(あー、またかよ~……)




白馬村を出発して、一時間も経たずに降りだした雨。

近くに丁度道の駅があったので、トイレついでに雨宿りを決め込むオレ。




(ま、すぐ止むやろ。今のうちにパンでも食っとくか)




雨雲レーダーをチェックしてみると、20分後には霧雨程度に替わる様だ。

この分なら糸魚川市くらいで完全に止むだろう。




(つーか、新潟ってすぐそこなんやなあ。ここら辺ってめっちゃ入り組んでるんやな、県が)




道の駅にあった、ダメなパン屋で買った売れ残りを食べながらGoogle Mapをチェックする。

あまり気にしてなかったが、大阪を出て奈良→京都→三重→愛知→岐阜→長野→群馬→長野と、いつの間にか7県も跨いでたんだな、オレ……




(あら~……こんなん、マメな旅ブロガーからすると完全に失格やな。それっぽい写真なんか全然撮ってねーわ)




そこら辺、自分が如何にダメな旅ブロガーなのかという事を痛烈に感じつつも、とあるママさんライダーのブログに書いてあった一文を思い出して反省を打ち消した。

そのママさんも、『走ってるのが楽しくて写真を撮り忘れる』みたいな事を書いていたからである。

そうそう、本当にそれなんだって




そのママさんライダーは兵庫県在住。

ラオスの山奥に生息する手乗り鹿くらい小さくて、時々チラリと見せてくれるお顔はオレみたいなオッサンを成仏させるくらい可愛らしいのだが、そんなミニマムバンビサイズにも関わらず、大型バイクをロデオの如く乗り回しているのである(←最近はカブでほっとしてるけど)。


そんな理由もあり、正直言ってオレも大型免許を取りに行こうかと本気で考えた。


あんなに小さくて可愛らしい娘が大型を乗り回してるのに、50を過ぎたオッサンが原付なんかで何をやっているのだと。


オッサンは負けず嫌いだ。


だからショベルカーの免許を取ろうと思う(←そっち?)。







糸魚川市と言えば大火災。
捲き込まれた被災者の気持ちは痛いほど分かるが、火元となった店の爺さんの事を思うと気の毒でならない。




(あ~~……信州も終わりか。あっという間やったなあ……)



ホント、一週間も無い旅なんてあっという間だ。
軽井沢にいたのが昨日の様に思えるが、もう明日には帰阪しなきゃならない所まで来てしまった。

で、最終日はどこに泊まるのかは色々と悩んだのだが、そこはやっぱり初訪になる街に行かなきゃ意味が無いだろうという決断に至った。
目指す先は……




の~と~は~ん~とお~♪


気持ち悪くなった人もいるだろうが、オッサンは大山のぶ代初期世代だ。きゃりーぱみゅぱみゅだって大山節なら噛まずに言えるし、世の早口言葉は全てこれでクリアしてきた実績がある。
それが昭和40年代生まれとしてのプライドなのだ。クレームは一切受け付けない。





この手のタンクローリーが前にいると何故か嬉しい40年代。
料理の写真は忘れるくせに、こういう写真は忘れない(扇風機にも必ずア~~とやる)。





(しかしまぁ……一体何やったんやろ?さっきまでの涼しさとガラガラ道は)



真っ青な海と突き抜ける様な空は確かに最高なのだが、まだ10時にもなってないというのに体感温度は30度である。
加えて親不知インターチェンジまで続く、トラックの大渋滞による排気攻撃。
幻だったのか?白馬村のあのクリスタルエアーは。





渋滞に辟易して立ち寄った【道の駅・親不知ピアパーク】。
思わず頭を触ってしまったが、果たして御利益はあるのだろうか?





クソ暑い陽射しとガス臭い排気にウンザリしながら走る8号線だが、これでもう山の気紛れ天気に悩まされる事は無いと思うと嬉しい様な寂しい様な……


やっぱりこう……山って旅してる感が満載というか……いや、もちろん海沿いもため息が出る様な景色に出会ったりもするんだが、やっぱり標高の高い場所って理屈抜きに気持ちがいいんだよな。
海は海でいいんだけど、そこは生まれ育ちが海辺だから新鮮さに欠けるんだろう。







そうこうしてるうちに富山県突入。
そういや富山にも泊まった事なかったな。
いつかまた。






(あ……まだ泊まるとこ決めてなかったんやった。そろそろ予約しとかんと時間的にマズいな、当日OKかどうかも分からんし)





富山と新潟の県境。

そこにある廃墟となった食堂の前にバイクを停め、暫しスマホとにらめっこしながら宿探しに集中する。

ここから能登半島までは大した距離じゃないと思いがちだが、それは有料道路を使えばの話だ。オレみたいな原付乗りには縁が無い。




(まあ……四時間みときゃ大丈夫やろ。何かイマイチなとこばっかりやし、このまま現地で探すとするか……)




試しに電話してみた民宿は、三軒ともコロナで休業中というやっぱりな返事が返って来た。

そこそこ値の張る温泉旅館は大丈夫そうだが、ま、それは最終手段として取っておけばいいだろう。






(さて、そうと決まったら思いっきり楽しむか。何せ最終日やしな!)









が、








やはり思う様には行かなかったのである……