時系列4
 
はじめに読んだ感じ方と、2度3度読んだ感じ方がかわるくらもちさんの作品。

願わくは、この作品の内容に関して記憶喪失になって、もう一度初めて読む時の気持ちを味わいたいものです。そしてまた何度も読み返したい。

ですから作品を読む前に感想や時系列を読む事はやめた方がいいと思います。

 

(以下ネタバレです)

 

 

 

大会初日~終わりまでの時系列

 

[花乃大1 陽大高2 雛大3 水野大1 新保大2 佐々木大2]

・全日本学生弓道女子王座決定戦(11月中旬~下旬ごろ、伊勢神宮)

花乃、陽大、水野三人で大会の開催地にむかう。(大会1日目、公開練習等)

・陽大は雛の母親を好きだったのは陽向だと思い出す(記憶のすり替えと…)

・開催地駅で弓道部監督と会う、タクシーで会場に向かう(水野に体配だけ教えていたことを知る)

・佐々木さん出場を辞退、水野補欠に入る(花乃、雛が陽向の立場をやりたいことに気付く)

・陽大監督と相部屋で会場に残ることに(花乃は陽大が帰ったと思っている)

・初戦の坊野戦、水野陽大を見つける(大会2日目)

・花乃、水野、雛の三人立ち・花乃、雛に陽大がいることを教えられ、陽大のもとへ向かう

・放火犯初公判(4月)[花乃大2 陽大高3 雛大4 水野大2]

・倭舞、桜まつり流鏑馬(4月同日)[花乃大2 陽大高3 雛大4 水野大2]

END

 

 

大会の団体戦が行われる中、水野は会場に陽大を見つけ、「花乃さんて陽大さんのなんなのですか」と聞きます。すべては花乃の為のお膳立てだと言っていた彼女は、花乃が陽大にとって特別な存在であることは判ってはいたでしょうが、恋人なのか親友なのかどういう位置なのかが知りたかったのでしょう。

その問いに対しての答えは

 

「親友…っていったら笑ってくれた…

       ……彼女の笑顔がすべてを終わらせてくれる」

 

陽大にとって花乃は全てに対しての「救い」であることを示しています。

この時の会話は、水野が陽大の一番芯にある思いを受け取って三人立ちに向かう、最後のこころの受け渡し場面であると思います。

 

花乃に響く「内緒だ」「花乃を驚かせたいから」

この言葉の意味が、そのまま言葉通り花乃に伝わった瞬間、

水野を通して陽大の思いを花乃が受け取った時、花乃は涙を流します。

 

うれしいけどくやしい

負けたって思った

 

あの中学の三人立ちを再現するために陽大が水野に弓を教えていたことは、花乃をよろこばせるためであり、その思いはうれしかったのでしょう。

けれど、自分が目指し出来なかった、「弓を引く陽大になること」を水野が成し遂げていたことは、くやしいし花乃に負けたと思わせたのでしょう。

長年、それこそ陽大に会ったその時から花乃の弓はそれを目指していたのですから。

負けたことによって、花乃が陽大を弓で追い求めることも終わりとなったはずです。

 

 

かつて陽大が小学校5年生のころ出ていて、

花乃が陽大を見つけたさくら祭りのこども流鏑馬で幕おろす最終話。

開始時刻を過ぎても花乃を待っている陽大、

花乃は倭舞での時間の象徴である田路を連れてきます。

 

花乃を見ているであろう陽大の、この物語での最後のセリフが

「始めます」

であることに、ここからやっと二人の恋愛がはじまるという意味が込められている様です。

 

花乃が笑ってくれた終わりの時が、同時に始まりの時であるというように。