脚がむずがゆい、足首が勝手にピクッと動く

 太ももやふくらはぎなど脚の奥のほうに、まるで虫がはい回っているような「むずがゆさ」や「ピリピリ感」があって、じっとしていられない、一晩中眠れなかった――などという症状を訴える患者さんが、この数年で目立つようになってきました。不眠を訴えて睡眠障害の専門医などに受診すると、「むずむず脚症候群」という病名で診断されることがあります。

 「むずむず脚症候群」は、脚の表面ではなく奥のほうに、「アリがはい回っているような感じ」「ピリピリ、ピクピクする不快感」が、多くは夕方から夜間におこります。初めは時々おこる程度だったものが、やがて毎日、それも夜だけでなく昼間、テレビを見ているときとか会議中のように、座ってじっとしているときにもおこるようになります。
 また、患者さんの8割ほどに、夜中に自分の意思とは無関係に足首から先が周期的にピクッと動く「周期性四肢運動障害」といわれる症状もみられます。

 こうした症状で夜は眠れず、日中は異常な眠気に悩まされ、日常生活に支障が出たりうつ状態におちいる人もいるほどです。「むずむず脚症候群」は、決して軽視できない病気なのです。

原因は不明だが、薬による対症療法がよく効く

 この病気は、一般の人はおろか医師の間でもこれまであまり知られていませんでしたが、全国には200~500万人もの患者さんがいると推計されています。性別では男性よりは女性に、年齢層では中高年に多くみられるものの、小学生や中学生といった年代でも発症する例もあるので、中高年以上の病気と限定することはできません。

 不快な症状は脚を動かすと軽くなるので、脚をたたいたり、ベッドに脚をぶつけたり、寝返りを打ったりするようになります。眠りたいのをこらえて歩き回る人もいて、どうしても睡眠は不足しがちです。

 どうしてこのような症状がおこるのか、はっきりしたことはまだ解明されていませんが、脳内の神経伝達物質ドーパミンの働きの低下や、鉄分の欠乏などが関係しているのではないかと考えられています。そこで、現在行われている治療法は症状を抑える対症療法になり、パーキンソン病の治療薬や抗てんかん薬がよく効いています。
 

 「むずむず脚症候群」は症状の説明がしづらい病気ですが、以下のような症状があったら、心療内科や精神科を受診するとよいでしょう。

●こんな症状があったら「むずむず脚症候群」かも
・脚の表面というより奥のほうが、むずむずしたり痛んだりする
・症状は夕方や寝入りばなに現れることが多い
・昼間は、映画館など座ってじっとしていなければいけないようなときに症状が悪化する
・脚を動かしたい気持ちが強くなり、動かすと症状はやわらぐ
・何かに熱中しているときは症状は軽い
・脚の違和感で夜中によく目がさめてしまう
・昼間に強い眠気を感じ、仕事中に居眠りすることがある

 日常生活での注意は、カフェイン、ニコチン、アルコールなどによっておこりやすくなるので、症状が現れやすい夕方以降は、コーヒーやお茶、タバコ、お酒などは控えるほうがよいでしょう。また、筋肉疲労があると症状が出やすい傾向があるので、寝る前にマッサージやストレッチングで疲れを軽くしておくことも予防になります。