「……あ……はいはい、ええ……そうですか、分かりました。いえいえ大丈夫です、こっちも突然だったもんで……はい、また次回にお願いしますので。はーい、ありがとうございました」




時刻は午後1時。

流石にそろそろ宿を決めようと、Google Mapを頼りに探し歩くも軒並み休業。


ならばと現在地からなるべく近い場所でとググった宿に電話するも、嘘か本当かは謎だがやっぱり休業。


どうやらコレ、そこそこ大きな旅館じゃないと、当日予約は受け付けてくれないんじゃないだろうか?

小さい民宿は必ずどこから来たのかを聞いて来るし、大阪からって答えたら『今は休んでます』って言いにくそうに言うもんな。


ま、怖い気持ちも分かるし、こっちがいきなり電話してるんだから想定内。


逆に、オレの店に『ナマステ、ワタシハ予約シマス。アナタノ店』ってサイババに言われたとしても断るだろう。何か出されたら分からんが。




(う~~ん……ま、いっか。和倉なら楽天トラベルでナンボでも出てるしな。そうと決まったら、先にアソコまで行っちゃうかー)






記事とは全く関係ないが、大倉パパの新業態が無事にスタートしたみたいだな。
しかしまー、すっかり痩せちゃって……もう少し落ち着いたらゆっくり呑みましょ。
とりあえずは開店おめでとうございます!






アソコというのは他でもない、灯台のあるアソコなのだが、まさか50を過ぎて原付で来る事になるとは思わなかったな。


バイクなんかにはミジンコ程も興味の無かったオレが、小型免許(しかもAT限定)を取得してから三年目にしてこんな感じになっちゃうとは……人生とは分からんもんだ。





事のきっかけは、元嫁の実家がある広島まで原付で行った事だった。


2号線はとにかく鬱陶しかったが、加古川のチョイ先から250号線に入ってからは気持ち良かったな。

特に岩見漁港付近は住もうかと思ったくらい気に入ったが、そこにある【某名物お好み焼き屋】で激不味フルコースに悶絶してからは正気に戻る事が出来た。だからあの婆さんには感謝してる。

ありがとう婆さん、もう行かないけどお元気で。







偶然通りがかったカフェでコーヒータイム。
この後、まさかの展開が……





「気持ちいいでしょ~!」




灯台のあるアソコに向けて走っている途中、何にもない田舎道に突然現れた一軒のカフェ。

何でまたこんな場所にとは思ったが、立地に似合わぬアメリカンな感じが気になって立ち寄ってみた。

時間的にはまだまだ余裕があるし、コーヒーでも飲みながら今夜の宿を決めてしまおう。




「最高ですね。ちょっと霞がかってますけど、方向的には向こうが富山県ですか?」


「そうですー♪もっと天気がいい時は立山まで綺麗に見えますよ!」




店の入口にはハーレーまで飾ってあるし、どうせ何でも無い様な事が幸せだったと後悔してるオッサンがやってるカフェなんだろうと思ったが、いざ入ってみるとオレと同じくらいの姉様がスタッフと二人で営業してる様だ。

最初は店内のテーブルに座ったが、外の方が気持ちいいですよと言われてそうしてみた。


うん、確かに最高だわ、コレ。




(なーんやー、こんな辺鄙なとこにあるし全く期待してなかったけどめっちゃエエやんかー……んん~~っ!?)




得した気分でこの店をググってみると、何とここはライダーハウスも兼ねたカフェとなっている。

なるほど、それで入口にハーレーが置いてあった訳か。

しかも、よく見てみると店内はバイクの写真やらR66の看板やら、如何にもなアイテムが満載だわ。何で気付かへんかったんやろ?オレ。







この店の姉様が乗っているハーレーだそうな。
興味の無いオレには価値さえ分からんが、少なくともオレの原付よりは高いと思う。






「あの~………」


「はい」


「ここ、ライダーハウスもやってるんですね」


「はい、やってますよー」


「やっぱアレですか?その~……ドミトリーだけですかね?部屋は」


「いえ、ベッドの個室もありますよ」





過去記事にも書いた通り、オレはライダーハウスという宿泊施設が苦手である。


いや、正直言うと超苦手であり、ハッキリ言えば嫌いであり、のぶ代節で言うとだ~い~き~ら~い~なのである。



が、これまでに利用した事は、まだ一度もない。


え?白馬村もライダールームがあっただろって?

いやいや、あそこは完全にペンション!

ライダールームって名称だけどアレはペンション!

オーナーの価格設定が狂ってるだけ!!



元々、オレはバイクに興味がない人だ。


ツーリングブログとして書いてはいるが、本当に興味があるのは『知らない場所でのオモロイ発見』であって、誰がどんなバイクに乗っているとか、自分があんなバイクに乗ってみたいとかいう欲求は0に等しい。


で、そんなオッサンがバイク好きやバイクマニアの集まる宿の、それも共有スペースで一緒になったらどうなるか?


しかも、その共有スペースには手垢でボロボロになったマンガが何年もそのままで並べられており、連泊しているガキンチョ共は鼻くそをほじりながらそれを読んでいるのだろう。




いやー気持ち悪い…



夜は夜で酔っ払いの声はデカくなり、下らない話に手を叩いて爆笑するヤツは、大体猫背で色白天パの小肥り系。

ラピュタというワードに異常反応を示し、阿蘇の赤牛と北海道のセコマかつ丼という下らない食い物を褒め称え、帰宅したら『家の布団サイコー!』と涙ぐむのか。





マジで気持ち悪い…




勿論そんなライダーハウスばかりではないはずだし、そんなライダーばかりではないはずだ。

ググったらすぐ出てくるメジャーなライハが強烈過ぎるだけなのかもしれない。






うん。






食わず嫌いは良くないし、ここはひとつ思い切ってみよっかな………












「あの……因みに今日はもう満室ですか?」