テーマ:日本語の変な使い方

DJ A:谷口

DJ B:今井

 

◆オープニング
DJ A
 みなさん、こんにちは。「さくらラジオ」の時間です。DJのAです。
DJ B
 こんにちは、Bです!
 さくらの学生のみなさん、いつも日本語の勉強、お疲れさまです〜。
DJ A
 さあ、今日のテーマは……日本語を勉強中のみなさんにピッタリ!
 「 日本人もまちがえる?「~てくれる」」です。
DJ B
 「〜てくれる」、は初級で勉強するけど、台湾人にはちょっとわかりにくい文法ですよね。
 でも、この文法、実は日本人も変な使い方をしていることがあるんです。
DJ A
 日本語学習者だけじゃなくて、ネイティブもまちがえる。
 そう聞くと、ちょっと安心しませんか?(笑)
DJ B
 今日は、日本人のYouTubeで聞いた文章を例にしながら、
 「どんなところが変なのか」「どう直すと自然なのか」
 いっしょに見ていきましょう。

◆日本語のどこが難しい?
DJ A
 まず、学生のみなさんに質問です。
 日本語のどんなところが「難しいな〜」と感じますか?
DJ B
  敬語? 助詞? それとも……
 「ニュアンス」の違いでしょうか?
DJ A
 今日とりあげる「〜てくれる」も、まさにニュアンスの問題です。
 意味はなんとなくわかるし、通じるけれど、
 ネイティブが聞くと「あれ? ちょっとヘンだな」と感じる表現なんですね。

◆誤用例
DJ B
 では、実際の例文をいくつか読んでみます。
 リンパマッサージの紹介文の一部です。
 みなさんも、どこに違和感があるか、考えながら聞いてみてください。
DJ A
脇の下には腋下リンパ節という大きなリンパ節があるので
 老廃物がどんどん流れてくれます。
終わったらしっかり水分補給をして寝ると、
 体がさらにすっきりしてくれますよ。
いつも頑張ってくれているのは、
 体だけじゃなくて心もですから。
リンパマッサージをすると、
 どんどんいらないものが流れていってくれます。
全身の巡りが良くなってくれます。
DJ B
 どうでしたか?
 なんとなく「やさしい感じ」はしますよね。
 でも、「老廃物」「体」「巡り」など、
 ちょっと不思議な主語が「〜てくれる」についていました。

◆「〜てくれる」の基本
DJ A
 ここでいちど、「〜てくれる」の基本をおさらいしておきましょう。
DJ B
 「〜てくれる」は、
 だれかが、私(または私の仲間)のために、何かをする
 ときに使う表現です。
DJ A
 たとえば……
友だちが宿題を手伝ってくれた。


先生が文法を分かりやすく説明してくれた。


お母さんがお弁当を作ってくれる。


DJ B
 ここでは主語は人ですね。
 そして「私にとって、うれしい」「ありがたい」という
 気持ちが入っています。
DJ A
 ところが、さっきの例文では主語がこうでした。
老廃物が流れてくれる


体がすっきりしてくれる


全身の巡りが良くなってくれる


DJ B
 老廃物が私のために頑張って流れてくれる……
 体が私のためにサービスしてくれる……
 そう考えると、ちょっと不思議ですよね(笑)

◆どう直すと自然? 例文チェック
DJ A
 では、ひとつひとつ、自然な言い方に直してみましょう。
DJ B
 まず1つめ。
脇の下には腋下リンパ節という大きなリンパ節があるので
 老廃物がどんどん流れてくれます。
DJ A
 これは、例えばこんなふうに言えます。
老廃物がどんどん流れやすくなります。
 老廃物がどんどん流れていきます。
DJ B
 ポイントは、
 「体や老廃物が“親切”に何かしてくれる」
 というイメージではなくて、
 状態の変化をそのまま言うことです。

DJ B
 2つめ。
終わったらしっかり水分補給をして寝ると、
 体がさらにすっきりしてくれますよ。
DJ A
 これは、こうですね。
体がさらにすっきりしますよ。


DJ B
 「してくれます」を取るだけで、ぐっと自然になります。

DJ B
 3つめは、ちょっと特別です。
いつも頑張ってくれているのは、
 体だけじゃなくて心もですから。
DJ A
 これは、わりと自然です。
 体や心を「相棒」や「仲間」のように感じて、
 「いつも頑張ってくれている」と言っているわけですね。
DJ B
 こういう「擬人化(ぎじんか)」は、
 日本語でもよく使われます。
 体に「ありがとう」と言うような感じですね。

DJ B
 4つめ。
リンパマッサージをすると、
 どんどんいらないものが流れていってくれる。
DJ A
 これは、
どんどんいらないものが流れていきます。
 どんどんいらないものが排出されていきます。
という言い方が自然です。

DJ B
 最後、5つめ。
全身の巡りが良くなってくれます。
DJ A
全身の巡りが良くなります。
 全身の血行が良くなります。
でOKですね。「くれます」はいりません。

◆どうしてこういう間違いが起こるの?
DJ B
 では、どうしてこんな間違いが起こるんでしょうか?
DJ A
 ひとつは、
 「〜てくれる=やさしい、ていねい、ソフト」
 というイメージがあるからだと思います。
DJ B
 たしかに、「〜てくれる」をつけると、
 文章がちょっと柔らかくなりますよね。
DJ A
 でも、文法的には
人が私に〜てくれる  という形が基本。
 主語が「老廃物」「巡り」などになると、
 日本人から見ると「おや?」となってしまいます。
DJ B
 つまり、「やさしい感じの日本語にしよう」と思って
 「〜てくれる」をつけたら、
 逆に不自然な日本語になってしまった、というパターンですね。

◆日本人も変な使い方をしている?
DJ A
 そして、ここが大事なところですが……
 こういう言い方、実は日本人もけっこうしているんです。
DJ B
 そうそう。SNSや広告の文章を見ると、
 「肌がきれいになってくれる」
 「髪がサラサラになってくれる」
 みたいな表現、けっこう見かけます。
DJ A
 文法的には正しくないですが、
 「肌が味方になってくれる」みたいな、
 擬人化して使っているんですね。
DJ B
 だから、みなさんがこういう文章を見て
 「教科書と違う!」とショックを受ける
 必要はありません(笑)
DJ A
 「ネイティブも間違えることがある」
 「だから自分も間違えてOK」
 それくらいの気持ちで大丈夫です。

◆ミニクイズコーナー
DJ B
 ここで、ちょっとだけクイズをやってみましょう。
 今から2つの文を読みます。
 どちらがより自然な日本語か、考えてみてください。
DJ A
 では、問題1。
A:この薬を飲むと、頭痛がよくなってくれます。
 B:この薬を飲むと、頭痛がよくなります。
……どちらが自然でしょうか?

DJ B
 正解は、B。
 「頭痛」が「私のために良くなってくれる」わけではないので、
 ここは「よくなります」でOKです。

DJ A
 問題2。
A:友だちが空港まで送ってくれました。
 B:友だちが空港まで送っていきました。
DJ B
 正解は、Aですね。
 「送ってくれました」は、
 「私のためにしてくれた」という気持ちがあるので、ぴったりです。

DJ A
 問題3。最後です。
A:いつも朝、目覚まし時計が起こしてくれます。
 B:いつも朝、目覚まし時計が起こします。
DJ B
 これはちょっとむずかしいですね。
 どちらも文法的にはOKですが、
 日本語らしいニュアンスとしてはAのほうが自然かもしれません。
DJ A
 そうですね。目覚まし時計を相棒のように考えて
 「起こしてくれる」と言っています。
 こういう「擬人化」なら、
 「〜てくれる」を使ってもOKなんですね。

◆間違いを怖がらないで!
DJ B
 ここまで聞いて、
 「うわ〜、日本語ってやっぱりむずかしい……」
 と思った人もいるかもしれません。
DJ A
 でも、心配しないでください。
 大切なのは、完璧になることではなくて、
 伝えようとして、実際に使ってみることです。
DJ B
 私も中国語を勉強しているとき、
 似たような失敗をたくさんしましたよ。
 「幫我〜」をむやみに付けて、
 あとでネイティブに笑われたこともあります(笑)
DJ A
 外国語を話すとき、
 誰でも必ず間違えます。
 日本人も、中国語や英語を勉強するとき、
 いっぱい変な言い方をしています。
DJ B
 だから、みなさんも
 「間違えたらどうしよう」より「使ってみよう」
 という気持ちで、どんどん話してみてください。

◆リスナー参加コーナー:変な日本語、教えてください!
DJ A
 さて、ここでみなさんにお願いがあります。
DJ B
 みなさんが今までに聞いたり見たりした日本語で、
 「これ、ちょっと変じゃない?」と思った表現、ありませんか?
DJ A
 教科書では見たことがない言い方、
 日本人の友達が使っていた不思議なフレーズ、
 ドラマやアニメのセリフなど、何でもOKです。
DJ B
 番組のアンケートフォームから、
 その「変だと思った日本語」を送ってください。
どこで聞いたか


どんな場面だったか


自分はどう理解したか


なども書いてもらえるとうれしいです。
DJ A
 みなさんからいただいた例は、
 今後のラジオで取りあげて、
 「どこが自然? どこが不自然?」
 いっしょに考えていきたいと思います。
DJ B
 日本語は、教科書だけじゃなくて、
 みなさんの「?」からも勉強できますからね。

◆エンディング
DJ A
 というわけで、今日は
 「〜てくれる」の誤用と、日本語のむずかしさ、
 そしておもしろさについてお話ししました。
DJ B
 日本人でも、ときどき変な使い方をしてしまう表現。
 だからこそ、学習者のみなさんも、
 怖がらずに、たくさんチャレンジしてみてください。
DJ A
 体も、心も、そして日本語の力も、
 少しずつ育てていきましょう。
DJ B
 それでは、そろそろお時間です。
 ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました。
 DJのBと……
DJ A
 Aでした。
 また次回の放送でお会いしましょう。さようなら〜!
DJ B
 バイバーイ!