さくみのざっくり日誌OVER50

さくみのざっくり日誌OVER50

2019年からは、「さくみの農業日誌AROUND50」改め。
「農」ある生活は傍らに意識しながら、だらだらした生活をしている雑記帳的な備忘録。

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ライブチケットと俳句手帳

「句会の時は、俳号あるいは下の名前で呼び合います。
 私のことは、組長またはいつきさんと読んでね」
俳句集団「いつき組」組長の夏井いつき先生は、そうおっしゃるので、以降「組長」と呼ぶこととします。

6月15日は、前夜から久々のまとまった雨。
飛行機が予定空港に確実に着陸できるか分からないということで、「マネージャーという夫」さんの運転で米子入りした組長。
会場を埋め尽くす700人のうち句会に所属したり俳号をもっていたりする俳句に覚えのある人は1割に満たない。俳句は日常的に詠んでいない、あるいな夏井いつきを見に来た「チーム裾野」(これから俳句にはハマる可能性を秘めた俳句初心者の皆さん)を相手に「句会」体験をどう仕切るのか。

 

まず、「俳句を詠むこと」が日常生活に及ぼすなんともありがたい「ぼけ防止」の効能について紹介。俳句を詠むという作業は、脳の前頭前野の血流が良くなるという現象は確認されていて、それは、上手な人もそうでない人も変わない。ゆえに、1日1句俳句を詠むという行為は、健康な脳を保つのに非常に有効な手段なんだそうだ。

とはいえ、何から手をつけるべきか。
その手がかりとして、心得のない「チーム裾野」の我々に、「だれでも凡人65点以上」(プレバト)の句を読める方法をお教えします、と。

まず、俳句の初歩的な2つの約束
①五・七・五(上句・中句・下句)のリズム
②季語を入れる

を押さえ、
「取り合わせ」という型を紹介。
・季語とは関係ない十二音のフレーズを考える

・季語五文字を上・下いずれかに置く
間違いやすい「文字数でなく、音数で数える」という点や、惑いやすい「字余り」を恐れないなど、詠み始めにつまづきやすいポイントも丁寧にフォローしながらの丁寧な解説。

このシンプルな方法で、いくつかの例句をその場で詠んでみせ、
「さぁ、これから5分(+休憩時間)でみなさん一句詠んでみましょう」と。
(季語の五文字は自由。テーマは「なんて!」「なんで?」)
ここまで、概ね1時間弱。

 

後半は、皆が投句した句から入賞句を選び、一番句を選ぶという「句会」形式。
・・・の前に、選句の際に気になった句をいくつか読み上げ、
作者に、句の背景を聴いていく。
十二音の呟きに、季語の額縁をつけたら「俳句」の姿になっている。
句を紹介してくださった方には、組長の「松山市クーポン」付き名刺が配られ、「その名刺を持っていくと、施設の割引などで使えるの。松山に来てね」と、松山市の観光大使としても優秀な仕事をなさる組長。

そして、いよいよ入賞句の発表。
「句会」の重要なルール
・句の選評は作者を明かさず行う。(「私の」と言っちゃうと失格)

を説明し、入賞七句が順にプロジェクターに映し出される。

七番目に映し出された

「青田風往って帰って三百キロ」

・・・は、私の句だ!!
きゃー、どうしよう。
組長曰く、「ねぇ、三百キロ。何があったんでしょうね?聞いてみたいですね」

でも、この句の並びだとあまり評価を得られないなぁ。
私だって、一番目の句の方が好きだもん。
鳥取、田んぼないもん、青田風はウケそうにないし。

・・・とか、思いながら、
会場から挙手に寄り語られる、句の選評を聞いている。
700人の会場では、挙手により当てられた人が、好きな句を揚げ、その解釈を述べていく。
 

件の三百キロの句には、会場前方の女性2人から、

「自分さがしの旅とか?」

「きっと、恋人に会いに行く距離。米子だから神戸とか?」

なんて、瑞々しい解釈をしてくださって、

自分でも、「あら、そうだったかも!」と嬉しくなる。

 

「ほかに意見は?」との組長の声に、
挙手してくださったのは、私の隣の席の父娘づれのお父さん。
「青田というには、田舎に向かっているのでは?

 高齢の親の介護に行き来する様子のように思います」

と、まさにズバリの解釈をしてくださり、
もう、すぐにでも「ありがとう」と言ってしまいそうになる。

 

そして、会場中で選句。
この日は、3つの商品が準備されたので、上位3句を「拍手の音の大きさ」により選ぶ。CMディレクターであった、「マネージャーという夫」さんが、クリアに聞き分けるのだ。


上位3句の発表前に、他の4句の作者が順に明かされる。

句を読み上げ、作者が立ち上がり、句の背景を語るという流れ。

 

「この三百キロは?」と問われ、

「介護とまではいかないけれど、お隣のお父さんの解釈通りです。
 今年、実家は、高齢により田んぼでの稲作りを止めました。

 実家までの距離は、三百キロもないけれど、ちょっと盛りました。

 数詞は効果的とプレバトでおっしゃってたので」と答える。
入賞者には、サイン入りオリジナル「俳句手帳」を配られた。

 

この日の最優秀句は、

「蝸牛かなしい過去もかえられる」

これは、ほんとうに染み入るような納得の秀句。

男性にも人気があったけど、私より少しお姉さん年代の女性の支持が圧倒的だった。

(私は、自分の句に拍手したけれど・・・)

 

「句会ライブ」というカジュアルな句会は、俳句の裾野を拡げるための重要な活動と組長はいう。
今後も、各地で続々と開催され、2時間のうちにたくさんの人々を俳句の世界に引きずり込んで行くんだろう。