うつ状態の人は灰色の世界を見ている



うつ状態の人は、少なくとも無意識的には、実際に灰色(グレー)の世界を「見て」いることが新しい研究によって示された。


ドイツの研究グループが、網膜スキャンを用いてさまざまな黒と白のコントラストに対する網膜の反応を測定した結果、うつ状態の人はそうでない人に比べて網膜の反応が大幅に低下していることがわかった。患者が抗うつ薬を使用しているかどうかにかかわらず、反応の低さが認められたという。このほか、うつ症状が重症である人ほどコントラストに対する網膜の反応レベルが低いこともわかった。


さらに研究を重ねる必要はあるが、この知見から、網膜スキャンによってうつ病の診断や重症度の測定のほか、治療への反応を評価することも可能になるかもしれないと、フライブルクFreiburg大学のチームは述べている。研究部門においてもこの方法が有用となる可能性もある。


今回の研究は、医学誌「Biological Psychiatry(生物学的精神医学)」7月15日号に掲載された。同誌の編集長であるJohn Krystal氏はこの研究について、「うつ病が患者にとっての世界の感じ方をどのように変えるかを浮き彫りにするものである」と述べ、「詩人のウィリアム・クーパーWilliam Cowperは『多様さは人生のスパイス』と言ったが、人がうつになると視覚世界のコントラストを感じにくくなり、世界が楽しいと感じられなくなるようだ」と述べている。