ふとした瞬間に、あの日のアキコさんの優しい笑顔と言葉が、胸の奥から柔らかくよみがえってくる。「立派な『仕事』よ」。そう言って、少し震える私の手に白い封筒を握らせてくれた時の、あの温もり。あの言葉が、今の私に繋がる、確かな光の始まりだったのだと、今ならはっきりとわかる。

思い返せば、ほんの少し前までの私は、パートと家事の繰り返しの毎日に、漠然とした物足りなさを感じていた。もう少しだけ、自分のため、家族のために使えるお金があれば。そんな小さな願いと、ぽっかりと空いた時間をどう使えばいいのか分からない焦りが、いつも心の隅にあった。ユミに教えてもらった「ブログで収入」の話がきっかけで、恐る恐るパソコンを開いたあの日。見慣れない「システム設計」なんて言葉の壁に、早々に諦めかけた私を繋ぎとめたのは、「ノーコード」という、ほんの少しだけ優しく響く言葉だった。

最初の頃は、本当に手探りだった。専門用語は呪文のようで、パソコンの画面は思うように言うことを聞いてくれない。「やっぱり無理かも」と、何度ため息をついただろう。それでも、パート仲間との約束を少し減らして学習時間を捻出し、夜中に眠い目をこすりながら教材動画と格闘した。そんな私の背中を、夫のタロウは静かに、でも確かに支えてくれた。「応援するよ」という言葉だけでなく、黙って淹れてくれる温かいお茶や、「無理するなよ」と添えてくれるケーキ。ぶっきらぼうだけど優しい気遣いが、どれほど心強かったことか。ぶっきらぼうと言えば、息子のコウタもそうだ。パソコン操作で困っていると、呆れた顔をしながらも、的確なアドバイスをくれる。いつの間にか、私の挑戦は、家族みんなの静かな応援に包まれていた。

転機は、ユミが繋いでくれたアキコさんのお店「ことこと」のホームページ制作だった。初めての「依頼」。練習ではない、本物の仕事。プレッシャーは大きかったけれど、アキコさんの温かい人柄と、お店に込める想いに触れるうちに、不安は「喜んでもらいたい」という一心に変わっていった。完成したサイトを見て、満面の笑みで「素敵じゃない!」と言ってくれたアキコさんの声。そして、手渡された謝礼。金額ではない。自分のスキルが、誰かの役に立ち、形になり、そして「仕事」として認められた。その事実が、私の中に眠っていた何かを、はっきりと目覚めさせてくれたのだ。

あの日頂いた「立派な『仕事』よ」という言葉は、私のささやかな努力と可能性への、何よりの肯定だった。今では、クラウドソーシングで少しずつ依頼を受け、パート収入に加えて、自分の力で得た収入がある。カフェで少し贅沢なケーキセットを頼む時も、気になっていた本を迷わず買う時も、胸を張れるようになった。学び続ける大変さはあるけれど、新しい知識を得て、できることが増えていく喜びは、それを上回る。

窓の外の木漏れ日が、カフェラテの白い泡の上でキラキラと揺れている。かつて抱えていた漠然とした不安はもうない。私の手の中には、ささやかだけれど確かな自信と、未来への意欲がある。あの言葉を胸に、私はこれからも、私らしいペースで、新しい扉を開け続けていくのだろう。

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パートと家事に追われる主婦・サクラが、ふと抱いた「もう少し自由になるお金が欲しい」という小さな願いから始めたシステム開発の副業への挑戦。ノーコード・ローコードという新しい手法で、プログラミング未経験でも始められるWebサイト制作の世界へ。技術的な壁や時間管理の難しさに直面しながらも、家族の支えを糧に一歩ずつ前進し、初めての「仕事」と「報酬」を手にするまでの成長物語。

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