foxy 北海道から上京してきたモデル志望の女は、モデルクラブに騙されて一文無しになり途方に暮れる。
お金のために働きはじめた銀座のクラブは想像を絶する世界だった。
少しずつ銀座の女として地に足をつけていく過程と、頂点を前に崩れ出す経過を描く長編作品。


主人公・千華はモデルになりたくて北海道から上京した。
母親から貰ったなけなしのお金と自分の貯金をモデルクラブに預け、意気揚揚と東京生活をスタートさせた。
しかし、そのモデルクラブは詐欺集団でまんまとお金を騙し取られ残金は10万になってしまう。
背に腹はかえられないと時給のいい銀座のバニーガールの面接に向かうものの、夜の街の独特な雰囲気と刺々しい視線に負けてしまう千華。
偶然知り合った氏家の誘いにのり、『ゼビリア』というクラブで働き始める。
意地悪なホステス達の中で、ナンバーワンの繭子だけが千華の味方だった。
繭子の家に居候しながらのホステス修業が始まった。
予想より忙しいホステス生活に慣れた頃、まだ捨てていなかったモデルへの夢へ思いを馳せ、大手モデル事務所のスクールへ通うお金を用立てなければと考える。
繭子の指導の下、客からお金をせびり始める千華。
繭子と居れば、何をしていても怖くなかった。
千華は先の不安など全く感じないまま、繭子の客からご馳走されプレゼントされ、自分の客からも小金をせしめ、少しずつ銀座の女に染まっていく。
お金に目処がつきモデル事務所に入りオーディションを受け、いくつかのトラブルを乗り越えようやく大きな仕事にありつけた。
銀座からも足を洗い、繭子とも決別した千華。
このままきっと昇りつめたいと願う。

しかし、現実はそんなに甘くなく少しずつ足場が揺れはじめる。
独立した繭子、金をせしめた客・・・様々な事から追われる千華。
そして、千華は繭子の生き方を想い、自分の生き方を再考する。


銀座のホステスの経験もある著者が描く水商売の世界はドロドロしていて、ドラマで見るようなキレイゴトは全く含まれていなかった。
男と女の欲望がぶつかりあい、駆け引きを繰り返し、戦いがはびこる世界を描いている。
同僚ホステスからの嫌がらせ、裏切り、落とし込みなどが次々に起こる。
そんな中で、田舎者とバカにされていた主人公が銀座の女として独り立ちしていく姿は勇ましいというか痛々しいというか。
次々にトラブルが起き面白い展開があるので一気に読めるのだが、読んだ後に心に残るものは何1つない娯楽小説だった


<文芸春秋 2005年>


宇佐美 游
FOXY