「どうしょっか?まだ20時だしなぁ~」
と一博。

「う~ん」

ちょっと期待の咲紀。

「あれ?店は休み?」

「(コクッ)」
と頷く。

「じゃあ俺の家で飲み直す?」

また頷く。


店を出る。


車内ではユーロビート。

途中コンビニでお酒と氷を買い、家に着く。




「お邪魔しまぁ~す」
と酔っぱらった咲紀はフラつきながら靴を脱ぐ。

男の独り暮らしの家に入るのは初めての咲紀。

生活に必要最低限のものしか置いていないワンルーム。

「結構綺麗にしてるんですね~男の部屋ってキッチンとか結構凄いことになってると思ってた」

「あ~料理しないし、ごちゃごちゃするのイヤだからね。適当に座って。何飲む?」

「じゃあチューハイを」

【乾杯~】

「あ!コレ!」

TVの横に置いてある
家族写真。

「あ、ごめん。2月に別れたばかりだし、チビが週2回来るし。いちを…」
と申し訳無さそうに言う一博。

「いや、全然。」

「楽しそうですね~♪一博のちびっこもあんな感じ?」

「小4だからね~」

微笑みながらチャイルドルームを見る一博。

「たまに会ったりするの?」

「週2回ね。水曜日と土曜日。下のチビだけね。上はもぅオッキイし」

「ふ~ん」

「そぅいえば咲紀って普段何してるの?」

「普段ですか?」

この頃ラウンジ1本だけだった咲紀。

「普段は学生ですよ。保育の勉強を…」
後ろのチャイルドルームを見ながら言った。



咄嗟に付いた嘘だった。




「保育って保母さん?」

「え?うん。子供好きで」


「へぇ~じゃあ店は授業料とか?」

「うん。」


だんだん苦しくなってくる咲紀。でも、どうせタダのお客さん。
嘘の1つや2つ位…と咲紀は思っていた。




料理がきて、お酒も飲み、会話も盛り上がり、時間は20時を回っていた。
今思えば既に気になって居たのかも知れない。

咲紀の出勤時間は20時。

「(ヤバッ。行きたくないなぁ~最初はお客さんだから同伴なんて考えてたけど…何か)…ちょっとトイレ行って来る」

携帯を手にトイレに向かう。

プルルル

「社長ごめん!今日シンドイから休む」

電話に出た社長に付いた嘘。<店に連れて行く何て出来ない>出勤がよかった咲紀は信用もあり、出勤時間過ぎに電話したのにも関わらず

「了解」

と社長。


席に戻るとお酒で真っ赤になった一博が会計をして居る最中だった。




「そこの門を曲がったところです」
咲紀は指を指して言った。
【本日は定休日です】
店が閉まっていた。

「あ…ごめんなさい。リサーチ不足でした。」

「いいよ、いいよ。じゃあ俺の知ってる店行こうか?」

「すいません」



車を走らせる。





「ついたよ~普通の居酒屋だけどね」



「いえ、全然!」



咲紀の家近くの駅前にある居酒屋だった。

「ごめんね、俺こぅいぅとこしか知らないから…」
と一博。

「いえ、私ここ来てみたかったんですよ~」
とオダテる咲紀。






店内に入り案内される。
2人の席の後ろにはチャイルドルームがあり、小さな子供が何人かで遊んでいた。


まずはビールを注文。



『かんぱぁ~い』


料理の注文を淡々と済ませる一博。


「俺、お酒飲む時ってあんまり食べないんだ、何か頼み」

「あ、じゃあコレとコレと…」



料理を待つ二人。



「てゆ~か、俺なんて呼べばいいの?」


「あ、サキで」

「じゃあ俺はカズヒロでいいよ」



「今言う事じゃないと思うんだけど、俺バツイチなんだ。子供が中2と小4の男の子がいる」

「(笑)店で言ってましたよ~」

「え?まじ?ごめん。結構酔ってたんだなぁ~」


「(笑)確かに!本当に無事に帰れてよかったですよ~」


「バツイチってやっぱりイヤかな?」

「え?何でですか?私は何も思いませんよ~何か大人の男!って感じで」

「そっかぁ~?あ、でも俺と咲紀って16離れてるもんね。大人って言うか親父やろ?」

「いえ、全く。めっちゃオシャレやしそんな事全く無いですよ」

キャッキャッ



後ろのチャイルドルームが凄く賑やかになってきた。