bubble その昔、銀行は永遠に絶対安全だった。
しかし現代は大手銀行同士が統合したり、挙句の果てには倒産した銀行まである。
そんな都市銀行を舞台に、バブル時代に入行した男達の銀行マンとしての日々を描く長編小説


主人公・半沢は有名大学に在学している。
否応なくやってきた就職戦線から物語はスタートする。
売り手市場といわれたその時代だが、銀行部門は倍率も高く数少ない買い手市場だった。
半沢は都市銀行を希望し、幾度かの面接を通過して内定を貰い例に漏れず拘束された。
高倍率の中で内定を手にした一握りの連中と銀行から拘束される夏を過ごし、晴れて入社した。
それから十数年。
半沢は統合され名前の変わった東京中央銀行の大阪西支店で融資課長として働いている。
そこで問題が起きた。
支店長・浅野にゴリ押しされて止む無く進めた西大阪スチールへの5億の無担保融資が焦げ付き、窮地に立たされているのだった。
支店長・副支店長から責任転嫁され憤る半沢。
なんとか債権を回収しなければ半沢は飛ばされる運命だった。
怒りを抑え課の連中と今回の融資について調査を進めると、不自然な帳簿やおかしな金の動きがあることに気付く。
連鎖倒産した下請け企業の社長・竹下や同期の渡真利などと手を組み真相を明らかにしていく。
やがて意外な真実に辿り着き、半沢は債権回収と復讐に燃えていく。


大手銀行に勤めていると聞けば、羨ましいとか凄いなぁとか安定してるのねなんて言われたものだ。
銀行不倒神話は崩壊し、昨今は大変であろう。
そんな銀行を舞台に、働き盛りの男が無実の罪をきせられそうになったり、どうしようもない年配連中や上司に追い詰められながらも自分の足と部下や仲間からの助けで真実を見つけ出し逆境にめげず突き進んでいく様は痛快である。
銀行の裏側や内情、金融用語などもわかりやすく書かれており、面白く一気に読めた。
途中、妻からのプレッシャーなどのくだりもありサラリーマン男性の辛さを垣間見る部分もある。
最後の実父とのやりとりの回想部分はそれまでの戦いとは打って変わって心に染みる。
男女関係なく読める娯楽小説だが、同年代の会社員たちはもっと楽しめるのではないかと思う1冊。


<文藝春秋 2004年>


池井戸 潤
オレたちバブル入行組