんかとさも当たり前の様に立ち話をしているのである。
これがもし逆だったら大問題なのだが、何故か女の場合は許されるのだ。
「アリガトー…」
「ありがとうございました、お気をつけて」
来た時より明らかにニコニコ……いや、ニコニコというよりニヤニヤした笑顔の姐様ズ。
世の中は本当に不公平だ、男だって女湯をウロウロしてチラチラしたいもんである。
(あ~恥ずかしかった!流石に貸切り状態でアレは無いやろ~……くっそー、何か負けた気がすんなぁ)
こういう事に勝ちも負けもないのだが、どうも気分がスッキリしないまま本日の宿へと急ぐオレ。
50代になり、そういったアレにあまり反応しなくなったのは喜ばしい事なのか?
……いや、やっぱり違うな。この敗北感は明らかに男性力の衰退が原因のはず。
亀の皮を被った猿時代なら、風が吹いただけでも反応していたのがこのザマだ。
町内全ての草むらに、どんなエロ本が落ちているかを完璧に把握していたガキの頃が愛おしい。
(やっぱり日頃から亜鉛が足りひんのとちゃうかな?……うん、今日からそれっぽい食生活にしてみよ。グハハハハッ♪次回はアラカンソバージュが腰抜かすほどの超合金でリベンジや!)
逆襲への決意を胸に飛び込んだのはAコープ。
何かちょっと違う様な気がしないでもないが、この近くではスーパーの選択肢が無いみたいなので仕方がない。
(え~っと、牡蠣フライとニラレバにすっかな?あとは米の代わりに松の実食うか?あっ、今日からは酒も控えて赤まむしドリンクにしよう♪)