潤と俺が並んで座り、テーブルを挟んで相葉さんとニノが座る。
それはまるで、初めて恋人のご両親に挨拶をするかのようで…って、そんなのしたことないけど。
普段、どんな大舞台でも緊張しない俺がめっちゃ緊張してる。
そんな微妙な空気を察したのか、最初に口を開いたのはニノだった。
「あのさ、なんなのこれ。頑固親父に結婚の報告するみたいな空気。翔ちゃんもなんでそんなに緊張してんのよ」
「いや、だってさ…」
「翔さん。大丈夫だよ?雅紀さんにはもう報告してあるし」
そうなんだけどさ。
目の前の相葉さんは、いつもの物腰柔らかい感じの相葉さんじゃなくて。それが凄く怖いっていうか。
「……櫻井さん。俺、言いましたよね?潤ちゃんを泣かせたら許さないって」
「え?あ、はい」
「雅紀さん?なんの話し、」
「泣かせたよね?」
「……はい」
「ねぇ雅紀さん!泣かせるとかなんの話し?」
話の意図が掴めない潤が、相葉さんと俺の顔を交互に見る。
「櫻井さんに、潤ちゃんを幸せに出来るのかな~って話」
「それはもちろんっ、」
「雅紀さん、僕は翔さんに幸せにしてもらうつもりはないよ?」
「え?松本、くん?」
「僕が、翔さんを幸せにするの。翔さんが幸せなら僕も幸せだもん」
「松本くん…」
「もう!"松本くん"じゃないでしょ?潤って呼んで」
「あっ、ごめん!…潤」
「くふふっ。櫻井さん、もう潤ちゃんの尻に敷かれてる感じ?」
「ええ~、意外だわ」
俺たちのやり取りを相葉さんとニノが楽しそうに見てる。
「潤、ありがとう。一緒に幸せになろうね」
「うん」
にっこり笑う潤が可愛くて、もう人前でもなんでもいいやと潤に手を伸ばした瞬間、その手を相葉さんに掴まれた。
「でね、櫻井さん。本題はここからなんだけど」
「へ?」
「潤ちゃんには櫻井さんの家政夫を辞めてもらいます」
「え!?なんでっ!?」
「そういう業務規定だからです。契約書にも記載してありますよ。依頼主との業務以上の関係はNG。もしそうなった場合は担当を外すことになってますので」
「…そ、そんな…」
潤が俺の家政夫じゃなくなる?
疲れて家に帰っても、エプロンをした可愛い潤に、おかえりって言ってもらえないの?
一緒に楽しく洗濯物を畳むこともできなくなるの?
ガックリと肩を落とす俺の隣に潤が座る。
「翔さん。これからは家政夫としてじゃなくて、恋人としてここに来てもいい?」
「え…?あ、そっか!そうだよな、俺たち恋人になったんだよな」
相葉さんが真面目なトーンで話すから、家政夫を辞める=潤と会えなくなるって勘違いしてしまった。
「ニノ~、櫻井くんって面白いね。俺気に入っちゃった」
「はぁ…。悪趣味だよ、相葉さん」
ニノが呆れたように溜息を吐く。
「長い付き合いになりそうだし。これからよろしくね、櫻井くん♡」と人懐っこい笑顔で握手を求めてきた手を、俺は満面の笑みで思いっきり握り返してやった。