空想なのか?
現実なのか?
著者の実体験なのか?
不思議な感じを味わうことのできる長編である。

主人公は作家M。
中学二年生の娘がいる。
何度も繰り返す結婚と離婚。
まるで真実の出来事のように次々溢れる嘘物語を綴り5冊の本を出版した。
しかし、次が無かった。
次回作の構想を考えあぐねていた。
何年もただの飲み会になりつつある編集者との打ち合わせの席で、軽く口をついて出た案は、デビュー作の登場人物の成長した姿を描く物語だった。
成り行きで決まってしまったけれど、その物語に着手するM。
デビュー作「鞄屋の娘」の帆太郎の大人時代を描く為に帆太郎の今を想像しキャラクター設定をしていく。
Mの頭に浮かんだのは別れたばかりの恋人の姿だった。
恋人の出身校に帆太郎を通学させる設定で取材をスタートさせるM。
別れたばかりの恋人に取材させてくれる学生を捜してもらい、自分より10歳以上年下の青年たちに次々と会う。
虚構と現実がごちゃ交ぜになっていく。

裕福な育ちの青年達を相手に取材をし、聞き出した恋愛感を嘲笑うなど、大人の女が失恋をした後にこんなに醜くなってしまうことがあるのかと恐ろしく感じるシーンも。
作品の進行につれ、想像は壊れ妄想に走っていき、ただ書き続ける作家Mの姿を描く読み応えのある1冊。

<光文社 2004年>

著者: 前川麻子
タイトル: これを読んだら連絡をください