side S

 

 

オープニングトークを何とか切り抜けたと思ったら潤に手を引かれ、メンバー達とは違う部屋へ連れられ、二人っきりになった。

 

俺が声をかけると壁に沿わせて俺を座らせて手際よく部屋を片付け始め、それが終わったかと思えば潤の膝枕に寝かされる。

 

そして俺の視界を遮り、寝ろと言う。

そんな急に寝ろと言われても無理な話、だと思っていたのに潤の声には魔法がかけられているみたいに、いつの間にか眠ってしまっていた。

 

 

意識を手放してどれぐらい時間が経ったのかわからないけど、次に意識を取り戻した時には部屋の中にニノがいた。

 

潤とニノが話しているのが何となくわかる程度にうすぼんやりした覚醒の中、目を閉じたまま自然と耳に入る言葉になんとなく聞き入っていた。

 

潤は俺がSNSを見たのではないかと危惧しているようだった。

俺としてはある程度予測済みの展開で、まあ絶対こうなるだろうとは思ってた。

暴言吐かれるのも今に始まったことではないし、覚悟はしてた。

だから平気だと思ってたんだけど、なんだかんだ他のこともあって寝不足だったり精神的にちょっと不安定になったりもしたせいか、些細なことで敏感になっていたみたいだ。

 

周りは何の気なしに俺を見ていたのだろうけど、それが刺さるような視線に感じたり、俺を責め立てるような視線に思えたり、無数の目に迫られる強迫観念みたいなものに襲われて、思わず近くにいたメンバーを見ては安心していた。

 

最初は指先が冷えていく感じだったのが、どんどんそれがひどくなり次第に手指の感覚がなくなっていった。

 

気付いたらオープニングトークは終わっていてセット交換での休憩に入り、自分がゲストとどんな会話をしてどんな風に話を回していったのかさえ記憶にない。

 

はたして俺はちゃんと仕事をしたのだろうか。

 

そう思った矢先誰かに手を掴まれ、見たらそれが潤だった。

 

 

そして今に至るけれど、二人はまだ俺が目を覚ましたことに気づいていないようで、会話を続けている。

俺はできるだけ不自然にならないように寝返りを打つフリをして二人に背を向けた。

 

潤は今回ばかりは俺の性格が元で良くない方へ作用しているのではないかと心配してくれて、ニノはそれを責めるのは間違いで、俺にそうされる謂れはないのだと否定してくれた。

 

どちらの言い分も分かるし、みんなが俺を支えようとしてくれる気持ちが分かるからありがたくもあり辛くもあった。

 

 

そしてニノに起こされて、今起きたかのようなフリで二人におはようを言った。