桜島フェリーで検索してみると、それは旅の為の船というよりは、県民の足として利用されている事がよく分かる。


24時間運航で、値段も激安。

運航時間はおよそ20分と、この旅で利用したフェリーの中ではダントツに短いが、これはもはやフェリーというか水上バスみたいな役割を担っているのだろう。






造りも遊覧船っぽい桜島フェリー。内海の為か、シケで欠航する事もほとんど無いという。




で、本当ならフェリーの中にある名物うどん店、【やぶ金】で薩摩揚げの乗ったうどんを食べる予定だったのだが、鹿屋で食った激甘カンパチ漬け丼の気持ち悪さがずっと残っており、とてもじゃないがそこに甘めの薩摩揚げってのは想像しただけでリバースしそうな状態だった。


(うう~~っ……オエッ!……んーー気持ち悪るっ………ん?)


さっきの鼻糞ボクロのせいで忘れていたが、そういえば大量のメールと着信があった事を思い出した。
ま、着信はどうせ店の予約なんだろうが、Booking.comからのメッセージがやたらと多いのは何なのか?
相変わらずスマホは重いのだが、あと一時間もすればWi-Fiのある宿に着くので開けてみる。
すると……





この日泊まる予定の宿から、鬼の様な連投で届くメッセージ。この他にも5回くらい送られてきてた。




(またか……一体何が言いたいねん)




四日前に予約した、鹿児島市にある激安ゲストハウスから最初にメッセージが届いたのは、予約直後の事だった。
そこにはとにかく細かい断り書きや確認内容の他に、『若者ですか?年寄りですか?』等と書かれていた。
年寄りに『お』が抜けとるぞと笑ってしまったが、それにしても変な事を聞くもんだなーと不思議に思っていた。
ま、最近では50歳以上の利用を断っているライダーハウスもあるくらいだから、もしかしたら若い人達ばかりで構成されたゲストハウスなのかも知れない。





桜島フェリーの船内。通勤時は結構混み合うらしい。




北海道のとあるライダーハウスで、50歳以上の客を断っているという話は以前から聞いていた(確か、個室ならOKだったかな?)。
いい歳こいたオッサンが、若いライダーが集まるゲストハウスのドミトリーに長居して若者の話にズカズカと入り込み、場の雰囲気をぶち壊すパターンが多発したそうだ。

そもそも、ライダーハウスというのは宿泊施設としては一番利益の上がらない部類に入るらしく(オレは泊まった事が無いので知らんが)、平均でも2500円、安い所だと1500円、激安だと1000円以下なんていう場所もある(←寝袋持参)。
宿側からすれば、ハーレーなんかに乗ってくる金に困ってもいないオッサンが、何でわざわざこんな安宿に泊まって若者にちょっかい掛けるのか?という事だろう。
オレがもしオーナーだったとしても同じ事をするだろうから、気持ちは良く分かる。

大体オレも、こんなコロナ禍でどこもガラガラだからドミトリーなんかを予約した訳だが、もしこれが通常の世の中だったらゲストハウスには泊まらず、素泊まりで民宿かビジホを利用していただろうし、本気で金に困っていたとしたらテント泊で旅するのだろうが、その前に金が無かったら旅なんかしないで仕事してるに決まってる。
ましてや、今みたいな時期に旅を決行するのは、余程の理由が無いと色んな意味でリスクが高すぎる。
言い訳がましいが、その『余程の理由』っていうのがあるから旅しているのだが、その繊細についてはまだ書かないでおく。



(何か面倒臭そうな宿やなあ……そやけど1泊1500円でドミトリーじゃないってのは有難いし……)



鹿児島港へはあっという間に到着。
で、何だか良く分からないけど、メッセージに書かれた住所にある事務所とやらに向かうオレ。



(あー、これかー)




事務所というか、ただのパソコン教室だった。
何かこういうの怪しいよな?ヨガ教室だったら大体新興宗教だったりするし。



市内中心部から少し離れた場所にあるパソコン教室。
どうやらそこが事務所らしいのだが、チャイムを押しても反応が無い上、最悪な事に雨まで降って来た。



(んもおおお~~~~っ!どないなってんねん!!)



散々細かい注意事項や確認のメールを送って来た割にはコレかいっ!とイラついていたら、登録してない番号の電話が掛かって来る。
宿のオーナーからだった。



「あ、もしもしー、◯◯さんですか?今どちらにいらっしゃいます?」

「メールに書いてあった事務所の前にいますけど」

「あ、もう着いてるんですね!すみません、5分ほどで行きますので!」



そう言って電話は切れたが、5分どころか1分後に姿を現すオーナーらしき謎のオバハン。



「すみません遅れまして!さ、さ、どうぞ入って下さい!」



どこからワープしてきたのかは不明だが、とにかく慌ただしくバッグから鍵の束を取り出しては落とし 、差し込んでは合わず、結局5回目でやっとドアは開いた………







いや何かマジで怖くなってきたんですけど、オレ………









そしてこれが謎事務所の内部。ピンボケは恐怖のせいだ、すまん。