国際輸送における「非商用ルート」と「商用ルート」
中国仕入れにおいて、国際輸送に伴う関税・輸入消費税について疑問に思う方も多いのではないでしょうか。
関税は、歴史的には古代都市国家における手数料に始まり、内国関税、国境関税というような変遷を経てきましたが、今日では一般に「輸入品に課される税」として定義されています。
上記のように「輸入される品」には必ず通関手続きという作業が発生します。課税されない貨物でも必ず通関手続きを経て初めて「輸入」が許可されます。
では、なぜ課税される時と課税されない時があるのでしょうか?
これは「非商用ルート」と「商用ルート」の違いから発生する現象です。
国際輸送は長年の慣習上、大きく「非商用ルート」と「商用ルート」と分かれます。
「非商用ルート」と「商用ルート」の違い
簡単に言うと、輸入目的が自分で使用するものか、販売するものかの違いです。
また、通関手続きの違いも関与しています。
非商用ルートとは
個人の使用目的で輸入する場合です。「個人輸入」とも言います。
輸送方法は各国の郵政サービスの「EMS」「SAL」、「船便」などが該当します。
商用ルートとは
販売する目的で輸入する場合です。
輸送方法は上記の非商用ルートを含む全ての国際物流サービスが該当します。
また、商用ルートは大きく「小口輸入」と「一般輸入」に分類されます。
小口輸入
販売する目的で少量の商品を輸入することを言います。
郵政サービスの「EMS」「SAL」、「船便」や、OSC、DHL、FedExなどが該当します。
一般輸入
主にコンテナで輸入することを言います。
コンテナ混載便、快速船便、コンテナ貸切などが該当します。
混同しやすい「個人輸入」と「小口輸入」
少量の貨物を輸入する際にとても混同しやすくなります。
違いその1:販売していいかどうか
個人輸入(非商用ルート):個人で使用する輸入目的の為、販売不可
小口輸入(商用ルート):販売目的で輸入する為、販売可能
違いその2:関税の計算の仕方
個人輸入(非商用ルート)の関税の計算率: 海外の小売価格 x 0.6 x 関税率
※(課税対象額が1万円以下であれば関税と消費税は免除) 小口輸入(商用ルート)の関税の計算率: 貨物代金+保険料+運賃を合計したCIF価格 x 100% x 関税率
類似サービスに比べて優遇されるEMS
民間事業者の通関手続きは「申告納税方式」です。
つまり、全ての貨物の品名や数量等を自ら申告し検査を受ける必要があり、金額に関わらず、関税が発生します。
それに対してEMSは税関の決定による「賦課課税方式」が適用されます。
その1:課税価格が20万円を超えないものは申告不要
その2:税関職員が必要と判断した貨物についてのみ検査を行う
つまり、関税が発生しない場合があるということです。
EMSが優遇される理由
日本では「ユニバーサルサービス」としての位置付けされています。
そのため輸送、通関、検疫などにおいて一般輸入貨物と異なる簡易的な取扱いをし、様々な優遇措置が適用されています。
ユニバーサルサービスとは:(英語: Universal service)一般的には社会全体で均一に維持され、誰もが等しく受益できる公共的なサービスの全般を指し、電気、ガス、水道から放送、郵便、通信や公的な福祉と介護などでの、「地域による分け隔て」のない便益の提供義務を強調して用いられることが多い。
実務上における納税の仕方
では、実際に輸入された場合、納税に関する流れをみてみましょう。
誰が支払う?
輸入者が支払います。
誰に支払う?
税関に対して支払います。
いつ、どこで支払う?
実務上においては通関業者が立替払いをして、輸入者に請求します。
小口輸入は殆どの場合、荷物を配達する際に配達員に支払いします。
その際は現金のみになりますので事前に用意する必要があります。
まとめ
販売可否
商用ルート:販売OK
非商用ルート:販売ダメ
関税:
商用ルートは100%発生
EMS:ランダムで発生
EMSの特殊性:ユニバーサルサービスと位置付け、簡易通関方式採用
如何でしょうか?
輸入販売において国際物流は必要不可欠な存在です。
また、たくさん存在する国際物流サービスにはそれぞれに特徴があります。
違いをよく理解して、貨物の種類、量、急ぎの度合いなどを考えて使い分ける必要があります。