ここ最近、集団自殺を含め日本での自殺者増加に関するニュースが多く取り上げられている。
が、自殺は昔から存在した。芥川龍之介然り、三島由紀夫然り。
この『二十歳の原点』も、1969年6月に鉄道へ飛び込み自殺した高野悦子の日記をまとめたもので、自殺に至るまでの心境の変化や苦しみが刻々と綴られている。
読んでいて決して楽しいものではないが、魂の叫びが心に響くことは間違いない。

学生運動が盛んだったあの時代の京都で、高野悦子は孤独を抱え、己の未熟を恨み、自己の確立を目指すものの、現実と理想の狭間で日々苦しむ。
そんな様子が、切々と綴られたノートをまとめた1冊。

続編として『二十歳の原点序章』、『二十歳の原点ノート』が出版されている。
今も新潮文庫夏の100冊のようなキャンペーンで平積みされているところを見ると、それなりに継続して売れているんだろう。

最初に述べたとおり、読んで楽しいだけの気持ちが残る作品ではない。
自殺したことを讃えるつもりも無い。
私がこの本を買った当時は著者と同じくらいの年齢だった。
その時、日本はバブルが弾けたばかりでまだ景気も良く自殺したいなんて思い悩む若者は少なく、海外旅行だのお立ち台で踊るだのそんなことばかり考えていた人が大半じゃないだろうか。
そんな時これを読んで衝撃を受けたのは言うまでもない。
同じ二十歳でもこんなに違うものかと。
生まれた時代で、こんなに違うものかと。
彼女が現代に生まれていたら違っていたのか、また同じように死んでいったのかはわからない。
でも、本当に胸に響くものがあるのだ。彼女の日記には。
日記をつけている方なら、共鳴する点も多くあるだろう。日記の中の自分というのは、酷くみにくくて情けなくて恥ずかしいものだと思う。
そんな部分を本として作り上げているのだから、何も思わないはずはない。
若いイマドキの子に読んで貰いたいが、読んでくれるだろうか?手にするチャンスがあるだろうか?

<新潮文庫 1979年>

著者: 高野 悦子
タイトル: 二十歳の原点