大河ドラマ「真田丸」、おもろいす。


 三谷幸喜脚本、キャスト、NHK演出、三位一体気持ちEす。


 なんといっても草刈正雄!「復活の日」に代表される昭和の二枚目としての草刈正雄でなく、NHK「美の壷」であらわになった、すっとんきょうで食えないおじさんとしての草刈正雄。そうそう、それそれ!


 西村雅彦の決め台詞「黙れ、こわっぱ!」、現在桜井内2016年流行語大賞です。氏演じる室賀正武にことあるごとに侮辱され、お父さんにはいちいちあしらわれ、ばあちゃんには全く話を聞いてもらえず、奥さんいくらなんでも弱々し過ぎの大泉洋。大変おいしゅうございます。


 内野聖陽、藤岡弘、高嶋政伸…etc、戦国武将たちの妖怪っぷりを演じるモンスター俳優たち。高畑淳子、木村佳乃、斉藤由貴…etc、乱世を生きる女たちのクレイジーやエゴをいかんなくぶちまけてくれる魔女優陣にも脱帽。


 笑わせてくれます。そう、コメディーなのです。大河なのに。


 三谷氏前作の大河ドラマ「新撰組!」でも、三谷流ユーモアを随所にちりばめてはくれたものの、書かねばならぬ主人公たちのまっすぐさや彼らを待ち受ける凄惨な末路が、どうしても笑いの邪魔になった感を禁じ得なかった。


 しかし今回は戦国時代。武士道という建前とサヴァイブするためにはなんでもやるという本音が矛盾しまくる、強者おじさんたちの知恵&力比べ。ユーモア及びペーソス成分ぶち込みスペース悠々広々!開始早々三谷さんの意地悪さ全開!もー、楽しませていただいております。


 そう。この、意地悪さが楽しいの。1980年代、ビートたけしの登場とパンク~ニューウェーブのうねりの中、毒っけと批評精神を栄養に育った世代としては、ここ十数年の世の空気には物足りないものがあったのです。年下みんないいこなんだけどね。絆も結構なことなんだけどね。それだけじゃあ、ちょっとね。特にナンシー関さん亡きあと、痛快に的確に他人や世の中を暴く(イジるとかディスるじゃなくて、「暴く」。ここ、大事)ことが難しくなった。ナンシー以下の技量で暴かれても、もはや溜飲は下がらないカラダになってしまっている自分に気づくのです。まして自分に暴く技量などなく。胸にぽっかり開いたナンシーの穴を、誰か埋めてくれないかとずっと求めていた。そんな思いも相まって、今回の大河ドラマ、楽しんでおります。魑魅魍魎跳梁跋扈、謀り謀られ騙し騙され、降り注ぐアクシデントの雨あられ!年末までよろしくねー!!


 それはそれとして。


 先日飛行機での移動中に「スターウォーズ~フォースの覚醒~」を観ました。みんな大好きスターウォーズ。当方ばっちしスターウォーズ世代。しかしながら、なんとなく見そびれていたクチ。あまりの周りの騒ぎっぷりに、


「え、そんなおもろいの!?」


と、盛り上がる祭りを気にしつつ、やっぱりスルーして「ふぞろいの林檎たち」にハートを捧げていた小生。せっかくのヒマな移動中、この機会にいっちょ本気で観てやろうと。この新作も話題騒然らしきことはこんなあたしも横目で感じておりましたもの。さて、どんなものか。


 2時間後。見終わって、ほんとの正直な感想。


「普通に楽しかったです。」


 いやいやいやいや。「普通」じゃダメでしょ、俺。みんなをあれほど熱狂させる何かを感じ取れたの?俺よ。フィギュアのひとつでも買いたくなったの?俺さんよ。その答えは、「いえ、特に」。ホントに、普通に、ああ、ハリウッドだなあと。確かに魅力的なキャラクターやアイテムてんこ盛り。スピードも迫力も恐れ入りました。でも、他のハリウッド大作になくてスターウォーズにだけめっちゃある何かを、そんな、感じること、出来なかったとです。


 なぜか。気になって調べたらあなた、今回は、というより今回以降未来永劫、ジョージルーカスは一切制作にタッチしないそうじゃないすか。それどころか、売却先のディズニーにルーカスがあらすじ持っていったら、ボツ喰らったらしいじゃないすか。


 なるほど。これはもう、言ってみれば藤子F不二夫亡き後の映画版ドラえもんなのですね。かわいく魅力的なキャラクターを受け継ぎつつ、それをベースに優秀なスタッフたちが愛と勇気とスリルとスペクタクルのエンターテインメントショウを構築しまくると、こういったことなのですね。


 そりゃ、俺、もう手遅れってことですよ、スターウォーズ。アニメの「サザエさん」みたいに、新聞の4コマ漫画としての「サザエさん」から離れたものとしてみんなが最初から楽しんでいた種類の作品と違い、スターウォーズはルーカスが発明した世界観が絶対不可侵のファンタジー。ウォーズが繰り広げられる宇宙は、もとをただせばルーカスの脳内宇宙。そこでキラキラばちばち光ってはじけるスターたちは、もう他人の手に渡ってしまったのだから。俺のような出遅れ輩が、どうして真のR2-D2  ファンたりえましょう。今のドラえもんが好きな子供たちは、きっとオリジナルのドラちゃんを見たらなにかしら違和感を覚えるはず。それは、ほんとにドラえもんファンといえるのかしら。逆もしかり。「忠実に再現した」とされるオリジナルのキャラクターたちに、どうしてホントの意味で感動できましょう。ましてルーカスの土台にくっつけられた他人製の新たなキャラに、どうしてホントの意味で感情移入できましょう。


 すっごいよくできてるね!ひたすらそう感心するだけです。


 凄いオリジナルは、受け継がれて作家の手を離れるもの。仮面ライダーなんか、石ノ森のかけらも残っとらんものね。そう考えると、凄いオリジナルって、今は昔ほど生まれていないのでしょうね。生まれていれば、リメイクなんかしてる隙、ないもんね。


 逆に言うと、昭和ってゴールドラッシュな時代だったんですね。その時代を子供として過ごせて、ラッキーでした。せっかく凄いオリジナルをいっぱい喰らって大きくなったんだものね。これからも頑張ります!はい。


 とりあえず、日曜8時がたのしみです!なんて、テレビの時間を楽しみにするという心が、もう昭和。