颯真が診察に行き

また彼と2人きり








「ねぇ、職場では声かけられたりしないの?」



「職場では、そういえば声かけられたことない」



「それなら良かった。出産前、どれくらいまで働こうと思ってる?」



「今のお店、閉店が決まったの。だから、閉店と同時にやめようと思ってるけど、まだ迷ってる」



「体調のこともあるし、ホントは早めにやめて欲しいと思ってるけど、それは、無理かな?」



「仕事辞めちゃったら、収入なくなるから、生活…」



「それは心配しなくていいよ。俺が支えるって言ったじゃん。それなりに給料ももらってるから、経済面でも、頼ってほしい」



「そんな………Kに負担かけられない」



「俺はそのつもりで、離婚も引っ越しも提案してたんだよ。だから、そこは気にしないで、俺を頼って!

それに俺自身、美紗には、今、ゆっくり休んでほしいんだ。カウンセラーとして未熟な俺でも、美紗の精神面がどんな状況か分かってるつもりだし、美紗が思ってるほど、楽観視できない状態なんだよ。

一般的に、出産前後は、ただでさえ精神的に不安定になりやすいから、できる限り、周りでサポート体制を作りたい。

できることなら、すぐにでも一緒に住みたいと思ってる。ただ、一緒に住むことで美紗に結婚とか入籍とか……プレッシャーかけたくなかったんだ」



「甘えっぱなしなのに経済面でも頼っちゃっていいの?」



「うん。頼って!!それで、仕事辞めてからは、しっかり心のケアしていかない?1人で出かけたいときもあるでしょ?その部分だけでも少し治療が出来れば、美紗の負担も減るんじゃないかな」



「こんなにも周りに支えてもらって、幸せだなぁって思う」



「これから、玲さんの家に引っ越して、幸せをもっと実感できるんじゃない?

あとは、頼ることと甘えることが今より出来たら、もっと楽になるよ」








“トントントン”


「どんな感じ?」






診察が終わって

颯真が戻ってきた