「たとえ相手がそうだったとしても、あんたには、一切口を挟む権利なんてないでしょう」
俺には関係ないと言い切る彼の目は。
俺を睨みつけるその目は、
俺があの日描いた蒼い焔を背負った二宮さんと同じで。
ほら。
やっぱり、おまえの中にはそんな静かな熱情が隠れてたじゃないか。
飄々として、風に身を任せるようにして生きているようなふりをして、
その実、中はそんなに熱いものを滾らせてる。
俺には見えていた。
彼の本質。
「だからって、二宮さんの身体をそんな風にしていいはずないだろう」
「・・・いいんだよ。これは俺が望んでしたことなんだから」
愛おしそうに、目を伏せて痣になった手首を撫でさする。
その顔は、今まで見た中で一番美しく、艶やかな微笑みで。
一瞬、呼吸するのを忘れるほどだった。
「なん・・・」
伏せた目をゆっくりと上げて、また俺を睨みつける。
「あんたのせいで、俺は…」
怒りの塊のような憎しみを真正面から俺にぶつけてくる。
「なんで・・・?」
ぽたり。
ぽたぽたぽたぽたぽたっ。
一つ零れれば、堰を切ったように次から次へと溢れ出し、滂沱の涙を流す。
俺の頬を幾筋も滑り落ちていく光の粒たち。
なんで、おまえも母ちゃんもそんな愛し方なの?
そこまでする価値があるもんなのか?
愛って、そういうもの?
そんな風に自分を傷つけないとできないの?
俺には、理解できないよ。
教えてよ。
ねえ。
急に涙で滲む二宮さんの姿が視界から消えてなくなった。
俺の意識はシャットアウトされて、真っ暗闇に放り出され、俺の名前を呼ぶ二宮さんの声がどこか遠くで聞こえた気がした。