小雨降る中、時間ギリギリの16:50に到着した高知市。

ちょいと知り合い家族がこの近所に住んでるという話は聞いていたが、まさか宿から徒歩2分だとは知らなかった。

でも御高齢だし、今会うのは少し気が引けるからね。玄関にお土産でも置いて、また大阪で会えるのを楽しみにしておこう。




この日予約しておいた、高知市のゲストハウス。あんまり良い印象無かったから宿名文字にするのやめとく。



ずっと2000円だと思い込んでたら上記の値段だったな。
ま、端数切り捨てしようがしまいが、毎日の出費を無駄に記録してるアホな世界一周ブロガーじゃあるまいし、どうでもえーわそんな事。
1日1回コンビニ行くの止めたら倍額残る金額だろうしな。


「いらっしゃいませ、先にアルコール消毒と検温の方よろしかったですか?」


出たよ、「~の方」と「よろしかったですか?」の《奇妙な日本語詰め合わせセット》が。
オマエらマジで何とかならんのか?その言い回し。
何か丁寧に喋ってるつもりなんか知らんが、その割にはテーブルの事を「机」とか呼んだりするだろうが(←テーブルは食台)。机はデスクじゃ能無しスタッフ。


「はい、ありがとうございます。え~~っと、33度……だいぶ低いですねwww」


当たり前じゃアホ。
こっちは小雨降る2月にジェットヘルで猛ダッシュしてきてんのに、それで7度5分以上あったら実質9度熱でブッ倒れてるわ。
も少し待ってから検温せえや、昔ヘルメットの代わりにブリキの鍋被って買い物行った知り合いのおばちゃんでも分かるぞそれくらい。


「メールで、小型バイクなら無料で駐輪出来るって聞いたんですけど」

「あ、ハイ。こちらのスペースの方になるんですが、ちょっと今日と明日は雨で濡れてしまうんですが……」

「あ~……いや、まあしょうがないですよね。ハイ、よろしくお願いします」


だからっ!「こちらのスペースの方」じゃなくて、「こちらのスペースですが」でええやないかっ!
ホンマに一々ワケわからん日本語使うの止めろや気持ち悪い。


「ドミトリーでご予約頂いてますが、今日は他に二組しか利用される方がいないので、3階のお部屋をお使い下さい」


3階の部屋がどうなっとるのかも知らんが、とにかく無料でアップグレードされたって事でよろしかったでしょうか?
つか、そもそもそんなに胸張って言うほど有名ちゃうと思うで、この宿。
んで、他に二組しか客いないんだったら、わざわざ雨晒しになる場所にバイク停めさせんでもええんとちゃうの?
めっちゃスペースあるで、濡れへん場所(←無料で文句言うな)。




案内された3階の部屋。ま、鳥ノ巣みたいなドミよりマシか。



「こちらのお部屋になります。お部屋と、共同のトイレとシャワールームの暗証番号はこちらの方の説明書に書いてありますので」


(うん、もう分かった。早よ独りにしてお願いだから。昔のアパートだか何だかをリフォームしたかアレしたゲストハウスね。んで、1階をカフェだかバーにして、ライダーとかチャリダーの退職者達が貧乏自慢する為の施設でしょ?気が向いたら2分だけ行くよ。でも出来ればお願い、金上乗せするからせめて2階の部屋にして。3階まで階段って、オッサンには辛いわ。部屋が割りと清潔なのは嬉しいけどね)


睡眠不足による疲れ。
長時間の運転による疲れ。
山中での恐怖感や、ガス欠による無駄な体力の消耗。
心身ともにクタクタになった最後のトドメが、余計なお世話による階段アップダウンと奇妙な日本語。
もう勘弁してお願い。さっさと銭湯行きたいわ、オレ。



〈キンコン♪〉



宿から徒歩10分くらいの場所にある銭湯。
そこで1日の疲れからやっと解放されたオレは、いつもより長風呂で多めの休憩を取っていたのだが、ふとケータイを見ると着信の嵐&LINEのメッセージが山盛り状態になっている。
あらら、オカンやないかい。








この高知市在住のオカン、実は元重量挙げの世界選手を息子に持っているのだが、その息子がウチの店の常連であり、そこから少しずつ付き合いが深くなっていったという訳だ。

ま、世界選手だろうが何だろうが、マイナーなアマチュアスポーツというのはとにかく活動費用に皆困っている訳で、そんな時に僅かながらだがメシやら酒やらでサポートしていた。
そんな縁もあって、オカンも時々ウチへ来る様になり、そのうち海外で開催された世界選手権なんかにも同行する様になった。
特に金持ちでもない年寄りの母親一人、言葉も分からん海外まで、大した収入もない息子の為に中々出来る事じゃないわな。

ま、そんなオカンが住む高知市にせっかく立ち寄った訳だが、冒頭の説明とLINEの内容の通り会わないつもりでいた。



が……



「もしもしー!ジュンさーん?今どこにいちゅうがよー!すぐ迎えに行くき、ゴハン食べ行こゴハン!」



「あ、お母さんね、さっきもLINEで説明したけど、今の時期はちょっと心配やしさ。オレは良くても、お母さんにもしもの事があったら取り返しのつかん事にな…」




「何ち言いゆうがかよーっ!!せっかく来てくれてこっちは嬉しゅうてたまらん言うのに、早ようゴハン行こ!すぐ泊っちゅうホテル行くきー!」


いやいや、分かるんやけど落ち着いてくれオカン。
大体、オレが送ったLINE読んだ?
オレ今銭湯の休憩場でフリチン状態のまま話してるんですけど。
せめて後30分くらい冷静にしといて。
それにオレ、宿に着いた早々に自作のハンバーグ食って腹一杯だっつーの。
つか、腹一杯な上に死ぬほど疲れてるっつーのっ!



「いやあ~っ、ジュンさんわざわざ高知まで!ごめんなさいよー、ほじゃけんど久しぶりやあきに会いとうて会いとうて!」


30分後、宿の前の大通りに車を停めて待つオカンに再会。
てか車?
オカン、そんな身体で運転大丈夫なんか?


「お母さん、危ないしオレ運転するよ。まだ酒呑んで無いから代わる」

「えーがちゃあ、えーがちゃあ!こう見えても毎日乗りよるきに!」


そう言った次の瞬間、ミラーで後方も確認せず右車線へ出ようとするオカン。
そらクラクション鳴らされるわ。


「危ない!危ないってお母さん!!やっぱ代わろ!オレ運転するから!」

「大丈夫やき!ちょっとジュンさんと久しぶりに会えたき見てなかっただけやーて」



いや、それもし事故ったら完全にオレのせいやん。
つーかオカン、あんたコロナの前に事故死するぞ。
頼むし早めに免許返納してくれ怖いから。







それから約小一時間ほどだが、オカンと寿司をつまむオレ(←シャリ抜き)。

ま、確かにコロナは心配だが、目の前でこれだけ嬉しそうにされると選択肢もクソも無くなってしまうな。


自分の身体の事

老いた飼い犬の事

可愛い孫の事

そして何より、大事な息子の事。


こんだけ嬉しそうに語られるとなぁ…
何かこっちまでジ~ンとしてまうわ。



「……さん、ジュンさん聞いちゅう?」

「…って、エッ?何??」

「ここの寿司、回転寿司やけんど、結構美味しいでしょう?ウチはここの水茄子のお寿司が一番好いちゅうがよぉ」




『寿し一貫 あごうの店』だったかな?
うん、旨かったよオカン。
ハンバーグ食ったばっかりだったし、アテと酒だけの注文で申し訳無かったけどね。
こっち来た時は、また一緒に来よう。







うん、いろいろあって疲れたけど良い一日だった。

ごちそうさま、オカン。