再び鹿児島港に着いたのは15時前。


西之表の中心街で、唯一モーニングをやっていると思われる店で食べた朝食は出来合いの惣菜ばかりで最悪だったが、フェリーはいびすかすの中には小さな売店がある訳でもなく、ようやく九州本土に降りた時にはとにかく腹ペコだった。


で、港から国道に出てすぐの所に『鹿児島ふるさと物産館』という道の駅っぽい施設があるのだが、そこで目にした【ざぼんラーメン】の看板を見て早速入ってみる事にした。






西之表で食べた朝食。ため息しか出なかった。




ざぼんラーメンと言えば、鹿児島ではかなり昔からある老舗ラーメン店だが、これまで何度も鹿児島に来ていた割には一度も食べた事がなかった。
理由は、鹿児島出身の知り合いが『不味い』と言い切っていたから。

が、いくら不味いと言ったって、創業60年以上の老舗である。
60年以上もやって来て、しかも店舗数を増やしているって事は大変な事なのだ。






なかなか強気な値段だが、美味けりゃそれで良し。




「お決まりになりましたら、お呼び下さい」

「あ、普通のラーメン下さい」




店内は丸っきりファミレスといった造りで、そこで働く従業員の人達は年配の女性が多い感じ。
そういや最近はマクドナルドでもそうだよな?いい風潮だと思うよ、こういうの。
個人の店によっては、突指でうっ血した様なネイルの金髪姉ちゃんが注文取りに来たりするが、あれを黙認してるオーナーってのは大体が狂牛病並に脳がスカスカなんだろうな。
今時古いと言われようが、オレから言わせりゃ派手なネイルに光りもんを着けた女が炊いた飯なんか絶対食いたくないってのが正直な所だ。
そいつが米を研いだりする訳じゃなくても、あんなのが厨房をウロウロしてるだけで、オレが責任者ならぶちギレる。




「お待たせ致しました、ざぼんラーメンでございます」





太刀魚白魚の様な指のおばちゃんが持って来てくれたざぼんラーメン。この時、何でか知らんが仙八先生の主題歌はどんなだったかを思い出していた。




(あー、如何にもチェーン店のラーメンやな。ま、意識高い系の水菜乗せじゃないだけマシか、ちゃんとS&Bのテーブルコショーもあるし。どれどれ………)




スープを一口啜ってピンと来た。
これ、リンガーハットだわ。

いや、勿論リンガーハットと同じじゃないんだけど、所謂『工場製造系リンガーハット風ライト豚骨スープ』ってとこか。
なるほどな、鹿児島出身のヤツが言ってた意味も解らんでもないが、そんなにコキおろすほど不味くは無いし、寧ろ小さい子供連れのファミリー層には丁度いい。
さすが、店舗数増やして永くやってる理由が良く解るわ。
それにオレ、ラーメンはチェーン店とかの方が美味いと思ってるもんな、実は。

よく、『◯◯にオープンしたラーメン屋、元は◯◯で修業してた人がオーナーで、めっちゃ列んでますよ』

てな話をよく聞くが、そりゃそんな肩書きがあれば最初は列ぶだろうよ、『この麺は◯◯が卸している◯番の全粒粉ですね』とかSNSにほざいてるキモヲタ達が。

が、たかだか10席しか無いカウンターの店に行列こしらえようが売上なんか知れてるっつーの。
バイパス沿いにある横綱ラーメンとか見てみ?
店によっては150人くらい入る店内に、昼時なんて客で溢れ返ってるっての。
ネットじゃ大した話題にもならんチェーン店だが、実際にはああいう店の方が集客してるんだわな。
ちょっと話題になって他店とコラボなんかやるのは大いに結構な話だが、大した売上も無いくせに『幻の』とか『極め』とか語るのやめてほしいね。
あと、煮卵まるごと一個入れるのも勘弁して。
掴みにくくて仕方ねーわ。







(ちょっと食い足りひんけど、ここで腹膨れたら夜が困るな……)



今日はこれから薩摩川内(さつませんだい)まで向かうのだが、そこで以前ちょっとだけ面倒をみてたアホ2人と18時に落ち合う予定になっている。
ほどほどにしとかないとな、すぐに腹が減る歳でもないし。










鹿児島市から西へ横切る様に3号線を串木野へ。
そこから北上して薩摩川内に入る。
いや、地図上では近いんだけどね、そりゃ原付ではやっぱりしんどいな。
しんどいけど、せっかく二週間の休暇を取って来たんだし、そこは多少無理してでもあちこち見たい。





行ってまうよね、こういうルートを。
何にも無いのに……




で、ここが【川内串木野線】とか何とかいう道だったと思うけど、バイカー達にはそこそこ有名なルートらしく、とにかくオレみたいな小型バイクは鬱陶しいくらい煽られる。
いや、煽られるというか、カスるくらいな間隔で追い抜かされると言った方が正確か。

で、その度に冷や汗掻いてるオレに向かって、抜いた直後に『ごめんな』みたいな感じのサインを後ろ左手で出して来るだが、こっちからしてみればマジで『ふざけんな』である。
何しろ、そいつらは見るからにまだまだクソガキの30前後。こっちはそいつらクソガキどもの父親だとしてもおかしくない歳のオッサンである。




が、オレというオッサンは、まだそこまで大人になりきれてはいない。




5分後。




【串木野サンセットパーク】とかいう展望台のある場所に、そのクソガキ2人のバイクが停まってた。





ま、行っちゃうよね。
















その展望スポットにあったドラ。普通は鐘のはずなんだけど、何故かドラ。
一言だけ言わせてくれ。
ふざけんのもいい加減にしろ。