刑務所の食事の代名詞でもある「麦飯」が糖尿病に効果的―。福島刑務所(福島市)で受刑者の健康管理にかかわった日向正光医師(37)=福島市=が服役中の糖尿病患者のデータを分析し、刑務所の食事が糖尿病の改善に向いていることを確認した。麦飯などに食物繊維がたっぷり含まれているためとみられる。日向医師は医療関係者や栄養士らの研究会などで紹介し、糖尿病の予防と改善を呼び掛けている。

 福島刑務所医務課に勤務していた日向医師は、1998年から2004年にかけて服役した男性の糖尿病患者109人について、過去のカルテを基に病状の経過を分析した。平均年齢は51歳で、全員が生活習慣などでインスリンの効きが悪くなる2型の糖尿病だった。

 分析の結果、109人のうち92人(84.4%)に糖代謝の改善効果がみられた。

 入所時と出所直前の比較では、平均体重は65キロ、62キロと大きな差がなかったが、空腹時血糖の平均値は184ミリグラムから113ミリグラムへ、糖尿病の指標となるグリコヘモグロビンの平均値も8.4%から5.9%へと劇的に低下したという。

 インスリン治療をしていた18人のうちの5人、血糖降下剤を飲んでいた34人のうちの17人が、それぞれ投薬をやめるまでに改善した。

 日向医師は喫煙や飲酒の禁止、規則正しい生活とともに「刑務所の主食の麦飯に多く含まれる食物繊維が糖の吸収を緩和し、症状改善につながっている可能性がある」と指摘する。

 福島刑務所も含め刑務所のご飯は、コメとオオムギの比率が7対3。さらに福島刑務所では海藻類やキノコ類などの高食物繊維食も多く出され、受刑者は日本人男性の約2倍の食物繊維、5倍の水溶性食物繊維を摂取しているという。

 一方で、当時は服役中の運動が週2、3回、各30分程度と決して多くはなく、1日の平均摂取カロリーは日本人男性の平均値より高かった。

 日向医師は「糖尿病の改善には、カロリー制限や激しい運動よりも、食物繊維を多く含んだ食事と規則正しい生活習慣が非常に有効。薬に頼らなくとも生活習慣を変えるだけで、予防や改善に大きな効果があることを知ってほしい」と話している。


河北新報