ここしばらくしびれる右腕をかばいながら

初夏の日差しをベンチで浴びている。


年老いたと思うのは

今までしなかった病気をしたり

すぐに疲れることだ。


昨日、細い声で聞き取ることも

難しく感じた年老いた女性の声を思い出す。


考えることもなく

ただただ感情だけで生きてきたような女性。


40手前の私ですら変わることを望まなくなっているのに

60も半ばになれば考え方を変えるのは容易ではないだろう。


太り過ぎた近所のネコがのっしのっしと歩いて

段差につまづいた。


そのネコは私と目を合わせ逃げることもなかったので

抱き上げた。


いつかこのネコもやせ細るときが来るだろう。


その姿に何を見るか。

過去を憂うか、今を生きるか

それでも未来を想うか。


しびれた右腕が痛み出したので

ネコを地面に置いた。


さっきと変わらずのっしのっしと歩き出す。


そういえば年老いた女性は

昔やたらせっかちだったなあと何故だか急に

昔を思い出した。



缶ビールがテーブルに並んでいる。

休みの日、テレビ見て時間をすごしている。


明日はきっとある。そう思う午前1時。

布団に入るのをためらう。


気がつけばカーテン越しに光が射し込む。

ネコが床にはいつくばった私を爪でつついてくる。


ボーっとした頭でシャワーを浴び

あくびをしながらコーヒーを入れる。


体はだるい。

そして決まって携帯を手にする。


会社を休む連絡だ。


10秒経って携帯を放り投げる。

休んだところで何も変わらないのに気づく。


マンションを出る。

いつもの景色。目の前にはタワーマンション。

スクールバスが生徒を出迎えている。


橋を渡るとき、真ん中あたりで一度立ち止まる。

家に戻ろうかなと一瞬頭をよぎる。


後ろ向きで覚悟が足りない人生。

行く前から負けている。


たまに叫びそうになる。

言葉にならない言葉を。


たまに思い出してしまう、過去のことを。


現実だけが目の前の真実だ。


良いも悪いもすべて自分なのだ。

結果が出ないなら過程も無意味だ。


踏ん張るには何が足りないのか。

それとも何をあきらめるか。


ベンチに腰掛けてタバコを吸う。

加齢臭にまみれた私の居場所は

限られている。


野良猫が目の前を素通りする。


ニャーと鳴いてみる。

一瞥をくれただけでニャーとは鳴かなかった。


ここのところうまく行かないと思ってはいるが

うまく行ってたときがあったんだろうかと思うと

ため息が出る。


空が青い。この青さに未だ嫉妬している。

正しいとか正しくないとか

信じるとか信じないとか

吹っ飛ばしてしまえば楽なのに、と思う。


演じるとか演じないとか

裏切るとか裏切られたとか

どうでもいいじゃないかと思えば、胃も痛まないだろう。


雨の降る新橋。

立ち飲みでビールをあおって

垂れ流されているテレビを見ている。


勝ったとか負けたとか

好かれる嫌われるとか

目的さえ持てば何とも思わない気がする。


逆風だろう。

ホントは寂しいだろう。


答えを持たなくなったのはいつからだろうか。


今、一人飲んでいて

本当にいなくなったんだなと思う。


いなくなっても良かったのか

いて欲しかったのか

もうどうでもよくなっている。


最近、人といるのはどうも苦痛だ。