性同一性障害の診断書が出て、ホルモン治療を始めるにあたって私は会社にカミングアウトすることにしました。
私は、請負派遣会社の1人として大手プリンター工場に勤めています。
治療を始める前から5年勤めていたので、管理者達とは顔馴染みの仲でした。
「実は…」
と、私は担当の管理者に話始めました。
・小さい頃から違和感があったこと。
・治療を始めたいこと。
・治療を始めると身体の男性化が進み、更衣室やトイレの問題があること。
・名前も改名したいこと。
「いいんじゃない」
話を聞いていた管理者の開口一番の言葉でした。
え?!
「大丈夫だよ!わかった!治療の進行を見ながら対応していこう!治療、頑張って!」
え?え?マジで?!
カミングアウトした私の方がビックリです。
世間的には、性同一性障害を理由に解雇や採用取り消しなどで当事者が「望む性別」で勤続出来る事は難しいと聞いていましたから、最悪退職かも…と覚悟しての相談でしたから本当にビックリしました。
「あ、あのトイレとか更衣室とか…」
「大丈夫だよ!ひとつひとつやっていこう!
どうせ今だって良く男と思われるって言ってたじゃん。」
そう言って管理者はアハハと笑いました。
確かに私は小さい頃から、体も大きく、背も高く、髪も短いし、服装もメンズ物ばかりを来ていたので、声さえ出さなければ男と思われる事が多かったのです。
当時、トイレに入れば
「ここは女子トイレですよ!」
と言われる事は日常茶飯事でした。
実際、職場でも女子更衣室を使っていた頃
「そっちは女子です!」
と怒られた事もありました。
(この時は誤解だとわかって相手はすぐに謝罪してくれましたが、何だか申し訳なく思ってしまいました。)
…だけど、本当にいいの!?
思いがけないあっさりとした展開に、言葉に出来ない位、嬉しかったのを覚えています。
「会社では初めてだけど、このご時世、そういう人が多くなって来ると思うんだ。だから、こちらとしても勉強のつもりでひとつひとつ対応していきたいと思うよ。…それに…」
管理者は続けました。
「実は、友達に同じタイプの奴がいるんだ。高校からの付き合いで、体は女性だけど『男友達』がね。だから、俺なりの理解はあるつもり!」
「え!本当ですか?」
「そ!…それに今までの勤務実績を考えても解雇の対象にはならないよ!」
更に嬉しい言葉でした。
私は安心して、この問題を管理者達に委任することにしました。
そして、数日後……。
管理者が私の所へやってきました。
「大変なんだね。改めて思ったよ!」
「え?何が?」
実はあの後に管理者達が話し合い、
「男としてやって行くのなら新しい職場で心機一転するのもいいんじゃないか?そうすれば、いたずらに好奇な目で見られる事もないんじゃないか?」
と、私の事を考慮してくれる意見を出してくれ、そのアイディアを私に具体的に伝える為に「新しい職場候補地」を探してくれたらしいのです。
しかし、答えは「NO」ばかりでした。
その理由は
「前例がない。どう対応していいかわからない。」
でした。
あちこちの現場に問い合わせていた管理者の1人は
「会ってもいない、見たこともない人間をわからないってどういう事だ!!当たり前じゃないか!何が悪いんだ!!」
と、本気で怒ってくれたらしいのです。
「大変なんだね。」
「はい。…だから、治療頑張れって言ってもらった事ビックリしたんです。」
管理者の話を聞きながら、私はやっぱりなぁ…と思っていました。
そして、私は管理者達の心遣いに感謝しながら、そのままこの工場で「男」として頑張るチャンスをもらいました。
この派遣会社初の「トランスジェンダー」の誕生でした。
「就労する」
と、いうことも当事者にとっては大きな問題です。
望む性で働くことの難しさを痛感している当事者は少なくないでしょう。
でも、考えてみれば当たり前と言えば当たり前で、女(男)だと思っていた人間に突然に男(女)だと思ってくれ!扱ってくれ!と言われても受け止められる人はそうそういないと思います。
それに対して当事者としてはもちろんチャンスは欲しいですが、だからと言って自分の権利ばかりを主張するのも私は何だか違うと思ってます。
良く聞く話で「望む性で働けないから働きたくない」と性同一性障害を理由にニートになっている人もいるらしいです。
それについては、一概には言えないと思いますが、少なくとも私自身は「働かない男なんぞ駄目だ!」とスカートでなければ女子の制服で働いてきました。
そして、本来、女子なら嫌がる仕事も進んでやったりして自分なりに「男をアピール」してきたつもりです。
主張の仕方は言葉ばかりではないと思っています。
「前例がない」なら作っていくしかないのです!
性同一性障害なんて言葉が世に広まったのなんかここ10年位の話で、まだまだ歴史は始まったばかりです。
とは言え、この言葉が拡がるまでには、それ以前に悩み、葛藤し続けて来た「先人の当事者達」がいたから他にありません。
それは当事者の私達さえが考えるよりも永い時間だったはずです。
ここから先は「今」の私達が「次」に渡すまで自分の出来る範囲でベストを尽くしていくしかないのです!
勘違いしてはいけないのは頑張るのは「周り」じゃないんです!
「自分」が頑張るしかないんです!
「前例にならなければならない」
のです!
「俺は男だ!」
と思っているのならニートなんてやっている時間が勿体ないです!
「前例」になって男になりましょう!!
だから、私は今、微力かも知れませんがプリンター工場の片隅で歴史を作っています。
信じてくれている人達を裏切らない為にも、これからもベストを尽くしていかなければと思っています。
私は、請負派遣会社の1人として大手プリンター工場に勤めています。
治療を始める前から5年勤めていたので、管理者達とは顔馴染みの仲でした。
「実は…」
と、私は担当の管理者に話始めました。
・小さい頃から違和感があったこと。
・治療を始めたいこと。
・治療を始めると身体の男性化が進み、更衣室やトイレの問題があること。
・名前も改名したいこと。
「いいんじゃない」
話を聞いていた管理者の開口一番の言葉でした。
え?!
「大丈夫だよ!わかった!治療の進行を見ながら対応していこう!治療、頑張って!」
え?え?マジで?!
カミングアウトした私の方がビックリです。
世間的には、性同一性障害を理由に解雇や採用取り消しなどで当事者が「望む性別」で勤続出来る事は難しいと聞いていましたから、最悪退職かも…と覚悟しての相談でしたから本当にビックリしました。
「あ、あのトイレとか更衣室とか…」
「大丈夫だよ!ひとつひとつやっていこう!
どうせ今だって良く男と思われるって言ってたじゃん。」
そう言って管理者はアハハと笑いました。
確かに私は小さい頃から、体も大きく、背も高く、髪も短いし、服装もメンズ物ばかりを来ていたので、声さえ出さなければ男と思われる事が多かったのです。
当時、トイレに入れば
「ここは女子トイレですよ!」
と言われる事は日常茶飯事でした。
実際、職場でも女子更衣室を使っていた頃
「そっちは女子です!」
と怒られた事もありました。
(この時は誤解だとわかって相手はすぐに謝罪してくれましたが、何だか申し訳なく思ってしまいました。)
…だけど、本当にいいの!?
思いがけないあっさりとした展開に、言葉に出来ない位、嬉しかったのを覚えています。
「会社では初めてだけど、このご時世、そういう人が多くなって来ると思うんだ。だから、こちらとしても勉強のつもりでひとつひとつ対応していきたいと思うよ。…それに…」
管理者は続けました。
「実は、友達に同じタイプの奴がいるんだ。高校からの付き合いで、体は女性だけど『男友達』がね。だから、俺なりの理解はあるつもり!」
「え!本当ですか?」
「そ!…それに今までの勤務実績を考えても解雇の対象にはならないよ!」
更に嬉しい言葉でした。
私は安心して、この問題を管理者達に委任することにしました。
そして、数日後……。
管理者が私の所へやってきました。
「大変なんだね。改めて思ったよ!」
「え?何が?」
実はあの後に管理者達が話し合い、
「男としてやって行くのなら新しい職場で心機一転するのもいいんじゃないか?そうすれば、いたずらに好奇な目で見られる事もないんじゃないか?」
と、私の事を考慮してくれる意見を出してくれ、そのアイディアを私に具体的に伝える為に「新しい職場候補地」を探してくれたらしいのです。
しかし、答えは「NO」ばかりでした。
その理由は
「前例がない。どう対応していいかわからない。」
でした。
あちこちの現場に問い合わせていた管理者の1人は
「会ってもいない、見たこともない人間をわからないってどういう事だ!!当たり前じゃないか!何が悪いんだ!!」
と、本気で怒ってくれたらしいのです。
「大変なんだね。」
「はい。…だから、治療頑張れって言ってもらった事ビックリしたんです。」
管理者の話を聞きながら、私はやっぱりなぁ…と思っていました。
そして、私は管理者達の心遣いに感謝しながら、そのままこの工場で「男」として頑張るチャンスをもらいました。
この派遣会社初の「トランスジェンダー」の誕生でした。
「就労する」
と、いうことも当事者にとっては大きな問題です。
望む性で働くことの難しさを痛感している当事者は少なくないでしょう。
でも、考えてみれば当たり前と言えば当たり前で、女(男)だと思っていた人間に突然に男(女)だと思ってくれ!扱ってくれ!と言われても受け止められる人はそうそういないと思います。
それに対して当事者としてはもちろんチャンスは欲しいですが、だからと言って自分の権利ばかりを主張するのも私は何だか違うと思ってます。
良く聞く話で「望む性で働けないから働きたくない」と性同一性障害を理由にニートになっている人もいるらしいです。
それについては、一概には言えないと思いますが、少なくとも私自身は「働かない男なんぞ駄目だ!」とスカートでなければ女子の制服で働いてきました。
そして、本来、女子なら嫌がる仕事も進んでやったりして自分なりに「男をアピール」してきたつもりです。
主張の仕方は言葉ばかりではないと思っています。
「前例がない」なら作っていくしかないのです!
性同一性障害なんて言葉が世に広まったのなんかここ10年位の話で、まだまだ歴史は始まったばかりです。
とは言え、この言葉が拡がるまでには、それ以前に悩み、葛藤し続けて来た「先人の当事者達」がいたから他にありません。
それは当事者の私達さえが考えるよりも永い時間だったはずです。
ここから先は「今」の私達が「次」に渡すまで自分の出来る範囲でベストを尽くしていくしかないのです!
勘違いしてはいけないのは頑張るのは「周り」じゃないんです!
「自分」が頑張るしかないんです!
「前例にならなければならない」
のです!
「俺は男だ!」
と思っているのならニートなんてやっている時間が勿体ないです!
「前例」になって男になりましょう!!
だから、私は今、微力かも知れませんがプリンター工場の片隅で歴史を作っています。
信じてくれている人達を裏切らない為にも、これからもベストを尽くしていかなければと思っています。