素材は悪くないし、撮り方もそんなに悪くないと思うのに、見ている最中盛り上がりにもかけ、見たあとの満足感もない。
似たような設定で当たった映画のポイントをいくつか組み合わせたような脚本が原因なのだろうか?一つのテーマに特化したようなところもなく、この作品からの強烈なメッセージが伝わらないからなのだろうか?ところでこの映画で何を訴えかけたかったのか?・・・
しいて言えば、ひとつのシーンでの言葉に今までの私の人生の中で最近あったことと共有できる点があった。
路上のチェロリスト、ナサニエルが半狂乱になって、それまで唯一語りかけられる友人だったコラムニスト、ロペスがなじられ、なぐられ、追い出された後にロペスが言った言葉、心境・・・。神様の才能を持ちながら路上で暮らすナサニエルに最初はコラムのネタということで近寄ったロペス。しだいにナサニエルの才能を生かしたいと本心から思って活動したのだろう。それが裏切られ、自らが信じることが実際には役に立っていない、寧ろ、害悪になっていると感じてしまうロペス。
引きこもりたくなっただろう、すべての活動をストップしたくなっただろう。私もそういうことがある。信念に基づいてあるべきことを行ったことが意味がなかっただけですめばいいが、それが相手に対して害悪になってしまっていること。また、その相手は閉ざされた世界の中からしかものごとを見られないことにより、その施し自体を恨んでいたり、結果としてその対象は幸せでない方向へまっしぐらに向っていること。
エンディングテロップで今でもナサニエルも音楽をベースに活動し、ロペスもコラムを書いているという。な~んだ、って感じ。個人的には、ロペスのあの絶望から復帰する様を描いてほしかった。そのままコラムを書いているなんて、結局、生活のためのネタだったのか、というがっかり感だけが残った。
他にもナサニエルサイドから深堀することもできただろう・・・この作品への不満はそんなところからなんだろう。