ちょうど今位の時期だった
あの日は寒い日で夜からは雪になった。
そんな日に「アイツ」は突然に逝ってしまった。
大学のゼミのレポートをほとんど1週間寝ずに仕上げた疲労がほんの少しだけ弱かった心臓に行ってしまった事による「急性心不全」
私たちはみんな信じられないままアイツを見送った。
まだ二十歳そこそこの早過ぎる死だった。
もう20数年前の話になるが、ガソリンスタンドで働いていた事がある。
アイツはその時の職場仲間の1人だった。
仲の良い職場で、真面目だけど不器用なアイツはみんなにいじられながら愛されていた。
そんなアイツが急死してしまってから葬儀も過ぎた頃に、みんなが騒ぎ出した。
「ヤバイ」
と。
一体、どうしたのか?と尋ねると1人が言いにくそうに言い出した。
「実は…」
聞いてみると、仲の良かった彼らは時々みんなでアダルトビデオを購入し、お互いに貸し借りをしていたのだと言う。
あぁ…なるほど。
でも、年齢的に考えても遺品としては別に珍しい物じゃない。
別にいいじゃないかと言うと、
「いや、非常にまずいと思う」
「?…なんで??」
みんなから聞いたアダルトビデオのタイトルを聞いて、私も納得してしまった。
まさかアイツがそういう趣味があったとは…
(ここでも故人の名誉も考慮してタイトルは自主規制させていただきます)
しかも、仲間内ではダントツのコレクション数を誇っていたという。
アイツは大学に通学する関係上、親元を離れて弟と2人暮らしをしていたので、多数のコレクションが可能だったらしい。
「多分ダンボールに2〜3箱にはなると思う」
そんなに??
それは確かにアイツも両親にはあまり見せたくはないだろう。
結局、アイツの「シークレットな遺品」は同居していた弟の協力もあって両親の目に触れる事なく処分された。
弟も知らなかったというから、大学や他の繋がりの友人達も知らなかったのだろう。
「アルバイト先の仲間」という微妙な関係だから、そんな他の誰にも見せたくはないだろう一面をさらけ出していたのかも知れない。
しかし、あの時、あの遺品に気がついたアルバイト仲間達も凄いと思う。
いくら楽しみ?を共有していたかもしれないとはいえ、良く気がついた。
しかも、その1番先に気がついた彼はアイツの葬儀で
「俺、これ以上は無理だ」
と、火葬場に行く事を辞退し、最期のお別れでボロ泣きしていた彼だ。
アルバイト仲間の中では1番ショックを受けていたはずだ。
でも、そんな彼だから気がついたのかもしれない。
急に逝ってしまったアイツが1番気にしていた事だったかもしれない事。
間違いなく「男にしかわからない友情」だと思う。
今となっては、アイツの悲しい急逝の話も、ほんの少しほんわかとしたものに変えられるこのエピソード。
もしかしたら、アイツも「愛されるいじられキャラ」として喜んでいるかもしれない。
皆さまもどうかお身体にはお気をつけてお過ごし下さい。
くれぐれもご無理はなさいませんようお願い申し上げます。