8月の末頃に、仲良しのスタッフ(Yさん)から連絡があって

「一度、職場に出てこれる?

 Mさんの状態があまり良くないんやけど。」 

「○○さんに知らせとけへんかったら、私が後悔するから」って。

 

Mさんは、84歳のお爺ちゃん…。

 

私のことが大好きで、でも、とてもシャイで

私のことをいつも、目で追いかけて

私からMさんの傍に行くのを待っておられた。

  (私の思い過ごしではないと思ってる 笑)

 

肺がんの末期と聞かされてたけど

Mさんは私に少し前

 「あと2年持たない、と言われた」と仰っていた。

 

9月1日(土)

Mさんが来所されている時間に、会いに行った。

仲良しの利用者さんと一緒に、将棋をされていて

私が傍に行った途端に、満面の笑みを見せてくれた。

 

電話番号を教えて欲しいと言われ

 携帯と家の番号をメモに書いて渡した。

 

PTの先生からは、

「血圧が急激に下がるし、胸に水が溜まって

 先日も1.5Lほど抜いてる。

 酸素量も、2倍に増えてる。

 いつ何があっても、おかしくない状態」と聞かされ

 

9月半ば、Mさんのお宅を尋ねた。

うっかり者の私は、その時間、Mさんがデイにいることを忘れ

奥様が対応に出てくれた。

その奥さんが

「Mが、○○さんの為にと、買っておいたものがあるんですよ」って

包みを渡されたので

「それは、Mさんの手から直接頂きます。」

「今度はMさんがいる時間を間違えずに来ますから」と言って帰ってきた。

 

それからまた1週間後くらいに電話すると

受話器を取ってくれたMさん

「もしもし・・・○○です。 Mさん?」と言った途端に

 ガッチャーン!!!

「もしもし?もしもし?もしもし?」

 

すぐさま、自転車を走らせてMさん宅へ急ぐ。

 

奥様が

「私が洗濯物を取り込んでいる間に

Mが受話器取って、その途端後ろ向きに倒れたんです。」

 

「もう~、Mさん。大丈夫でしたか?」

 

その時にも、恥ずかしそうに笑っていたMさん。

 

呼吸が苦しそうで、あまり喋れない状態だったけれど

帰り際に、私を玄関まで見送ると言って

元気な姿を見せてくれようとしたMさん。

Mさんの手から私に渡してくれた包みは

「自分が買いに行けないから、娘に頼んだ。」と言って

開けてみたら、とっても可愛らしい日傘とエコバックだった。

  ありがとう、Mさん。こんなにしてもらって。

 

玄関先に植えてある、鉢植えの「きんかん」の樹は

まだしっかりと歩けるときに、奥様と一緒にお散歩に行って

私にプレゼントするために買ってきてくれたもの。

 

「Mさん、今度もらいに来るから、それまで面倒見てて」って

ずっとお願いしていた。

 

そして大切に大切に育ててくれていた。

 

次に行ったのは、私が職場復帰する5日前。

奥様から電話があって、何かあったのかとびっくりして出たら

ケアマネージャーへの不満だった。

電話ではなんだから、と、すぐに行くからと言えば

「こんな話はMの前ではできないけど、来てください。

 Mが喜びます。」と言ってくれて

すぐさま、また自転車で走って行った。

 

そして、Mさんと来年の話をした。

来年のお正月の話、来年のMさんの誕生日。

すごいな、と思ったのが、私の誕生日をMさんが知っていたこと。

 

そして、私が来週から復帰することを話して

Mさんが、とても喜んでくれたこと。

 

それなのに、私が復帰する前の19日に

Mさんが入院されたことを一昨日になって知る。

 

そして今日、お見舞いに行ってきた。

緩和病棟に入院していたMさんは

急激に衰えていて、小さく小さくなっていて

奥様が「○○さん、来てくれましたよ」って

「目を開けて」って

 

すると、しっかり目を開けて私を見てくれた。

奥様が「会いたかったでしょ? 良かったねぇ。」って。

「○○さんの顔、しっかり見ておいてね。」って

 

私、小さく小さくなった手を探して握って

「私が復帰したと思ったら、Mさんがいないやん。」

「早く元気に帰ってきて、また家に行くから。デイで待ってるから」って。

 

「今、デイはとっても賑やかですよ、Mさんが一緒に将棋してたOさんが

将棋の相手がいないから、退屈そうですよ」って。

 

Mさん 声にならない声で、「ありがとう」って。

 

 

介護の仕事をして20年余り。

今まで一度も、自分の電話番号を教えたことはないし

利用者さんや患者さんのお宅にプライベートで上がらせてもらったこともなかった。

入院したと聞いても、お見舞いに行ったこともなかった。

 

今回はどうしてだろう。

とても気になり、気になったら、居ても経ってもいられなくなり行動する。

 

私が後悔しないように。

私のことを慕ってくれたMさんが、少しでも後悔を残さないように。

 

また近々、お見舞いに行けますように。

容態が回復し、お家に帰れますように。

ただただ、祈ってる。