どうやって配置したらバランス良いだろう。ああでもない、こうでもないと一人で呟きながら試行錯誤してみる。

 

いまいちしっくりくる配置を見つけられずにいたら、にゅっと後ろから手が伸びて、あっさりベストポジションを見つけ出した。

 
 

「なんですか?これ」

 
 

二宮さんが手にした二つの絵を見ながら問いかける。

 
 

「・・・あ、今日泊めてもらうお礼に俺が描いて来たんだけど、よかったら受け取ってもらえたら」

 

「え!?俺に!?本当に!?」

 
 

ぱぁっと二宮さんの頬に朱がさしたように紅潮する。こんな素な表情の二宮さんは珍しい。

 
 

「あ、あの、急いで仕上げたからちょっと雑な部分もあるんだけど・・・」

 

「そんなの全然わかんないよ。うっわ、うれし・・・」

 
 

そんなに喜んでもらえると思ってなかったから、こっちとしても贈り甲斐があって良かったと安堵する。

 
 

 

ビールで乾杯をして、適当につまみながら色んな話をした。

 
 
二宮さんが本当に俺の絵を気に入ってくれてることが改めて分かり、本当に嬉しかった。

 

ここまで理解を示してくれた人は久々、と言うか准さんと櫻井さん以外いない。

 

今まで仕事をしてきた中での賛辞はいかにもビジネスと言った感じで、本心は理解できていないのだろうと言うのが言葉の隅に表れていたから。

 

俺自身が、どこか異質な存在なのはわかっていたから無理して理解を得ようとは思わなかった。

 
 

俺の絵から何を感じ取るかはその人次第で自由だ。

 
 

同じ絵を見ても、自分次第で、その時々で変わるものだし、それでいい。

 
 

その時の自分が感じるものがすべてだ。

 
 

 

「ズッカは・・・」

 
 

おもむろに立ち上がった二宮さんが二枚の絵を持ってさっきの配置通りに壁に固定して、戻ってビールを一口飲んだ後、口を開いた。

 
 

「ズッカは、何を悩んでいるんだろうね」

 
 

悩んでる?二宮さんにはそう見えるんだ。

 
 

「悩んでるように見えるの?」

 

「・・・うん」

 
 

四つの場所を渡り歩くズッカが自分の降りる場所を求めているように見えるんです、と二宮さんは言った。

 
 

そう見えるってことは、二宮さん自身が今なにか悩みを抱えているということ。

 
 

彼はどうやって答えを見つけるんだろう。

 
 

そして、同時に俺の迷いでもあるということ。

 
 

俺自身の迷いが絵に表れているんだろう。

 
 
 

「ふふ・・・っ」

 
 

不意に二宮さんが笑った。

 
 

「・・・・・・?」

 

「なんか、恥ずかしいな」

 

「恥ずかしい?」

 

「うん。この鳥の目には一体何が映ってるんだろう。なんか、見透かされてるみたいで恥ずかしい」

 
 

そう言って二宮さんが腕で顔を隠すようにしてはにかんだ。