「………」

 
 

いつのまにか眠っていたらしく、目を開ければ傍についててくれた雅紀が「ん?」と小首を傾げた。

 
 

「…いま、何時?」

 

「いま?23時58分」

 
 

寝起き独特の掠れた声でも雅紀にはちゃんと聞こえて、答えてくれる。

 

時間にすれば数分程度の浅い眠りだったけど、体は軽くなっている。

 
 

やっぱ俺、調子悪かったのかな。

自分の身体なのに、自分よりも周りの方がずっと詳しいって面白いな。

 
 

だけど。

 
 

「………」

 

「え?」

 
 

ぼそぼそと呟く俺の声を聞き取るために雅紀が耳を寄せて近づく。

 
 

「…だせぇ、て言ったの」

 

「ダサい?なんで?」

 

「いい歳したオッサンがさぁ、誕生日前日に熱出すとか、ダサすぎるだろ」

 

「それ、年齢関係なくない?」

 
 

不貞腐れる俺を前に、雅紀がクスクスと笑う。

 
 

大体、年始に熱を出すのは雅紀の専売特許だったのに、今年の雅紀は年末年始に体調を崩すこともなく、ツアーも最後までやり切った。

 
 

「しょーちゃんは、去年が忙し過ぎて、歌番組やオリンピックやドラマもあったし、ちょっと年末まで根詰めちゃったんだよ。年明けのツアーが終わって、やっと体が一息つけるタイミングを見つけて気が抜けちゃっただけだから」

 
 

いつも以上に雅紀の声が優しくて、心地良くて。

 

ずっと撫でられてる頭もふわふわ気持ち良くて、何も考えられなくなっていく。

 

少しずつ瞼が重くなって、うとうとしだすのが分かる。

 

意識を手放しかけた瞬間。

 
 

「あっ」

 
 

雅紀の声でびくっと体が反応して目が覚める。

 
 

「な、なに?」

 

「あ、ご、ごめん。起こしちゃった」

 
 

いや、それはいいんだけど。何かあったのかな?って思うだろ。

 

半身を起こしかけたら、両肩を掴まれてもう一回ベッドに沈められた。

 

その時に額と額をくっつけられて、超至近距離に雅紀の顔がくる。

 

んん~、インフルエンザじゃなかったら、このままキスでもしたいところなんだけど、まだその疑惑は解けてないから出来ない。

 

熱を測っていたらしい雅紀は、あんまり熱くない額に一瞬、あれ?ってなってたけど、安心したみたいに微笑んだ。

 
 

「しょーちゃん」

 

「ん?」

 

「お誕生日、おめでとう」

 
 

25日になったよ、って手にしていた携帯を見せてくれる。

 
 

「あ、ホントだ。ありがと」

 
 

こんなダッサイ誕生日の迎え方、初めてだわ。って文句言ったら雅紀がまあまあ、って宥める。

 
 

「ほら、次々とみんなからお祝いが来てるよ」

 
 

さっきから俺の携帯がポンポンポンポン着信を告げる音が鳴り続けてる。

 

雅紀に携帯を持って来てもらって開くと、色んな人から続々と誕生日を祝うメッセージが入って来てた。

 

あっという間に未読が溜まる。

 

その中で一番最初に開いたのは、俺たち5人だけでやってるグループトーク画面。

 

0時ちょうどに松潤から始まり、ニノ、雅紀、智くん。

 

その画面を開いてるのを目にした雅紀が、チラ、と俺を見てガシガシと頭をかいた。