櫻葉❤
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Side S
「で?」
部活終わりのガヤつく部室で、上半身裸のニノが言う。
部室にはクーラーはなくて、
扇風機と小型クーラーがいくつか置いてあるだけだ。
だから部活後、俺たちは我先にそれらの前に陣取っては、みんなそこから動けない。
俺とニノもようやく着替えようと、ロッカーの前にやってきたところだった。
「で?、、とは?」
「だからテスト」
ああ、、、と心の中で思いながら、
「で?」だけでわかるか?ふつー、、、とも思ったし、
なぜだか同時に、それがテストのことだろうとわかっているような気もした。
「なんとかテスト。受けたんでしょ?どうだった?」
ニノが言ってるのは昨日、人生で初めて受けた基礎力判断テストのことだ。
俺は首をかしげて両手を広げると、視線をどこか遠くへ向ける。
それは「まったくわからんかった」という意味だったけど、
ニノはははっと笑って、自分の気持ちがちゃんと伝わったことがわかった。
「ただ疲れただけ」
ちょっと思い出してもぐったりする。
午前中から始まったそのテストは
お昼を挟んで5教科をまるっと一日で一気にテストするって経験だった。
俺はそれが「初体験」だったわけだけれども、
わずか1時間しかない、その日の唯一オアシスであろう昼食すらも
友達と呼べるヤツが独りもいない中ではとても落ち着けなくて、
とにかく「疲れた」のだ。
「まぁ翔ちゃんは大丈夫」
新しいTシャツを着終わったニノはこちらを見ずに、どこか余裕そうに言う。
「なんだそれ」
笑いながら、
ニノとほとんど同じタイミングで着替え終わった俺は、
視線を交わさないままで無造作に
脱ぎ終わったTシャツをぐいぐい鞄に詰め込む。
笑ってはいるものの、ぶっちゃけ少し焦っている。
夏休みに入ってもいまだ、高校の勉強には追い付けていなくて、
おまけに、テストは5教科とも、たいしてわからなかったからだった。