好きな女性作家の大御所、田辺聖子の日記エッセイ。

百歳に近い実の母と車椅子の〝カモカのおっちゃん〟こと夫との生活と最期を綴っている。

最愛の夫の入院と死。
看病の日々、死の後の葬儀や法事。
96歳の気丈な実母との同居生活。
そして原稿執筆、賞の選考、講演等の作家活動。
多忙な毎日の食卓風景など、生きていくことの哀しみや安らぎを田辺聖子らしい言葉で綴った、愛と感動と発見のユーモア日記エッセイ。

表題にある「残花」とは散り残った花のこと。
残花亭とは人生を幾分か過ごした著者が我が身に冠した小粋な屋号。

最愛の連れ合いであり、飲み友達であり、親友の夫を失うということがどれだけの重みのある出来事なのか、思い知らされる。
何気ない日常に始まり、発病からのいきさつが巻末に載っているので、それを読
んでまた頁を戻せば深い愛の世界へ誘われることは間違いない。

夫婦の愛と別れはこうありたい。そんな素晴らしい想いに満ちた夫婦生活の終焉を見せてくれる1冊。

<角川書店 2004年>

著者: 田辺 聖子
タイトル: 残花亭日暦