それは、突然の出来事で。
4月1日
朝目覚めると、机の上の置き手紙と地図を見つけた。
”13時にココに来てね”
地図には近くの大きなスタジオがある場所が記されていた。
「ココって・・・私の職場じゃん。なにゆってんだろ?」
今日は、エイプリールフールだ。
どうせ何か私を騙そうとしているのだろう。
そう思うと手紙と地図をぐしゃぐしゃに丸めてゴミ箱へ投げた。
「あ・・・今日はついてない日かな」
「おはようございます!」
いつものように大きな声で挨拶をする。
うっすらストライプの入ったダークグレーのスーツを着て出勤した宇佐木 笑美(ウサギ エミ)。
職業カメラマンアシスタント。
「うさちゃん、おはよ~今日も可愛いね~」
「はいはい、ありがとうございます。甲斐さん」
甲斐 真近(カイ マサチカ)。あだ名がチャラノッポ。
2つ上の先輩である。職業カメラマン兼撮影リーダー。
「今日は撮影何時までなんですか?」
「今日はSEASONの撮影で午前中までの予定だけど?なになに?デートでもあるの?」
ニヤニヤ口元を緩ませながら聞いてくる甲斐。
「違いますよ!甲斐さんじゃあるまいし~」
「ちょっと、俺一途なんだけど?」
「根拠を示してくださいよ」
軽くあしらう笑美。
「俺という存在?」
カメラをセットしながら、自信満々な顔で笑美の方を向く。
「はい、そこのチャラノッポ~働け~」
後ろから聞こえてくる言葉に振り返る。
「あ、おはようございます、音狛さん!」
とっさに挨拶する笑美。
「おはよ!ねーこりん!」
音狛 泉(ネコマ イズミ)。あだ名はねこりん(甲斐だけ)。
甲斐の同期である。勤務5年目にしてスタジオチーフを任されているエリートだ。
「その呼び方を辞めろ、まさ」
「可愛いじゃん?ねこりん」
「柄じゃない。お前くらいだぞ」
「ねこりんと俺の仲だしね~」
「どんな仲だ」
そんなやり取りを見ながら、笑いをこらえる笑美。
「二人とも、のんきにしているが、SEASONの入りが1時間早まった。急げよ」
そういい残し、音狛はスタジオから出て行った。
「ちょ!大事なことは早くゆってよ、ねこりん!」
「おはようございまーす」
「おっ、いいところに来たね、つっつん」
「うげ、甲斐さんが言うと、嫌な予感しかしませんね」
「おはよう、つっつん」
「おはようございます、うささん」
堤 大河(ツツミ タイガ)。あだ名はつっつん。笑美の1つ下の後輩である。
「さっき通りすがりに音狛さんが「間に合わなかったら飯抜き」って言ってたんすけど、まだ余裕すよね?」
堤が鞄をスタッフスペースの机に置きながら聞く。
「げ。ガチじゃん。とりあえず急げつっつん」
甲斐が嫌そうな顔をしながら堤に支持を出す。
3人で大急ぎで撮影準備を始める。その間にちらほらスタッフも出勤してきたおかげで何とか時間までに終わらせることが出来た。
とホッとしたのもつかの間で。
スタジオの扉が静かに開いた。