My sweet home 《act.4》 金木犀・後編
突然出てきた敦賀先生の顔を見るなり、不破尚とレイノは、
「「あんた、本当にセンコーなのか???」」
と大きな声で言い出した。
・・・・・・・・・・・・・最初は誰だって、そう思うよね??
光くんは、口をアングリとしたまま、チラリと私の顔を見た。
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その視線の意味が良くわからなかったのだけど、このままじゃいけないと思い
「敦賀先生、うるさくしてすいませんでした。
また違うところを案内しますので、これで失礼します。」
と丁寧に言って四人そろって歩き出したところで
「・・・・・・ちょっと待って!!!!」
と呼び止められた。
それぞれ振り返ると
「えっと・・・・・石橋くん、キミだけちょっと話があるから残ってもらっていいかな???
それと、もうすぐ予鈴がなる時間だから、もう案内は今度にして他の三人は教室に帰りなさい。」
と言うので、
「・・・・・わかりました。失礼します(ペコリ)。」
どうして光くんだけ残されるのか良くわからないまま、私は他の二人を連れて教室へと戻った。
*
「敦賀先生、オレに・・・・・何の用事ですか???」
英語科準備室に戻りいすに座ると同時に石橋光は聞いてきた。
まぁ、無理もない。接点もほとんどない先生にいきなり残されたら
誰だって・・・・・・困惑するもんな。
「石橋光くん、だったよね???
さっきの話、本当なのかな????」
「・・・・・・・さっきのって・・・・・・」
「廊下で、大声で言っていたことだけど???」
「―――――――――――――あっ・・・・・・」
ジッと見つめていると、意を決したような顔つきに変えてから
「先生にも、負けませんっ!!!!」
と急に言われて、さすがにちょっとポカンとしていると
「・・・・・先日、最上さんと二人で歩いているところを見かけたんです。」
と言い出したので
「・・・・・・先日って、いつだ???」
と聞いたのだが、思いのほか低い声になっていた。
「ちょうど、秋分の日に・・・・・墓地で」
「・・・・・・あぁ。それ、か。」
「彼女は、彼氏はいないって言ってました。
オレは二人がどんな関係だろうとかまいません。
彼女のこと、好きなんですっ!!!!」
真剣な顔つきで、さっきよりも興奮してもっと声が大きくなっている石橋くんが
ちょっと面白かったのだが、ここで笑ってはいけない、と気を引き締め
本題に入ることにする。
「そんなに・・・・・・・・・キョーコのことが好きなんだ???」
「(!!!!な・・・・名前呼びしてるってことは・・・・・
やっぱり二人は付き合ってるのか????
でも・・・・・・負けないっ!!!!)
はいっ!!!!!!!」
「ふぅ~~~~ん・・・・・・・・・・・」
(って、敦賀先生の顔つきが・・・・・怖いんですけどっ!!!!!!!!)
「(ニヤリッ)そんなに言うんなら、キミにお願いがあるんだが・・・・・・」
(・・・・・・・はあ???????)
ニヤリと笑う敦賀先生は、怪しくも美しく、そして・・・・・・・
とても裏がありそうな恐ろしい笑み。
そっと近づき、耳元で・・・・・・
「今日転校してきたあいつら、見張っててほしんだよねぇ~~~。
あいつら、キョーコ目的で学校変わって来てるから、心配で心配で・・・・・・・」
「っ!!!!!!も・・・・最上さん目的ってっ!!!!!!!」
「シーーーーーーーッ!!!!!静かにっ!!!!!!
あまり知られたくない情報だから、ナイショにしていてくれないか???
・・・・・・・・・・・・・・特に・・・・キョーコには絶対に知られたくない。」
「・・・・・・・・・・わ・・・・・わかりました。」
「教室内とか、授業中とか、休み時間とか、同じクラスだと何かと監視しやすいだろう??
さすがに・・・・・・・先生が生徒を監視するのにも限度があるだから、な・・・・・・」
「で・・・・・・ですが・・・・・・・」
答えを渋っている石橋光に、やはりちょっとしたえさをあげないとダメだなぁ、と思い・・・・・
スッと封筒を取り出し
「もし引き受けてくれたら、これをやろう。
中は家に帰ってから見るといい。
・・・・・・・キョーコのプライベート写真が入っている。
そして・・・・・・ミッションコンプリートをしたあかつきには・・・・・・・
一日キョーコとデートをさせてやろうっ!!!!!!」
「なっ!!!!!!!!ほ・・・・・・ホント、ですかぁ~~~~?????
・・・・・・ってでも、ミッションコンプリートって・・・・・いったい????」
「ふぅ~~~ん・・・・・・・まぁ、悪の手からキョーコを守りきれたら、かな???」
「あ、悪の手って・・・・・・まさか、あの二人のこと????」
「ま、そのほかにも次々に刺客が現れるかもしれないけどなぁ~~。」
「そ・・・・・それに、守りきれるって・・・・・いったいいつまで????」
「・・・・・・・俺がいいというまで。
まぁ、卒業までには終わると思うけどなぁ~~。」
「・・・・・・・じゃあ、デートは三年後・・・・・????
(オレ、そこまで待てないよぉ~~っ!!!!!!)」
またもや顔を青くする石橋光を見ていると、彼の思考回路は
手に取るようにわかりやすいなぁ、とついついにやけてしまう。
「さて・・・・・・どうする?????」
「・・・・・・・・(恐る恐る)もし断ったら、どうするんですか???」
「・・・・・・まぁ、俺がでしゃばるしかない、か、
他のやつに頼むか、か~~。
キョーコのナイト役に適任だと思ったんだけど、なぁ~~・・・・・(チラリ)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・イヤならいいんだ、イヤなら。
きっと、キョーコのことを好きでいる奴なんて、他にもいるだろうし・・・・・・・・
そいつに頼もうか、なぁ~~~????」
「っ!!!!!!!!!そ・・・・・それはダメですっ!!!!!!!
オレにやらせてくださいっ!!!!!!!!!」
ニヤリッ!!!かかった!!!!!!
「(ニッコリ)そうかぁ~~~、ありがとうっ!!!!石橋くんっ!!!!!
これからじゃあ、あいつらがキョーコにちょっかい出したり迫ったりしてきたら
うまいことガードしてやってくれ。そして必ずあったことは報告して欲しい。
・・・・・・石橋隊員!!!!よろしく頼むっ!!!!!」
「・・・・・ラジャ!!!!(って、あれ???のせられてる???)」
「・・・・・・・プププッ!!!!!結構のりがいいんだね・・・・・・
もう、予鈴鳴ってるから急いで戻りなさい。
・・・・・キョーコのこと、ホントに頼むな???」
「っ!!わかりました!!!失礼しますっ(ペコリ)」
彼が出て行った後に
フゥーーーーーーーーーーーっと深い息を吐き出したら
「・・・・・・・お前は本当に黒いな・・・・・・」
と急に声をかけられて多少ビックリしたが、すぐに気を持ち直した。
「社先生。・・・・・・盗み聞きですか??」
「って、ここに呼んでおいて、急に奥に押しやったのはお前だろう???
聞きたくなくても聞こえてくるんだよっ!!!!!
ってそれより、あの二人、本当にキョーコちゃん目的で来たのか???」
「・・・・・・・きっとそうでしょう。いよいよ、向こうも動き出したんです。
キョーコを守るためなら、手段は選びませんよ??俺は・・・・・・・・
それに・・・・・・・冴菜さんとの約束ですし・・・・・・・。」
「・・・・・・・・約束、ねぇ~~~~。」
「・・・・・・・・・・はい。」
ガラリと部屋の窓を開け、かすかに漂ってくる香りは・・・・・金木犀。
去年、ただ一度だけ、キョーコと出かけたあの日。
俺はキミに始めて・・・・・・蓮と呼んでもらうことができた。
始めたばかりの二人だけの生活に疲れたキミは熱を出し、数日寝込んだ。
このままでは、また治ってもすぐに無理をしてしまうと思い、
熱が下がった日曜日に、キョーコを連れ出し一日デートをした。
義父と娘、ではなく、只一人の男と女として過ごした一日。
そのときに、無理をしてがんばりすぎるキョーコにいろんな約束事をした。
それで何とか、今の生活を成り立たせているようなものだ。
これ以上、崩されるわけにはいかない。
キョーコは・・・・・・・・誰にも渡さないっ!!!!!!!
act.5へつづく・・・・・・・・・・
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金木犀の甘い香りに誘われて、話を書きました。
本当は普通に「転校生」というサブタイにする予定だったのですが
くっつけてしまいました。
甘い香りには、甘酸っぱい思い出が欲しいので、こんな感じの話です。
それにしても・・・・・・この話の蓮様は・・・・・黒いです。
光くんがこれから活躍できるのか、出番があるのか・・・・・・・
乞うご期待。