汚れた手をそこで拭かない 芦沢央

 




芦沢央さん、ハマっております。

 

5話の短編集です。

 

ただ、運が悪かっただけ

埋め合わせ

忘却

お蔵入り

ミモザ

 

 

「ただ運が悪かっただけ」

 

妻が余命宣告された夫婦。

妻は夫が昔から夜うなされていることを心配し、自分が死ぬときに辛いことを一緒に持って行く。と夫の話を聞く事になります。

「俺は昔、人を殺したことがある」

夫はそう言って話し出しました。

 

夫は若い頃、工務店で働いており、ある客に脚立を売ります。

急ぎで、使ったものでもいいから欲しいと言われ、その時持っていた脚立を売ったのでした。

後日、客はその脚立から落ちて死んでしまいます。

娘が犯人として疑われていましたが、結局事故だと結論づけられました。

夫は警察から脚立が壊れていたと聞かされ、脚立を売った自分を責めていたのでした。

 

以上があらすじです。

 

『自分の最期がもうすぐだとわかったとき、人はどのような行動をとるのか』

 

この話には自分の死期がわかった人間が2人登場します。

夫婦の妻と、客の娘です。

 

芦沢央さんはこの設定お好きなようですね、「許されようとは思いません」でもみられました。

2つともストーリーは全く違いますし、どちらも面白い作品ですよ。

 

 

確かに特殊な状況下ではありますし、癌という病気が増加してから余命宣告されたが、まだ死ぬまで時間がある。という人は確かに増えたかもしれません。

 

作者さんのこのメッセージはかなり考えさせられます。

その時に考えたらいいや、と今を楽しむ人と、不安にはなるが想定して、備えておく人

どちらも間違いではありませんが、私は後者です。

個人的に死ぬ時のことを考えるのに早い、遅いはないと思います。

若くても亡くなる方もいますから。

 

私が今ここに生きているということは、ただ運が良いだけなのです。

 

 

「埋め合わせ」

 

誤ってプールの水を抜いてしまう夏休み中の先生の話です。

上司に報告するかどうか悩んだ挙句、どうにか誤魔化して自分の責任ではないようにしようと画策します。果たしてうまくいくのでしょうか。

 

こちらも「許されようとは思いません」の2つ目の話と似ていますがストーリー展開、オチもまた全く違う、予測できないものになっていて作者さんの引き出しの多さに驚かされます。

 

 

今回は2つ取り上げさせていただきました。

芦沢央さんは安定して面白いですね。

短編集ばかり読んでいますが、ハズレがないです。

5つ話があったら1つくらいはちょっと合わないな・・と感じるものがあっても不思議ではないと思うのですが、今のところ出会っていません。

 

良かったら芦沢央さんの本でおすすめがあったら教えてください。

他の方の本でも構いません。

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

 

 

 

 



許されようとは思いません 芦沢央





 

また芦沢央さんの小説を手に取ってしまいました。

 

5話構成の短編集です。

 

許されようとは思いません

目撃者はいなかった

ありがとう、ばあば

姉のように

絵の中の男

 

話に繋がりはありません。

 

 

許されようとは思いません

 

主人公は付き合っている彼女と、祖母の遺骨を納骨するため、祖母の住んでいた村へと足を踏み入れます。

生前祖母は、養父のせいで村八分になっていました。

ある日祖母は養父を殺してしまいます。

養父は余命宣告されており、もうすぐ命が尽きるはずだったのに。

 

なぜもうすぐ死ぬはずだった人を殺してしまったのか・・

というところにタイトルが絡んでくるのですが、

主人公の祖母の苦しみと悲鳴が聞こえてくるような気がしました。

頼りにする人もいない、逃げ場のない、自分ではどうしようもない状況。

考えた結果が殺人だったということです。

 

最後はスッキリ終わります。

救いのある終わり方は好きです。

 

 

4つ目の「姉のように」もそういった意味では、同じような状況下だったと私は思います。

子持ちの姉妹の話で姉は新聞に載るような犯罪をしてしまいます。

ネタバレをせずこれ以上あらすじをどう書いたらいいかわからなかったので読んでみて欲しいです。

 

読んでいるうちに、自分に今後起こるかもしれない、これは自分かもしれないという錯覚を起こし動悸がしてきました。

ただこちらは、最後はじゃあどうすればよかったの?という救いのない終わり方に唖然とし、思考が停止するほどのインパクトがありました。

これぞイヤミスといった作品です。

 

何年か前に突然何の前触れもなく、駅前のスーパーが閉店したことがありました。

一番よく利用していて、野菜とお惣菜が安かったので足繁く通っていたのですが、倒産しましたと紙切れ一枚貼ってあるだけで中の商品もセールチラシもしばらくそのままでした。

 

この話を読んで何だかその時のことを思い出してしまいました。

 

2話取り上げましたが、「目撃者はいなかった」は映画化したら面白そうだと感じました。

主演は浅利陽介さんでどうでしょうか。

 

今回は以上です。お読みいただきありがとうございました。

 


 

 


 

 









皆さんは就活したことありますか。

 

イエスと答える方が大半でしょうか。

 

 

私はしていません。というか、途中で投げ出したのです。

 

人と比べられ、1つ1つの会社のことを調べて書類を作成し、Fラン大学では書類すら通らない。(これは自分がせいでもある)

履歴書は手書きだし、やりたいこともない。

第一どこか滑り込んでも続くかどうかなんてわかんないじゃん。

 

20歳そこそこのFランおバカ大学生だった私は自分の将来を真剣に考えず、嫌だから、めんどくさいから、そんな理由で「新卒」というブランドを捨てました。

 

私の経歴はいいとして。

 

 

そんな人間もいる中で自分の第一志望の会社に入社できた人はどのくらいるんでしょうか。

 

それが成長を続ける大企業だったら、世間からエリートと呼ばれる人たちなのでしょう。

 

 

この小説は大企業の最終選考に残った6人の大学生の話です。

 

最終選考はグループディスカッション。

内容が良ければ全員採用と言われ、6人は協力して準備をしていたところ諸事情により採用人数が「1人」となってしまいます。

 

さらに「6人の中で誰が最も内定に相応しいか」という議題になりました。

 

最終選考当日、6人が会議室に揃うとそれぞれの名前が書かれた封筒がありました。

中にはメンバーの告発文が入っており、動揺しながらもグループディスカッションは続けられます。

内定する「1人」を選ぶまで。

 

あらすじはこのような感じです。

 

 

自分をよく見せたい時、話を盛ったり嘘をつくことがありますよね。

誰でも経験があると思います。

 

自分をよく見せたい、まさに就活の場面ですね。

 

だから就活生は嘘をつくのです。

 

この小説の最終選考の議題である、「6人の中で誰が最も内定に相応しいか」なんて全員が自分だと思っているでしょう。

しかしグループディスカッションで、「自分」と答えるなんて正解であるはずもなく、他薦が望ましい。つまり6人全員嘘をついていることになります。

 

そしてこの議題にしたのは企業側なので企業も嘘をつかせていますよね。

 

作者さんからの就活に対するアンチテーゼだと思いますが、なかなか強烈です。

 

仲間からライバルになり、告発文で明かされる裏の顔に戸惑い、告発文を用意した犯人探す。

感情がグチャグチャな6人の駆け引きがとても面白く時間を忘れて読みました。

最初の主人公は波多野くんですが、途中で語り手が変わります。

 

今まで読んできた小説の中で一番面白かったです。

なんか、文字にすると嘘っぽくなってしまいますね。

 

映画化するようなので是非見にいきたいです。

 

 

この記事を見た皆さん、私のことどれだけ知っていますか?

 

冒頭での就活を途中で投げ出した人という印象が強いですか?

Fラン卒の人?将来のことを考えていない人?

 

マイナスな面ばかりですね。

プラスな部分もありますよ。

おおらか、家族思い、真面目、誠実、手先が器用、集中力がある。

パッと思いつくだけでこんなにあります。

 

人には短所長所があり、短い時間ではわかりません。

 

このブログは本のレビューと共に自分のことも書いていますので、まだ始めたばかりではありますが、他の記事も読んで「私」という人物も知っていただけたら嬉しいです。

 

 

本日は貴重なお時間ありがとうございました。



 

 


 

 




火のないところに煙は 芦沢央





 

オムニバス形式の短編集。ホラーであり、ミステリー。

 

主人公が作者。

自分の体験したことをきっかけにホラー話を集めて行くような展開。

1日で読みました。

怖いけど面白くてページをめくる手が止まらず、

本当なのか創作なのかわからない不気味な感じがする作品です。

 

豹変した彼氏、思い込みの激しい母親、隣人トラブルに巻き込まれる人、仲の良い嫁姑、子供を亡くした母親・・・

 

ステレオタイプってあるじゃないですか。

集団に対する思い込みや先入観、それらを働かせた状態で読むと後でひっくり返されます。

 

主人公が頼り、問題を解決してくれる榊さん。

この構図が、「変な家」の雨穴さんと栗原さんのようです。

 

1話ごとに話がまとまっていますが、最終章で繋がります。

伏線が張り巡らせれ、2度目は伏線のところをすくって読み、2度目のゾワっを体験しました。

 

この本を読んでいる最中に一度読んだことあるな。。。と感じ何かの小説のパクリ?と、思ったんです。

色々記憶を辿らせてみたりネットで調べてみて、結局は少し前に読んだオムニバス形式の短編集、別の本に収録されていただけだったんです。

 

自分の中で合点が入ってスッキリしたのですが、心配になったことがあります。

 

疑ってしまったのです。

 

この本の中ではそれによって色々な問題が起こっていきました。

 

この疑念は火となり煙になるのでしょうか?

 

 

安心してください。

ノンフィクションのような書き出しだったのですが、フィクションのようです。

 

そうだと信じています。