受験生の二次元小説

受験生の二次元小説

受験生ですが、勉強から現実逃避で、ブログにフィクション小説を

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第3話:指名された夫


「それじゃぁ、子供が生まれたら、報告にくるわね。」


草履をはきおえた美代子は、顔をあげて、にこやかにそういった。


それに対し美代子の母は、少し眉をさげて


「週に一回ぐらいはきてくれたらいいのに。」


と、少し笑みをうかべながらそういった。


「だめよ。和夫さんだって忙しいし、私だって、このお腹で動き回るのは

危ないんだから。」


美代子はそういうと、和夫の手を握り、


「じゃぁね、お父さん、お母さん。今度会うときは2人家族が増えているから。」


とにこやかにいって、実家をでた。


美代子の母と父は、仲むつまじく歩いていく背中を見送りながら


涙をながしていた。


「あなた。」


美代子の母は、そういって、夫である美代子の父の胸で静かにないた。


美代子の父も、涙を流しながら、妻である、美代子の母を抱きしめた。


「大丈夫だ。和夫君なら、美代子を守ってくれるよ。」


美代子の父はそういって、男らしい和夫の背中を見つめた。


(和夫君、美代子をよろしく頼むよ。)


美代子の父は心の中でそうつぶやき、2人の背中を見送った。


そんな両親の心のうちを全く知らない美代子は、相変わらず幸せそうに


和夫の手をにぎっている。


和夫はそんな美代子とは裏腹に、昨日美代子の父に浴室で言われたことを


思い出しながら、深刻な顔をして、何かを考えているようだ。


そんな和夫に気づいた美代子は、和夫の顔を覗き込みながら


「和夫さん、そうしたの?そんな深刻な顔をして?

何か考え事?」


と、不安そうに尋ねた。


「あ、あぁ、そうなんだ。」


和夫は、そいって、美代子に何を考えていたかを悟られまいと、平然といって、


にこっと笑った。


美代子もそれにつられ、にこっと笑った。


汽車の中、久しぶりの長旅で疲れたのか、美代子は和夫の隣で


吐息をたてながら眠っている。


和夫は、そんな美代子の頭をそっと撫でた。


(俺が家族を守らなければ。)


和夫は、心の中で、強く、強く、そう思った。


汽車が広島に着き、和夫は美代子を起こした。


「美代子、着いたぞ。」


「ん、ぅん、私、ねちゃってたの?ごめんなさい。今、降りるわ。」


美代子はそういって、おぼつかない足取りで歩き始めた。


「おい、美代子、危ないだろ。」


和夫は、荷物を持っていないほうの手で美代子を支えた。


「あ、ごめんなさい。なんだか、頭がくらくらして。」


そういった、美代子の顔は、赤くなっている。


和夫は嫌な予感がしながらも、美代子のおでこに自分のおでこをくっつけた。


「熱!」


予感的中。美代子は熱があった。


「ごめんなさい。和夫さん。でも、大丈夫よ、歩けるから。」


美代子はそういうと、また、おぼつかない足取りで歩き始めた。


「美代子、無茶するな。俺が、おぶって行くよ。」


和夫はそういって、自分の背中を美代子の方にむけ、しゃがんだ。


「和夫さん、そっちの方が無茶よ。お腹に赤ちゃんいるんだから。


美代子は、そういって、いつものようにくすくすと笑った。


「それもそうか、なら、コレが一番適しているな。」


和夫はそういうと、笑っている美代子を、お姫様抱っこした。


ふいに、お姫様抱っこをされた美代子は、今どんな状況にあるか、


一瞬理解できなかったが、すぐに、今どんな状況下にあるかを理解し、


赤かった顔を更に真っ赤に染め上げた。


「か、和夫さん!大丈夫よ!私、ちゃんと歩けるわ!

だから、降ろして!」


「いいや、だめだ。あの足取りじゃ危ない。

それに、この体は、今お前だけの物じゃないんだから。」


和夫は、にこっと笑って、そういった。


美代子は、それに何も言い返せず、和夫のなすがままになった。


汽車を降り、平然と歩く和夫。


それとは、裏腹に、周りの目を気にする美代子。



















2:戦争


ガヤガヤ、


広島の中心部に、和夫と美代子は買い物にきていた。


和夫は、小さいながらも、自分の店を構えた。


清水のトロ料理。


その看板を掲げる和夫の店は、愛想がいい美代子のおかげもあり


小さいながら繁盛して、収入も安定していた。


今日はその、仕入れをしにきた。


そんな、二人は今、幸せの絶頂にいる。


「美代子、疲れたら、すぐいえよ。

寒くはないか?

それから、絶対に転ぶなよ。」


和夫は腹々しながら、美代子の手を握っている。


そんな和夫を、美代子はくすくすと笑いながら


「大丈夫よ。そんな心配しなくても。」


と、おかしそうにいった。


そう、美代子は、結婚式の夜に和夫と一緒になり、子供を身ごもったのだ。


「なぁ、美代子、男の子と女の子どっちがいい?」


「私は、男の子と女の子どっちでもいいわ。

だって、この子は私達の大切な子に変わりないんだから。」


美代子はそういいながら、幸せそうに少し膨らんでいるお腹をなでた。


和夫も、美代子の手に自分の手をかさねあわせた。


結婚式から、4ヶ月の月日がたち、赤く染まっていた葉は、


すっかり、落ち葉へと変わり、かれていってしまった。


「もう、すっかり、冬ねぇ。」


買い物を終わらせた、美代子と和夫は、家の縁側で、


外の景色をみていた。


すると、ふいに、和夫が美代子に謝った。


「美代子、迷惑ばっかりかけてしまってすまなかったな。」


いつもと違う和夫。


美代子は不思議そうに


「急にどうしたの?」


といった。


すると、和夫は


「俺とあっていなければ、美代子は今、

18歳だから学校に通っていたはずなんだよな。

それも、こんな汚い家じゃなくて、

もっと大きな綺麗な家で幸せにくらしてるはずなんだよな。」


と、雪景色の庭をみつめながら、せつなそうにそういった。


「和夫さん、私は自分で和夫さんについていったのよ?

それに、私、今とっても幸せよ。

こうして、好きな人と一緒に暮らせて、好きな人の子供を身ごもって。

これ以上、幸せな事ってほかにあると思う?」


美代子は、和夫の顔をみながら、幸せそうにそういった。


和夫も、美代子の顔を見て微笑んだ。


「だけど、いってみれば、俺と美代子は駆け落ちなんだよな。

しかも、13と15で・・・。

それに、一回も、美代子の親にあったこともないし。

今頃、泣いてるんじゃないか?

5年も姿をくらまして。」


和夫はそういうと、少し間をおいてから、


「今週の日曜さ、美代子の実家にいかないか?」


と、美代子に告げた。


ふいに、そんな事を言われた美代子は少し戸惑いながらも、


「でも、多分、和夫さんの事を許してくれないと思うわ。

それに、私が勝手に和夫さんについてきて、家出?したわけだし。

和夫さんが、お父さんに怒られるなんて、申し訳なくて。」


と、遠まわしに行きたくないといったが、和夫はそんな事はきにせずに


「俺は怒られるのを覚悟して行くんだ!

それに、お父様や、お母様に、子供ができたと伝えたいんだよ。

俺には、親がいないから、この子のおじいちゃんやおばあちゃんに

なるのは、唯一、美代子の親だけだろう?」


と、既に行く気満々だ。


美代子は、それに渋々賛成した。


そして、日曜日。


美代子と和夫は汽車にのり、東京へ向かった。


「久しぶりだな。こうして美代子と汽車に乗るの。

なんだか、5年前を思い出すよ。」


和夫は、美代子の手を握りながら、そういった。


それに対し、美代子はくすくすと笑い


「でも、5年前とは服装や髪型がちがうわね。」


と、おかしそうにいった。


和夫は、


「そういえば、そうだったな。」


と、照れくさそうに、頭をかきながらそういった。


頭をかく、これは、照れたときや、恥ずかしい時の和夫の癖である。


照れや恥ずかしさを隠すために頭をかく和夫の癖が、美代子は好きだった。


自分より、2つ上の和夫が、唯一、自分にみせる、可愛らしい姿だからだ。


「和夫さんって、照れたとき、頭をかくのが癖よね。」


美代子がそういうと、和夫は


「そうか?」


と、頭をかいた。


どうやら、無意識らしい。


美代子はくすくすとわらいながら


「ほら、またぁ。」


と、和夫の手を指差し、そういった。


それに、和夫は、


「ははは、本当だ。どうやら、無意識らしいよ。」


と、また頭をかく。


美代子はそれが可愛くて仕方がなかった。


そんなこんなで、汽車は東京についた。


昼過ぎに広島をでたため、もう、4時をまわっていた。


辺りは、少し、うすぐらくなっている。


美代子と和夫は、大勢いる、東京で、あの時のように、はぐれないよう、


互いの手をしっかりと握り、美代子の家へと足を進めた。


美代子の家の門の前で、和夫は立ち止まる。


「美代子、いよいよだな。君の親に会うのは初めてだから、

今スッゴク緊張しているよ。」


和夫は、本当に緊張しているようで、体が固まっていた。


美代子は、そんな和夫にかわり、硬く閉ざされている、門を叩く。


「はい、どなたでしょうか?」


聞き覚えのある声が聞こえ、門が開かれた。


出てきたのは、学校での送り迎えをしてくれていた、使用人だ。


「お、お嬢様!?今までどこに・・・この方は?」


使用人は、混乱のあまり、パニックになっていた。


美代子は、そんな彼女に


「あの、トメさん、お母さんを呼んできてくれるかしら?」


と、少し不安げにいった。


「か、か、かしこまりました!奥様、奥様。」


使用人のトメは、そう、大声でよびながら、家の中へとはいっていった。


美代子は隣にいる、和夫の方に目をやった。


すると、和夫は、さっきよりもいっそうかちこちになっていた。


美代子は、そんな和夫に


「和夫さん、そんなに緊張してたら、お母さんまでも、緊張しちゃうわ。」


と、少しでも、緊張が和らぐように、笑顔でいった。


それに対し、和夫は


「あ、あぁ、そうだな。いわれてみれば、そのとおりだ。」


といっているが、緊張はとけないいまま、あいかわらずかちこちになっている。


「お嬢様ー。奥様を連れてまいりましたー!」


使用人のトメが、気品に満ち溢れた、綺麗な女性をつれてきた。


「あれが、お母さんよ。」


美代子は、小さな声で、そっと、和夫に伝えた。


すると、和夫は無言のまま、美代子の手を、よりいいっそう、強く握った。


「美代子!美代子なの?」


そういいながら、美代子の母は美代子に駆け寄った。


「あなた、5年もの間、どこにいたの?それに、この方は?

俳優さん?あぁ、だけど、無事でよかったわ。」


そういって、美代子にだきついた、美代子の母は、美代子のお腹の異変にきがつく。


「美代子、あなた・・・」


美代子の母がそういいかけたとき、ずっと黙りっぱなしだった和夫が口を開く。


「お初にお目にかかります!お母様。俺・・・私は、美代子・・・美代子さんと

結婚させていただきました、清水 和夫と申します!!

お母様や、お父様のお許しもえず、結婚してしまった事、謹んで

お詫び申し上げます!けれど、私は、美代子さんを愛しております!

そして、美代子さんとの間に子供ができました!

身勝手なことをした・・・」


和夫がそういいかけたとこで、美代子は


「か、和夫さん。後は、中でお話ししましょう。」


と恥ずかしそうにいった。


そう、和夫は緊張のあまり、今までの事をとても、無意識に大きな声で話しており、


それに、きづいた、近所の住人が、美代子と、和夫の側に集まっていたのだ。


「あれ誰かしら?」


「あの綺麗な女性は、5年前いなくなった、神崎さんとこのおじょうさんでしょ?」


「それはわかるわよ。その隣の男前の男性よ。」


「神崎さんのお嬢さんの夫っていっていたわよ。」


「何をやってる方かしら?」


「あんなに、男前なんだから、俳優さんか、なにかじゃないかしら?」


そんなヒソヒソと話している声がどこからともなく聞こえてくる。


我に返った和夫は、その会話がきこえてき、顔を真っ赤に染め上げた。


和夫と、美代子は二人して顔を赤くしながら、美代子の母に案内され、


家の中へと入った。


美代子の家は、5年前とかわらず、高そうな壺やら掛け軸やら、石などが


玄関に飾られている。


「美代子、お父さん今お仕事で、でているから、美代子の部屋で待っててもらえる?

5年前とかわってないから。」


美代子の母は、そういうと、奥のほうへと消えていった。


美代子は、ずっと無言のままの和夫をみた。


和夫は、母がいなくなり、緊張がとけたのか、顔が和らいでいた。


「和夫さん、私の部屋へ行きましょう。」


美代子は、そういうと、和夫をひっぱり、自分の部屋がある2回へと行くため、


階段をのぼった。


上り終えたすぐそこにある、部屋が美代子の部屋だ。


美代子は、和夫を引っ張り、部屋へと入った。


「ここが私の部屋よ。」


美代子の部屋は、5年前と替わっていない、清潔感のある部屋だ。


だが、ちょくちょく、掃除はされていたようだ。


ホコリのひとつもない。


美代子は、部屋におかれている、おおきなソファに座った。


それに続いて和夫も座る。


2人は相変わらず、硬く手を握りしめあっていた。


「こんな大きな椅子までもあるんだな。しかも、凄くふわふわだ。」


和夫はそういいながら、不思議そうにソファを手で軽くばんばんと叩いている。


その光景がおかしくて、美代子は隣でくすくすと笑った。


それに気づいた和夫は、


「美代子、なんで笑ってるんだ?」


と、不思議そうにいった。


「和夫さん、これはね、ソファって言うものなの。

外国からの輸入品よ。」


美代子は、くすくす笑いながらそういった。


それに対し和夫は


「外国には、こんなふわふわな椅子があるんだな。」


と、少し弾みながらいった。


「だけど、これは祖父母の時代の物だから、少し古いのよ。」


美代子がそういいおわると、和夫は


「そうとは思えないほど、ふわふわだ。」


と、弾みながらいった。


すると、美代子の母がドアをノックし、


「美代子、お茶をもってきたわよ。」


といって、部屋に入った。


美代子は、さっきまで、ソファで遊んでいた、和夫に目をやった。


和夫は、案の定、さっきとは裏腹に、手をひざの前におき、


ぴしっと、座っていた。


美代子は、そんな和夫をくすくすと笑いながら、


母がもってきたお茶に口をつけた。


「それで、さっきの続きを話してもらいましょうか?」


美代子の母は、お茶をもってきたおぼんをひざの前でもち、


美代子と、和夫の前に座り、そういった。


緊張している和夫にかわり、美代子が話そうとした、その時


和夫が、緊張しながらも冷静に話し始めた。


「先ほどは、大きな声を出してしまい、まことに申し訳ありませんでした。」


「いいんですよ。それより、さっきの続きを。」


美代子の母は、和夫を急かした。


「はい。さっきもいったとおり、私と美代子さんは、結婚し、そして、子供を授かりました。」


「それで、私達に今更報告にきたのね。それより、いつ、子供をさずかったの?

それに、あなたは誰?俳優さん?それとも、一般の方かしら?」


美代子の母は、少し、強めに、そして、嫌味っぽくそういった。


それに、和夫はひるむことなく、とても丁寧に


「はい、順番が違う事は、十分承知しております。

子供を授かったのは、約4ヶ月前です。

それと、私は、一般人です。しかも、美代子さんのような、上の方ではなく、

下の、そのまた下の方の人間です。」


と、顔色をかえずにそういった。


「あら、そうでしたの、あまり、お顔がいいものですから、俳優さんか

何かとお思っておりましたが、一般の方でしたの。

それより、あなた、美代子や、そのお腹の子供を幸せにすることができるのかしら?

それに、4ヶ月でそのお腹のふくらみってことは、子供は1人じゃないわ。

2人の子供を養える余裕はあるの?」


美代子の母から受けた衝撃的な一言。


美代子は、驚きを隠せずに、口を開いた。


「双子って言う事?」


「そのようよ。4ヶ月で、そのお腹の大きさは異常だもの。」


美代子の母は、顔色ひとつ変えずに、そういった。


それに対し和夫は


「私は、小さいながらも、自分の店を構えており、収入も安定しておりますので、

美代子さんや、お腹の子供2人を養えるほどの余裕はあります。」


と、子供が2人だった事にも動じずに、冷静かつ、堂々とそういった。


それに対し、顔色一つ変えなかった美代子の母はにこっと笑い


「参ったわ。

あなたが、美代子やそのお腹の子供を本当に大切に思っていることが

凄く伝わってきたわ。」


美代子の母はそういうと、美代子の方に顔をむけ、


「美代子いい人をみつけたわね。

お母さん、心から応援するわ。

あ、それと、このことは、私から、お父さんに伝えておくわね。」


美代子の母はそういうと、「それじゃ。」とにこやかにいって、


部屋をでた。


美代子は、母が階段を下りていく音が聞こえるのを確認すると、


「和夫さん!凄いじゃない!

お母さんを前にあんなに堂々と、しかも、冷静にしゃべれるなんて!」


と、声をはりあげ、和夫の手を握りながらそういった。


それに対して、和夫は顔を真っ青にしながら


「は、はは、美代子、俺、緊張しすぎて、少しもらしてしまったようだ。」


と、不気味に笑いながらそういった。


美代子は、失望しながら、少し顔をひきつらせ


「今、お父さんのをもってくるわ。」


といって、部屋をでて、父の部屋へ行った。


美代子の父の部屋は、相変わらず、書物がたくさんあった。

美代子の父は、政府関係の仕事をしており、大事な書類などが、


床の下につみあげられてた。


美代子は、それにきづかづに、その書類を足でけってしまい、


書類が床にちらばった。


「大変、お父さんにおこられちゃうわ。」


美代子は、急いで、書類をかき集めた。


美代子はふと、その書類にきになる文字をみつけ、


いけないと思いながらも、目を通してしまった。


そこにかかれていたのは、さっきとは比べ物にならないほど、


衝撃的なことだった。


美代子は、少しの間放心状態に陥った後、その書類を元に戻し、


父の下着をとって、和夫がいる部屋へと戻った。


「美代子、どうしたんだ?顔が真っ青だ。」


美代子は、和夫にそういわれ


「そ、そんなことないわ。きっと、寒いからそうみえるだけよ。」


と、ごまかした。


「そっか、それならいいけど。」


「あ、そうだ、和夫さん、はいこれ、お父さんのだけど、綺麗だから。」


美代子は、そういうと、和夫に下着を渡した。


「でも、いいのか?お父様のなのに。」


「そんなこといってる余裕もないでしょ?それじゃ、私は部屋の外にいるから、

着替え終わったら、よんでね。」


美代子は、そう、にこやかにいうと、部屋をでた。


「なんか、変だな。」


和夫は、美代子が部屋から出たあとにそうぼそっとつぶやいた。


美代子は、部屋からでるなり、その場に力なく座り込み


「戦争・・・。」


と、小さくつぶやくと、涙を流した。


「おーい、美代子、着替え終わったぞ。」


その声が聞こえたのと同時に、美代子は、涙をぬぐい、


「はーい。」


と返事をしてから、笑顔で部屋に入った。


「どう?ちょうどよかった?」


「いや、少し大きいよ。」


「そっか。でも、はかないよりはましでしょ?それより、汚れた下着は?」


美代子は和夫にそういい、辺りをキョロキョロと見渡した。


「あ、汚れたのは、あいている袋にいれておいたよ。」


「そう、家帰ったら、すぐ洗わないと。」


美代子は、そういやみっぽく言うと、和夫の様子を伺った。


案の定、和夫は頭をかいていた。


美代子は、くすくす笑いながら和夫の隣に座った。


「和夫さん、私達ずっと一緒にいようね。」


美代子は、そういい、和夫の肩によりかかった。


それに対し、和夫は


「美代子、どうしたんだ?なんだかおかしいぞ?」


と、不思議そうに言いながらも、美代子の頭を優しくなでた。


「そうね。私、今日は少しおかしいのかも。

子供が2人いたかしらね?舞い上がってるんだわ。」


「そういえば、そうだ。

なんだか、これから、騒がしくなりそうだ。」


和夫は、子供が生まれる未来を想像して、にこにこわらっている。


和夫は、美代子と会ったときに比べ、表情や感受性がとても豊かになった。


広島では、学校などには通っていなかったが、


表情や感受性が豊かになったおかげで、すぐに、友達もできた。


広島での和夫は、俳優にも負けないくらいの、人気がある。


美代子は、今までの和夫を思い出し、そして、涙を流した。


それに気づいた和夫は、


「美代子!どうしたんだ!?急に泣き出して?

もしかして、お腹が痛いのか?救急車よぼうか?」


と、少し困惑している。


「ごめんなさい。なんでもないの。

ただ、嬉しくって。」


美代子はそういって、涙をぬぐった。


「そ・・・うか。それなら、よかった。」


和夫は、そういっているが、その返答に違和感を感じていた。


それから、美代子の父がかえってくるまで、美代子と和夫は寄り添いながら、


ソファの上で眠りにおちた。


数時間後、階段を急いで上ってくる音で、美代子は目覚めた。


美代子は、急いで和夫をおこし、電気をつけた。


「美代子どうしたんだ?」


和夫が目をこすりながら、そういったところで、ドアが勢いよく開いた。


「美代子!!今までどこに、こんなに大きくなって。あぁ、だけど、無事でよかった。」


そういって、涙を流しながら美代子に抱きついたのは、美代子の父であった。


「お父さん、ちょっと、待ってくださいな!まだ、お話しが・・・。」


そういって、息をきらしながら、美代子の母が部屋へ入ってきた。


美代子の母が入ってきたところで、美代子の父は美代子を離し


美代子の、お腹にきがついた。


「み・・み・・美代子ぉーー!少し太ったかぁぁぁぁーー!?」


美代子の父は、美代子のお腹を指差しながら、そう叫んだ。


それに対し、美代子の母が、あきれながら


「ちょっと、あなた!今、お話しますから、下へ来てくださいな。」


といって、強引に、美代子の父の服を掴み、下へとひきづっていった。


部屋から引きづり出される際に、美代子の父は


「美代子ぉぉぉーー、お父さんは、お前が太っていても別にきにしないぞぉーー!」


と、叫んで美代子の母に、「あなた、うるさい!」と怒られながら、去っていった。


「美代子、今のお父様?」


和夫は、顔を引きつらせながら、美代子に尋ねた。


それに対し、美代子は顔を真っ赤にしながら


「そうよ、親ばかなの!」


と、いって、和夫の隣にボスッと座った。


「なんか、もっと怖い人かと思った。」


「そんなの、顔だけよ!本当は、中身なんか、ちっとも怖くないの。

お母さんの方が、お父さんよりよっぽど怖いわ。」


美代子は、父の威厳のなさに、少し失望しながらそういった。


それに対し、和夫は


「いいお父様だ。俺もあんな風になりたいな。」


と、父が引きづりだされたドアの方を見ながらそういった。


「でも、ちょっとぐらい、威厳って言う物がほしいな。」


そういう美代子に対し、和夫は


「威厳なんてあっても、なんの得にもならない。

むしろ、ない方が、信頼関係や、人付き合いがよくなる。

それに、お父様に威厳というものがあったら、美代子みたいな、

人を気遣える上に、おしとやかな子供は育たないよ。」


と、珍しく、まともな返答をした。


美代子は、少し驚きながらも


「へぇ、そうなんだ。和夫さんも、そんなこというのね。」


と、笑顔でいった。


和夫は、少し顔を赤らめながら、頭をかいた。


美代子は、少し、くすくすと笑った。


その時、下のほうで、美代子の父が涙声で


「美代子ぉぉぉぉぉぉーーー!!」


と叫んだ。


どうやら、美代子の母が全部を話し終えたらしい。


美代子はそれが、合図だったかのように、すくッと、たちあがると、


「和夫さん、下にいこう。」


といって、和夫の手を握った。


下へ行くと、テーブルには豪華な食事が並んでいた。


笑顔の母に対し、隅でうずくまる父。


なんとも、シュールな光景だ。


「さぁ、今日は少し遅いけど、結婚祝いよ!

たんと、食べて!!」


美代子の母はそういうと、隅でいじけてる父などお構いなしに、


料理を食べ始めた。


美代子も、「いただきます。」といって、平然と料理を食べ始めた。


和夫は、美代子にそっと


「おい、お父様ほうっておいていいのか?」


と、いった。


それに対し、美代子は料理を食べながら


「いいのよ。いじけたときはいつもああなの。

ほうっておけば、そのうち、お腹が減って、食べに来るわ。」


といった。


和夫も、渋々、美代子の父を無視して「いただきます。」


といい、料理を食べ始めた。


「美代子、今日は泊まっていくんでしょ?」


美代子の母は、料理を口に運びながら、美代子に尋ねた。


「ううん、帰るわ。だって、着替えなんかもってきてないもの。」


と、美代子も、口に料理を運びながらそう答えた。


「何いってんのよ!帰るにしたって、もう汽車なんかないわよ!

あなたには、お母さんの服かしてあげるから!

それに、和夫さんには、お父さんの服で、いいわよね?」


美代子の母は、そういうと、相変わらずいじけている父にそう聞いた。


それに、美代子の父は、聞こえるか聞こえないかぐらいの声で


「あぁ、いいよ。」


と、相変わらず、隅で体育座りをしながら、そういった。


「じゃぁ、決まりね!

和夫さんもいいわよね?」


「は、はぁ。」


美代子の母があまりにもにこやかにいうので、和夫は断る事ができなかった。


そんなこんなで、食事がおわった。


美代子の父はとうとう、食事に参加しなかった。


美代子の母は、食器を片付けながら、


「あなた、そんな子供みたいに、いじけていても、仕方ありませんよ。

あなたの分の食事は、ここにおいておいときますから。」


と、冷たくいった。


美代子の父は相変わらず、体育座りをしながら


「あぁ。」


と、まるで、魂でも抜かれたかのような声でそういった。


そんな父をおかまいなしに、美代子は


「和夫さん、私、お母さんのお手伝いしてくるから、先に二階へいっていて。」


と、いって、どこかへいってしまった。


和夫は、どうしたらいいのか分からずに、そのまま、口を開かずに、


美代子が帰ってくるまで、じっと待った。


しばらく、辺りが沈黙に包まれた後に、ずっといじけていた美代子の父が


ようやく口を開いた。


「和夫くん、お風呂へ入らないかぃ?」


ふいに、美代子の父に風呂に誘われ、和夫は反射的に


「は・・はい!!」


と、大きな声でいってしまった。


それ似たいし、美代子の父は相変わらず暗い顔でのそっと立ち上がり


「じゃぁ、風呂はいりに行こうか。」


といって、ゆっくりと歩き始めた。


和夫もすくっとたちあがり、美代子の父の後についていった。


美代子の父は、風呂に入る前に、美代子の母と美代子のいる台所へより


「和夫くんとお風呂はいるから、着替えなどを頼むよ。」


と、相変わらず浮かない顔と声でそう伝えた。


それに対し、洗い物をしていた美代子の母と美代子は目をまるくさせ


「和夫さん、お父さんと一緒にお風呂にはいるの?」


と二人声を合わせてそう尋ねた。


和夫はそれに、うなづいた。


それに、美代子は父と和夫が喧嘩すると思ったのか


「か・・和夫さん、無理しなくていいのよ?

あ、そうだわ!!和夫さんは後で私と入りましょ!?

夫婦なんだから!」


と、どうにか父と和夫を一緒にさせまいと、無理にそういった。


だが、そこに美代子の母が割って入った。


「いいじゃないの!!男は男同士で、積もる話があるのでしょう!

だから、美代子は久しぶりにお母さんと一緒にお風呂入ろう!

女は女で、男は男で!ねっ!?」


美代子の母は、強引にそう話を進めると、あたかも早く行け、といわんばかりに


美代子の父と和夫の背中を押した。


和夫は、美代子の母に背中を押されながらも、美代子が不安そうな顔をしているのを


気にかけ、「大丈夫」と口ぱくで伝えた。


それに気づいた美代子は、「がんばって!」と口ぱくで返し、にこっと笑った。


それに勇気づけられた和夫もにこっと笑った。


湯船に、和夫と美代子の父だけつかっている。


当たり前のように、会話など全くない。


その状況に和夫は、気が気ではなかった。


自分が何か話さなければならないのだろうが、


初めて会う美代子の父に何を話していいのかがわからない。


だが、なにより和夫が心配しているのは今の、美代子の父の心情だ。


もうすぐ父になる和夫も、なんとなくだが、美代子の父の気持ちがわかるようなきがした。


もし、自分の子供が娘だったら、そして、その娘が急にいなくなり、


見知らぬ男と、その男の子供を授かり、急に帰ってきたら、そう考えてみると、


この状況で、今、自分に襲い掛かってきても、決しておかしくはない。


そんな事を刻々と考えていると、美代子の父が口を開いた。


「和夫くんは、今歳はいくつなんだ?」


相変わらず暗い顔をしているが、どこか悲しそうな表情も伺えた。


和夫は少しびくっと体を震わせ


「あ、え、えっと、今ちょうど20歳です。」


と、少し、小さな声でそういった。


それに対し、美代子の父は


「そうか。そうか。そうか。」


と、何度もその言葉を繰り返して涙を流した。


突然の事で驚いた和夫は、少しパニックになりながら


「あ、あ、あの!どうかしましたか!?お・・私何かしましたでしょうか!?」


と、なれない敬語をへたくそに使いながらそう尋ねた。


それに美代子の父は涙を流しながら


「和夫くんには、親がいなかったよね?」


と、尋ねた。


和夫は、


「はい。私は捨て子なので。」


と、少し声のターンを下げて答えた。


それを確認した美代子の父は、涙をぐいっとぬぐい


「いいかい?和夫くん。美代子を連れて、ずっと田舎へと行くんだ!

そうだな・・・新潟の山奥・・・黒川という村があるからそこへいきなさい。

わかったかぃ?」


と、さっきとは比べ物にならないほど真剣にそういった。


和夫はなぜ、そんな所へ行かなければならないのか全くわからなかった。


いや、分かっていたとしても、その現実を受け入れる事ができなかっただろう。


和夫は、わけがわからなかったが、とりあえず


「は・・い。」


と小さく返事を返した。


3に続く





















































プロローグ


ドーン!!


東の町に、爆弾が投下された。


空には、黒い煙、そして、なにもかもを燃やしてしまったのを告げる、


赤い炎。


女はよりいっそう森の奥へと足を進めた。


2人の赤子を抱きながら、雨でぬれた土の上を、


無我夢中で、走る。


だが、ぬれた土は、そう簡単に女を進ませてはくれない。


女は、体も、心もつかれきり、やがて、2人の赤子をを守るように、


土の上に倒れこんだ。


辺りに赤子の鳴き声だけが響き渡った。

第1話:和夫と美代子


1936年、10月17日、広島の外れにある、小さな田舎町で、1組の夫婦ができた。


そのドレスぴったりでほんまよかったわ。」


豆腐屋の、和子は白いドレスに包まれた花嫁の手をきゅっとにぎり、


にこやかに、そういった。


「ありがとうございます。和子さんには何から、何までお世話になってしまいまして。

これからは、夫婦2人で、このご恩を除々に返していきますので。

和夫さんと、私で。」


花嫁は、隣で楽しそうに知り合いと喋っている、花婿をみながら、


豆腐屋の和子にそういった。


「フフ、そねーなの、ええのよ。

せーより、夫婦仲良くくらせーよね。

なんて、喧嘩したことなんかなかったわね。」


和子は、そういうと、腕を組み、和夫の方に目をやった。


「はい。」


美代子は、にこやかにそう答えた。


その2人に、きがついた花婿、清水 和夫は花嫁の、神崎 美代子の


腕を掴み、


「どうだ、和子おばさん、美代子綺麗だろう?」


と、得意げに和子にいった。


「綺麗にきまってるでしょ。

不器用なあんたにゃー、もったいないくれーだわ。」


美代子、こんな俺と結婚してくれてありがとうな。

それと、和子おばさんもドレス仕立ててくれてありがとう


和夫は、少し、照れくさそうに、頭をかきながら、美代子と和子にそう伝えた。


「和夫さん・・・。」


美代子は、和夫の顔をみたまま、顔を真っ赤にそめていた。


あの、不器用な、和夫から、こんな言葉が出てくるとは以外だった。


和夫と、美代子は見詰め合ったまま、2人の世界へはいってしまいそうな勢いだ。


「そねーなのええのよ、せーより、お2人さん、はあすぎ式がはじまるわよ?」


和子は、絶妙なタイミングで、2人の間に入り、そういった。


和夫と美代子は、照れくさそうに顔をうつぶせ、


式場へと、手をつなぎながらはいっていった。


「ほんまに世話がやけるんじゃけん。」


和子は、ボソッとそうつぶやき、二人の後に続いて、式場へとはいっていった。


「夫婦になる前に、あなた方2人は、どちらかが、病めるときも、

苦しんでいるときも、互いに助け合い、生きていく事をちかいますか?」


「はい、誓います。」


和夫と美代子は、声をあわせ、しあわせそうに、そう答えた。


それに、続いて神父は、


「それでは、誓いのキスを。」


と、いった。


それに対し、和夫は動揺して、


「こ・・・こんな人前でなんか、できねーよ。」


と、顔を真っ赤にし、言葉をつっかえさせながら叫んだ。


そんな和夫に対し、式にきていた参列者や友人が和夫をせかす。


「誓いのキスしなきゃ、結婚はできんよーーー!」


「そうじゃ、そうじゃーー。」


わいわい賑わう式場、その野次に対し和夫は顔を真っ赤にさせながら


「うるさい!!さっきんは嘘だー!」


と、大胆発言をしてしまった。


「せーじゃぁ、はよーきすせーよーーー!!」


その野次にのってしまった和夫は、隣でくすくす笑っている


美代子の腕を掴むと、そのままキスをした。


それに対し、さっきよりも盛り上がる式場。


「おおぉぉーーーー。」


「ヒュー、ヒュー、あちーねぇ、お二人さん!」


中には、紙ふぶきをばらまいている者もいた。


キスをし終えた和夫は、顔を真っ赤にさせながらも


「どうだ!!これで、結婚できただろう!?」


と、胸をはった。


それに対し、参列者は大爆笑。


「ぎゃはははは、せー、本気にしてたのかよーーー!」


「和夫かわえーー。」


「キスなんかしにゃーくても、結婚できるんやでーー、ぎゃはははは。」


「美代子ーー。かわええよーー。」


そんな、野次に対して、和夫は、更に顔を真っ赤にさせ、


「お前ら、騙したなーー。」


といい、参列者のほうへと、はしっていった。


「うわぁー、逃げろーー。ぎゃははははは。」


「待て、こらぁーー。」


美代子は、そんな和夫の姿をみて、和夫に会ったときのことを思い出していた。


あれは、寒い冬の事。


そのころ、日本は、終戦したばかりで、まだ貧しかった。


私は、東京にある高貴な家の生まれだったため、そのころの日本の現状などしるよしもなかった。


だが、13歳になったころ、学校という物に通う事になった。


今までは、家で、勉強を教えてもらっていたが、あまり、外にださないのも


悪い、という親の心遣いで、学校に通わせる事にしたらしい。


学校に行く、初日、初めて外に出る私は、胸が高鳴って、


破裂しそうだったのを、今でも覚えている。


だが、一歩外に繰り出した私は、絶望的な思いに駆られる。


路頭には、あふれんばかりのうす汚い子供達が、げっそりとやせた


その体を支えるかのように、壁に寄りかかっている。


もう、肌寒くなってきているというのに、着ている召し物は、ボロボロだ。


勉強を教えに来てくれていた、先生からは、秘密でよく、家の外のことを


きいていたが、これほどひどかったとは、思ってもいなかった。


だが、権力など微塵ももっていない私には、どうする事もできず、


ただ、その子たちの前を素通りするしかなかった。


その衝撃から何ヶ月かたった雪の降る朝、いつもどおりに、


使用人とともに、学校へ行く途中、寒くなると、どこかへ姿を消す、


路頭の子供達だったが、たった一人だけ、上半身裸で、今にでも凍え死に


そうな男の子が、横たわっていた。


私は、その男の子からめが離せなかった。


学校にいるときも、あの男の子のことばかり考えてしまう始末。


学校も終わり、使用人につれられながら、家に帰ると、


男の子は、まだあの場所で、横たわっていた。


私は、家に帰ると、すぐに、自分の洋服を手に取り、誰にも


見つからないように、家をでようとした、その時、


「美代子、洋服なんかもってどこへいくんだい?」


と、父にみつかってしまった。


私は、とっさに


「お風呂に行って、あったまろうと思っていたの。」


と、嘘をついた。


それに対し、父は疑わずに


「そうか、それじゃぁ、このお金を持っていきなさい。」


と小銭を手渡した。


「ありがとう。」


私は、そういい、父の元を離れようとした、が、また父が


「あ、そうそう、これ、今月分のお小遣いだ。」


と、今度は、お札を手渡した。


私は、それをポケットにしまい


「ありがとう。」


といってから、父の側を離れ、今度は誰にも見つからないように


男の子の元へいった。


「大丈夫?これ、ちいさいかも知れないけど、

着てないよりは、ましだと思うわ。」


そういって、男の子に自分の洋服を差し出した。


男の子はむくっと起き上がると、その洋服を荒々しく受け取り、きた。


私は、内心、(なによ、この子!?)と思いながらも、


男の子の隣に座り、


「あなたは、何歳?私は、13よ。」


と質問をした。


男の子は、顔をうつぶせ、長い髪の毛で顔を覆いながら小さく


「15」


と答えた。


私は、自分より、上だったのに、多少驚きながら


また質問をする。


「あなた、名前は?」


彼は、また小さく


「和夫」


と答えた。


「苗字は?」


また、


「清水」


と小さく答えた。


「いい名前ね。私は、神崎 美代子よ。」


私がそういうと、彼はすくっと立ち上がり、


ふらふらと、歩き始めた。


立ち上がった彼は、思った以上に背が高い。


私も立ち上がり、彼の後を追って


「どこへいくの?」


といった。


すると、彼はまた小さく


「神崎って、そこのでっかい家のお嬢さんだろ。」


といった。


私は、普通に


「そうよ。」


と答えた。


すると、彼はさっきより少し大きな声で


「俺を追い払いにきたんだろ?自分の家の前にこんな汚い奴がいたら

不快だろうからな。」


と、いって、また歩き始めた。


私は


「違うわ。」


といったが、彼は、足を止めなかった。


私は、そんな彼に無言でついていく。


しばらく、歩くと彼が立ち止まり


「なんで、ついてくるんだ?」


と、小さくいった。


私は、


「あなたをほうっておけないから。」


と、手を後ろでくみながらいった。


すると、彼はまた歩き始めた。


私も、相変わらず、彼についていった。


随分と歩き、もう、家にももどれないような所まできてしまった。


私は、無我夢中で、彼についていっていたので、そんなことお構いなしだった。


すると、彼はようやく、足をとめ、どこかの駅のベンチに腰掛けた。


私も、彼の隣にちょこんと座った。


すると、彼は


「お前、こんなとこまでついてきても、なんにもならないぞ?

早く、家帰れよ。」


と、こちらに顔をむけていった。


ずっと、髪で隠れていた瞳が見えた瞬間だった。


瞳の色が茶色だった。


(とても綺麗。)


私は、彼の瞳に魅了された。


彼は、そんな私にあきれ、また顔をうつぶせた。


何分間か、すわっていると、彼がどこかへいってしまった。


私は、ようやく、もう帰れないということを悟った。


目から、涙があふれてくる。


(お父さん、お母さん。)


まだ親離れができない私は、涙があふれ続ける。


すると、何かをかって、帰ってきた彼が、泣いている私に問いかけた。


「家に帰りたいのか?」


それに、私はコクンとうなづいた。


すると、彼は


「俺は、もういかなきゃならないから、あそこにいる、人に家に帰りたいって言えば

帰れるから、早くいきな。」


と、小さくいった。


私は、涙をぬぐいながら


「あなたは、どこへいくの?」


と、質問をした。


すると、彼は、


「広島。」


と、顔をうつぶせたまま言った。


私は、涙をぬぐい


「私も行く。」


といった。


世間知らずだった私は、後先考えずにそういった。


だが、今では、この決断が正しかったと尾思っている。


すると、彼は


「じゃぁ、ほら、これ、切符。」


と、切符を私に手渡した。


「私の分もかっておいてくれたの?」


私の、その質問に彼は答えなかった。


そのまま、2人で、汽車が来るのを待った。


汽車がくると、一気に、人が増えた。


その人の多さに、彼とはぐれてしまった。


「和夫さん!和夫さん!」


大声で彼のことを呼ぶと、ふいに、右手を握られた。


「和夫さん!」


そう思い、掴まれた手のほうへ目をやると、見知らぬ男のひとだった。


「お嬢ちゃん、どこかの貴族だろ?

おじちゃんについてくれば、もう大丈夫だから、こっちおいで。」


(貴族さらい)


そういわれている、誘拐犯だ。


貴族をゆうかいしては、親に身代金として、莫大な金を要求する。


貧しかった日本で、問題になった事でもあった。


私は、口をふさがれ、叫ぼうにも叫べなかった。


(誰か、誰か助けて。)


汽車の発射ベルがなり、ドアがゆっくりと閉まりだす。


(もうだめだ。)


そう思った矢先、貴族さらいが、急に


「ぐはぁぁ。」


といって、倒れた。


そして、手をひっぱられ、ドアが閉まる直前で汽車にのった。


「和夫さん。」


私の手を握りながら、彼は、息をきらしていた。


「探したぞ。もう、はぐれんな。」


彼は、息をきらしながらそういうと、


私の手をにぎったまま、空いてる席に座った。


広島につくと、和夫さんの知り合いの家へ行く事になった。


それが、豆腐屋の和子さんだ。


だが、そこまでいくには、また、汽車にのらなければならなかったが、


私の分の、切符を買ったせいで、お金がなくなってしまっていたようだ。


途方にくれていたとき、私はあることを思い出した。


(そういえば、お父さんがお金をくれたんだっけ。)


私は、そう思い、ポケットに入っていたお金を出し


「これで、たりるかしら?」


と、和夫さんに聞いた。


すると、和夫さんは、目を見開き


「やっぱり、金持ちだな。これで、十二分にたりるよ。」


とやさしくいった。


私は、


「よかった。」


とほっとした。


それから、2人で汽車にのり、豆腐屋までいくことになったが、


あいにく、場所がわからなかった。


だが、人に道をたずねても、彼の身なりをみて、しらんぷりするひとばかりだった。


そして、私はあることを彼に提案した。


余っているお金で、洋服と、髪を切れないのか?と、


すると、彼は、少し考えてから


「大丈夫だと思うけど・・・。お前の金、つかっていいのか?」


と、きいた。


私は、大きく頷いた。


まず、服をかった。


余りお金がなかったため、安い服だったが、それでも、さっきよりは全然


ましだった。


それから、髪を切りに床屋へいった。


彼は、見違えるようだった。


「お客さん、なんで、こねーな男前なのに、髪を長くしてたんじゃろか?」


髪きりは、そういって、彼に鏡をみせた。


だが、彼はろくに鏡をみずに、お金をはらって、店をでた。


私は、ペコリと、頭をさげ、彼に続いて店をでた。


「美男美女だなぁ。」


髪きりは美代子と、和夫が出た後に、ぼそっと、そうつぶやいた。


きちんとした、格好と髪型をしている和夫さんはまるで、俳優の


ように、男前だ。


私は、彼の後姿をうっとりとした目でみていた。


すると、彼は突然たちどまり、私のほうをみると、手をさしだしてきた。


「また、はぐれると、悪いだろ。」


彼は、最初の方に比べると、声が大きく、そして、優しくなったような気がする。


私は、彼が差し出していた手をぎゅっと握った。


「ねぇ、お金、後どれぐらい残っているの?」


「もう、殆どない。何かほしいのか?」


私は、少し顔をうつぶて


「お腹が空いたの。」


と小さくいった。


「そうか、じゃぁ、ちょっと待ってろ。」


彼はそういうと、私から、手を離し、小さな店へ入っていった。


そして、数分後、何かもって、出てきた。


「はい、これ、口にあわないかもしれないけど、食えよ。」


といって、刺身らしきものを手渡した。


「これは?」


そう私が問うと、彼はそっぽをむいたまま


「トロっていうものらしいぞ。」


といって、道端にあった石に腰掛けた。


私も、彼の隣の意思に腰掛、トロというものを口にいれてみた。


すると、口の中で、じゅわっととろけた。


「おいしい。本当にこれ、安かったの?」


私は、口にトロを入れながら、そう彼に聞いた。


すると、彼はそっぽを向いたまま、


「あぁ、それが、一番安かった。」


と、いった。


私は、トロを2切れ食べたところで、彼が何も食べてない事に気がついた。


のこっている、トロはちょうど2切れ。


(いくら、安いといっても、これぐらいしか、買えなかったのね。)


私は、彼が、空腹をがまんして、私にトロをくれたのが分かった。


「和夫さん、これ、あと食べて。」


そういって、トロを2切れ差し出した。


彼は、「お前が食えよ。」


と、相変わらず、そっぽむいたまま、答えた。


「ううん。私、もうお腹一杯なの。

それに、これおいしいわよ。」


私は、そういって、半ば強引に、彼にとトロを食べさせた。


すると、彼は、「うまい。」


といって、微笑んでいた。


私は、その時、胸がドキッと、高鳴るのが分かった。


この、ときめきこそが、


私と和夫さんが結婚するまでの過程の始まりだったのかもしれない。


私は、和夫さんが、式を楽しんでる姿をみながら、


走馬灯のように、そんな事を思い出していた。


第2話に続く




















「へへ、そうかもな。
「美代子さんおめでとう。